第11話、血祭

「死神か。再訪とは珍しいな」

「マオーのところのトロルに、ちょっとした用事デス」

「その件か。コマ、トロ五郎を連れてこい」

「承知いたしました」

「流石マオー。部下のことは熟知しているようデスね」

「当然だ。愚行となれば尚更な」






「まおうさま。おでにようじって……ひっ! し、しにがみっ?」

「契約に基づき、魂の回収に来たデス。二つまでは受け取ったものの、最後の一つはどこデスか?」

「あっ、あとすこしっ! あとすこしだけまって――――」

「ヨミとの契約に延長はないデス」

「かっ、からだがっ? うごかっ……ま、まおうさまっ!」

「余は告げた筈だ。死神には決して手を出すなとな」

「ごっ、ごじひをっ! おで、どうしてもつよくなりたくてっ!」

「不足分の魂は、契約者に補ってもらうデス」

「ま゛っ、ま゛お゛う゛さ゛ま゛っ、だずげ――――」






血祭けっさい!」






 人形を操るように死神が指をクンと引くと、トロルの全身から血が噴き出す。

 飛び散った血液が死神の掌へ集まり球体を作ると、巨体が大きな音を立てて倒れた。


「止めないんデスね」

「貴様を敵に回すと面倒だからな。それで、その手に持つ魂はいくらだ?」

「マオーが話の分かる奴で何よりデス。上質な勇者の魂と交換でいいデスよ」

「好きなものを持って行くがいい」

「手の掛かる部下を持つ上司は大変デスね」


 死神はニヤリと笑った後で、血の塊と化したトロルの魂を傍にいたコマの掌へ乗せる。無表情な従者の顔が、ほんの一瞬「うわぁ」と嫌がっているように見えたのは気のせいだろうか。 


「貴様の今の契約術……血祭と言ったな。あれは余にも扱えるのか?」

「使えなくもないデスが、SP消費技デスよ?」

「余を舐めるな。MPだろうとSPだろうとTPだろうと問題ない」

「そうデスか。SP死神ポイントを持ってるなんて、流石はマオーです」




 ………………余もMP魔王ポイント、作ろうかな。

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