第7話、サイレントヒル
「我が主よっ! 四天王が一人、悪魔剣士ヒル! 制圧した西国の定期報告に参りましたっ!」
「うむ。聞かせてもらおう」
「はっ! 最早西国には我々に抵抗する気力も残されておらず、現在は生き残りを奴隷として我が主を称えるための魔王像を作成させておりますっ!」
…………それはちょっと可哀想ではないか?
ヒルの忠誠心は四天王隋一。余としても自分の像ができるのは嬉しいが、それが原因で後に天空の勇者とかを生む反乱因子が出てきそうな気がしないでもない。
だからといってヒルの気持ちを無碍にもできぬし、さてどうしたものか。
「…………ヒルよ。その魔王像には何か機能はあるのか?」
「機能、と申しますと?」
「今のまま完成させたところで、魔王像に込められている忠誠心はヒルだけのもの。上辺だけでなく心の底から余を崇拝させるためにも、西国の民が喜ぶ機能を付けるのだ」
「はっ! 承知いたしましたっ!」
片膝をついたまま、ヒルは深々と頭を下げる。
西国が問題ないのなら、こちらの問題に協力してもらうことにしよう。
「ところでヒルに頼みたいことがあるのだが」
「はっ! 自分でよければ、何なりとお申し付けくださいませっ!」
「それならば、技を見せてくれるか?」
「技……でありますか?」
「うむ。実は今、新たな技の制作中でな。部下の技を融合させようと思っておるのだ」
「そういうことでありましたか! 自分にお声を掛けてくださった我が主のお心遣い、感謝いたしますっ! しかし自分は四天王最弱……他の四天王やルル嬢の方が適任かと」
自分で四天王最弱って言う奴、初めて見たな。
謙遜してばかりのヒルは、言いにくそうに言葉を続ける。
「それに申し上げにくいのですが、自分には技という技がないのであります。過去に欲し己を磨いた日々もあったものの、最後の最後まで技と呼べるようなものは……」
「そうであったか」
ヒルよ。貴様の気持ち、痛いほどわかるぞ。
幸いにも先日のコマの戦いを見て、既に新技のイメージはできている。横文字にすれば必然的に恰好よくなると、何故もっと早く気付かなかったのだろうか。
「では余は貴様から、ヒルという名をもらい融合させることにしよう」
「!」
「余が技を完成させた暁には、その技を以て四天王の名に恥じぬ力を見せるがよい」
「…………我が主よ……感謝いたしますっ!」
頬に涙を伝わせながら、ヒルは深々と頭を垂れた後で魔王城を去っていった。
その後ろ姿を見届けた後で、余は大きく息を吐く。
「鼠が一匹、紛れこんでおるな」
「っ?」
「余が気付かないとでも思ったか?」
透明化の魔法やアイテムでも使っているのか、姿形は見えないものの気配で分かる。その身のこなしから察するに、勇者ではなく盗賊の輩のようだ。
いずれにせよ、新技の実験台には丁度いい相手だろう。
「静寂より侵略する、我が暗殺剣の生贄となるがいい!」
盗賊の背後に現れたのは、蟹のような武骨な形の物体。剣というより鎌に近い暗殺剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
「静岡県は日本の中部地方に位置する県。県庁所在地は静岡市。最大の都市は浜松市。全国有数の工業地域で、製造品出荷額は全国四位。ホンダの発祥地でスズキやヤマハの本社がある他、オートバイ、ピアノ、プラモデルの輸出量は日本一。東日本と西日本の真ん中に位置しており、分類では東日本だが企業や団体によっては西日本と扱う場合もある。県の木はキンモクセイ。県の花はツツジ。県の鳥はサンコウチョウううううう!」
聞き覚えのある断末魔を叫びながら、盗賊の気配が消滅する。
静寂に包まれた城の中で、余は暗殺剣を眺めつつ叫ぶのだった。
「四十七剣ではないかっ!」
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