第151話 クエスト受注
〜 ギルド インスパイア ハウス 〜
今日は珍しい人がウチのギルドに来ている。事の発端はスカーレットとミーシャがあるクエストを受けた事にある。
『ボーンシリーズの材料から完成までの一貫生産依頼』
ポラリスカンパニーが発注したクエストで1人の職人が全ての工程を責任を持って行うというクエストだ。
ボーン装備は低レベルモンスターのドロップ品や低ランクの生産品が材料だ。個々の製造工程だけを見れば難しくはない。しかし、1人で全てを行うとなると話は別だ。
このボーンシリーズには全て製造マニュアルがある。Sランク生産者達が監修したマニュアル通りに作らないといけないんだ。
マニュアルは細部に渡るまで指示があり、ガチガチの内容なんだよね……
この製品の製造が関わる生産職、全てでDランク以上の能力が必要とされている。
ポラリスカンパニー ボーンシリーズプロジェクト総責任者のポンテ君と試験官3名がウチのギルドに来ている。
試験の課題はボーンソードとボーンメイル製造だよ。
試験官が材料を用意している。
んん? 何故か3セットあるんだけど?
「ポンテ君、1セット多いみたいだけど?」
「いえ、合っています。試験の申し込みは3名、スカーレットさん、ミーシャさん、モッシュ会長です」
ミーシャがクスクス笑っている! やってくれたね!
「いいじゃないモッシュ? 全生産職Sランクを目指しているんでしょ?」
スカーレットも笑っている……
グルだね……完全にハメられた……
「2人共、事前にマニュアルを受け取って練習しているじゃないか……僕は全然やってないよ」
スカーレットとミーシャはもう合格出来るのは間違いないくらい練習していた。
「マニュアル通りにやればいいだけです。ある意味マニュアルの検証も出来ますね。会長が自ら実証する素晴らしい機会って事で。では、始め!」
ま、まさかポンテ君もグルなのか!?
むむむ謀られた……
「もう始まってますよ?」
試験には制限時間も設けられている。
「やるよ……全く……」
材料はポラリスカンパニーがまとめ買いする。そうすれば原価を抑えれるからね。
その材料を作る予定の数だけ受け取って製造するんだ。
まずは剣から作るか……
マニュアルを読みながら順番に加工していく。ボーン装備だけあって得意な骨細工を使用する加工が多い。骨の部分は簡単だ。装飾も問題無い。しっかりと形は出来た。
残すは塗装だけど……
正直言ってそんなに塗装はやった事がない。マニュアルを読みながら進めていく。
細かいな……こんな細かい塗装はやった事がないよ……
よし! ボーンソード完成っと!
試験官に完成品を渡してボーンメイルに取り掛かる。
こちらも骨の部分は簡単だ。だけど……
裏地の布張りと革の加工経験があまり無い。更に塗装箇所が剣に比べてかなり多い。
「むむむ……布張りが難しい……」
マニュアルを読み直して丁寧に進めていく。失敗したら材料が無駄になる。無駄になった材料は自分が買い取らないといけないんだよね……
「この革ベルトは手間が掛かるな……」
壊れない様にする為だろう。通常の革ベルトより工程が複雑で面倒だ。
何とか塗装までやって仕上げる事が出来た!
試験官に完成品を渡したよ。
スカーレットとミーシャはまだ作業をしている。でも、完成間近の様だ。
その様子を見ると実に丁寧に仕上げているみたいだ。
結局、2人共制限時間全部を使って2つの試験課題を完璧に仕上げた。
ポンテ君から試験結果が発表される。
「まずスカーレットさんとミーシャさんは全く問題無く合格です」
だよね……練習してたんだもん。
「モッシュ会長は成形については完璧です。ただ……布張りと革ベルト、塗装に関してはギリギリ合格です」
ホッ……何とか合格出来たか……
「な〜んだ! つまんないの〜」
ミーシャは僕の不合格を期待していたみたいだな!
「でもギルドマスターがギリギリってどうなのかしら?」
ううう……スカーレットにいじめられている。
「これから裁縫とかもやるつもりなんだよ……」
「それはちょうど良かったです。会長の分の材料も置いていくので在庫確保にご協力をお願いします」
なっ! 本当の狙いはコレか!!
ボーンメイルの材料が山積みされた……
「すみません……職人さんが思った以上に確保出来なくて」
「そうだったのか……分かったよ。僕も完璧に仕上げる様にして協力するよ」
ギリギリの品質では申し訳ないからね。
「工程の多いボーンメイルみたいな防具の作り手が足りません」
フムフム……確かにアレは大変だった。
「全工程の工賃を1人で貰えるんだから美味しいわ! 作り手が少ないと割り増しで工賃が貰えるから更にお得!!」
ミーシャはあえて難しいボーンメイルを作る事で多く収入を得る計画みたいだ。
「私はシリーズを全て作るわ」
スカーレットはシリーズ全作を3個ずつ作るそうだ。店の在庫が余っている商品は受注出来なくなるけどね。
僕は在庫が足りなくなりそうな物を作る事にした。しばらくはボーンメイルを作って欲しいと頼まれたよ。
在庫数が揃い次第、ボーンシリーズは発売されるよ!!
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