象徴のお嬢様
第150話 育みの樹
〜 小都市シャングリラ 〜
小都市シャングリラの一角に特別な敷地がある。ザリウスの所有地で世界樹を植える予定の場所だ。
そこは高い壁で囲まれて外からは全く内部は見れない。
対外的には魔導ゴーレムの格納庫と言っている。実際、ここに魔導ゴーレムは置いてある。
今日ここにギルド レザムールズのメンバーが全員集合したのは、古代迷宮でゲットした世界樹の苗木を植える為だ。
鉢植えで育てられていたけど全く大きくなっていない。
このままでは育つ見込みがないので地面に植えてみる事にしたんだ。
レザムールズ領 領主、ギルド レザムールズ ギルドマスターのミンフィーが自らよく耕した大地に世界樹の苗木を植えた。そして、優しい丁寧に水を大量にかけた。
『苗木とは言ってもタダの木の棒にしか見えない』
申し訳無い程度の根はあるので生きてはいるらしい。
ザリウスが魔導ゴーレムを苗木を囲む様に配置した。
「何となく守っている様に見えるだろ?」
「そんな事しなくてもセキュリティーは万全ですよ」
セキュリティーを担当したのはティアナだ。ここにはギルドメンバー以外入る事は出来ないそうだ。どんな仕組みなのかは分からないけど。
世界樹は人が生まれる以前から存在したという伝承がある。世界樹は世界に1本しかない存在出来ないらしい。その1本は遥か昔に失われた。
今、その世界樹がここにある。
辺境地の片隅で静かに根を降ろした。
栞さんが豊穣祈念の儀と呼ばれる古の儀式を行う。
アイリスが精霊の笛で演奏を行い、僕達は豊かな実りを願って祈りを捧げる。
「困った時の神頼みってやつね」
「手は尽くしましたが育つ気配がありませんので」
儀式を見守るミンフィーと儀式を提案したホクトさんが話している。
「我々が生きている間に育つ事は無いのかもしれません」
「大きくなるまで何千年とかかるかもしれないのね」
それは誰にも分からない事だった。
儀式が終わり、みんなでパクパクグルメランドの海鮮居酒屋で植樹記念の宴会する事にした。
最近、何かにつけてみんなで食事を一緒にするんだ。領地運営の自治制が整うにつれ、僕達は時間的な余裕が出来てきたんだ。
みんなでダンジョンに行った日は必ずパクパクグルメランドに来て宴会をしているよ。
これぞ冒険者って感じだね!
ちなみにパクパクグルメランドは30軒以上の店があり、期間限定店舗まである。
今、1番人気はシャバニさんプロデュースの「ラーメン」という異世界グルメ店だね。1ヶ月限定でオープンしているんだけど、いつでも大行列でまだ食べれてないんだ。
〜 パクパクグルメランド 海鮮居酒屋 〜
まだ夕方前だと言うのに店には大勢のお客さんが入っている。内陸部にあるレザムールズ領では数少ない海の幸が味わえる店なんだ。海が遠いのでちょっとお値段は高めだけど、珍しさもあって大人気だよ。
海産物の仕入れは漁師ギルドがやっている。この所、漁師ギルドはかなり儲かっているそうだ。
「僕はイカの丸焼きが好きだな」
栞さんはここの店が大好きでよく来るそうだ。
「それならこのポン酒が合いますよ!」
ポン酒とは米で作ったお酒らしい。南の方でよく飲まれているお酒だ。栞さんはポン酒が大好きなんだって!
どれどれ……
「プハーーー! 効きますねコレ!!」
「炙ったイカさえあればどれだけでも飲めちゃうんです!」
確かにイカとよく合うよ!
「ポン酒は辛口や甘口があるんです。最近はフルーティーなのが人気なんです!! 聞いてますか? モッシュさん!」
ポン酒を飲むと熱く語り出すらしい……
「う、うん。美味しいな……ははは……」
「どう美味しいのか教えて下さい!!」
酔ったみたいだね! かなり絡まれているよ……
「こ、米の旨みがとても良い感じです。と、ところであそこは殺風景過ぎるよね。他には何も建てないのかい?」
ザリウスに振って逃げる! 世界樹の苗木の事。広い敷地に木の棒が1本立っているだけだからね。
「ああ。せめて緑化くらいはするかな」
ザリウスの土地だから自由だけど勿体ないな。
「都市計画は第3工程に移行するわ。そろそろ木を植えて都市の景観を良くしていくわよ」
「園芸ギルドは大忙しだね」
世界樹を植えた所は僕達しか入れないから、メンバーで少しずつ緑化をしていく事にしたよ。
「前の世界で絵を描く為に庭を作った画家がいてな。俺もやってみるかな……設計は俺に任せてくれ」
シャバニさんが緑化の計画を立ててくれる事になった。
ザリウスの所有地は大通りに面していない都市の外れにある。土地の価値が低いとの判断で他のメンバーより広い土地を貰っている。
あれだけ広いと緑化も大変だ。
まあ急ぐ必要はないんだけどね!
レザムールズ領は都市開発の第3工程に移行した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます