第149話 次章への扉
〜 レザムールズ領 〜
レザムールズ領に暮らす人々は互いに協力し合い、困難な状況を乗り切ろうとしていた。
食料不足を解消する為に率先して畑を耕す領主の姿は多くの人々の心を動かした。
畑で領主が自ら品種改良したという野菜が収穫を迎えると食料不足は改善へと向かっていった。
テント生活を余儀無くされた移住者達は全てアパートメントに移り、住環境も大きく改善した。
中断していた一部の建築は再開され、小都市シャングリラは更なる発展へと進んでいく。
〜 ギルド レザムールズ 会議室 〜
領地運営にメンバーが奔走して本来のギルドとしての活動は大幅に減っている。
ミンフィーはメンバー全員に問いかける。
「あなた達には冒険者を辞めて領地を運営する側として然るべき役職に就くという選択肢もあるわ。これからどう進むのか考えて。辞める人は居るかしら? 何をどう決めても責めたりしないわ」
長い沈黙が続く……
「居ないのね……どうしてなのか分からないわ。楽な暮らしが出来るのに」
「楽な暮らしがしたいならとっくにここには居ないぜ?」
「あくまでSランク冒険者を目指すって事ね」
ミンフィーは大きな溜め息をついた。
それから冒険者としての時間をどうやって確保するかをみんなで考えた。
『みんなここでSランク冒険者になりたいんだ』
ギルドから領地運営関連を切り離し、領民達による自治制へ移行する事になった。ホクトさんだけは行政長官として自治を見守るよ。
〜 ギルド インスパイア 〜
3ヶ月の見習い期間が終了して、スカーレットとミーシャは1人前の職人として歩みだした。
スカーレットは堅実に仕事をこなし、素材を加工した中間素材を生産ギルドに納めて生計を立てている。中間素材は需要が高く、幾らでも買い取って貰える。
完成品を売った方が利益が大きいのだけどそれはしない。
ミーシャは売れ筋商品を作りつつ、細かな着色の仕事を多く引き受けていた。手先の器用さを活かすみたいだ。
生活態度がコロッと良くなった為、両親からハウスで暮らす事を許可され、スカーレットの隣りの部屋に移ってきた。
自分の部屋を持つ事は初めてらしく、部屋を可愛くすると張り切っている。
僕はひたすら装飾の作業をしている。最近は僕が関わっている店や施設なんかにも装飾を施しているよ。
とにかく数をこなして技術を高めないとね。
ギルドへの新規入会者はゼロだった。たまに見学に来る人はいるけどね。
今の僕達がやっている作業は生産ギルドの下請けみたいな作業だ。Sランク職人を目指すという高い理想からかけ離れた内容だ。
「これなら生産ギルドに弟子入りした方がいい」
見学した人の意見はみんな同じだった。
ここは材料の調達、技術の研鑽、商品の販売、全てを自分でやらなければならない。
指導者が居ないのも大きいみたいだ。
僕は指導者が居なくてもその気さえあれば上達出来ると思っている。だからここには指導者を置かない。
僕の弟子なりたいと言う人はお断りだよ。
ここではみんなが同列に並ぶ職人だ。
僕達は本で学ぶ他に生産者訓練学校の講座を必ず受けている。同じ講座であっても何度でも受ける様にしている。講師も授業毎に成長しているからだ。
他には生産者交流施設に顔を出して情報交換をする。そこで技術を教えて貰う事も出来るんだ。
僕がドラゴンシリーズの生産に携わっている事だけが目立った実績なのがギルドの現状だね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます