第141話 沈んだ星
〜 聖都 セントフォース 〜
スカーレットは冒険者ギルド協会で面白そうなクエストを見つけた。
『 レザムールズ領への護衛依頼 』
アンテナショップの店員達がレザムールズ領で行われる懇親会へ参加する為の護衛依頼だ。
この依頼を新規でパーティー募集して受けた。ギルドメンバーとは行く気になれなかったのだ。
報酬額が結構高いのですぐにパーティーは決まった。
「どんな所なのか見てみたいと思っていたのよ」
「私達も行くのは初めてでワクワクしています!」
店員達はとても嬉しいそうだ。しかし、こうまでして店員達を呼び寄せて懇親会を開く意味が分からない。
「スカーレットさんの装備。本当に人気があって予約が中止になっちゃったんですよ」
「それを販売初日に手に入れるなんて凄い目利きですね」
それは私も聞いていた。あまりの人気に高値で転売する輩もいるらしい。愚の骨頂としか言えない。使えば使う程、この装備の良さが分かると言うのに!
順調に旅は進んだ。まるでピクニックに来ているみたいに楽しい。宿泊する宿も良い宿ばかりだ。このクエストを計画した者は私達を貴族か何かと勘違いしているのではないか?
ダンジョンが発生したと噂の領地を避けて南からレザムールズ領に到着した。
「この砦は凄いな!」
モンスターの大群が迫ってきても耐えれそうな砦だ。こんな砦があるのは北のゴラス帝国方面だけだと思っていた。
砦の中へ進むと衛兵の姿があった。規律を守りダラけた様子は微塵も無い。これだけで今まで通った領地と全く質が違う事が分かる。
関所を通り抜けると広大な農地が広がっていた。ここであの野菜が作られているのか……素晴らしい土地だ。
ここで取れた野菜を食べて暮らす人は幸せだな……
しばらく進むと馬鹿みたいに高い城壁が見えた。あり得ない位の防衛態勢だ。
城壁の奥は居住区だった。今までとは一変した殺風景さだった。しかし、しっかりと計画的に整備を進めているのが見て取れた。
「ここは辺境地か? 凄い賑わいだ」
商業エリアに入ると途端に人の数が増え、活気に満ちているのに驚かされた。冒険者の姿も急に増えた。
何故かみんな私を見ている様な気がする。
気のせいだろうか?
私が美しすぎるからか……
今日はオープンしたばかりの高級ホテルに泊まれると聞いている。
ホテルに到着して護衛任務はひとまずここまでだ。残りは帰り道だ。滞在中の護衛は求められていない。
しかし、このホテルはどう見ても貴族向けだ。ただ、人手不足で食事は提供出来ないそうだ。食事だけは自分でなんとかしないといけない。
ホテルスタッフのオススメのレストランは懇親会の準備で貸し切りらしい。
代わりに同じくオススメの『パクパクグルメランド』にパーティーメンバーと行く事にした。
『パクパクグルメランド』はB級グルメ店を寄せ集めた所の様だ。都市で暮らす人々のストレス発散の場みたいな感じで居酒屋も多い。何軒もはしごして記憶が飛びそうになってしまった。
翌日はフリーだったので小都市シャングリラを見て回った。この都市の領主があのミンフィーとはね……
辺境地に似合わないお洒落なカフェを見つけたど臨時休業だった。
結局、パクパクグルメランドで食事をした。夜とは違って子供やカップルも多い。
ふらふら歩き回っていると小さな建物が見えた。
「あの人は……確かヒーラーの……」
小さな子供達と遊んでいる……孤児院のようね。
その様子をしばらく眺めていた……
「本当の聖女とは彼女の様な人ね……」
いろいろ思い出して見ていられない。
逃げる様に人が多い方へと向かった。
冒険者ギルド協会らしい建物があった。複合施設の様だ。
ギルド協会を覗くと知っている冒険者が大勢いた。せっかくだからパーティーを組もうと誘われたので、着替えに戻って一緒にダンジョンへ向かった。
私の装備を見てみんな似合っていると褒めてくれる。
「でも本店はこっちよ? みんなこれを使っているのでしょう?」
「ドラゴンシリーズは確かに人気だけど、それを装備している人は初めて見たぜ? 美人が際立つよな!」
こちらでも入手困難みたいね。
「ああ! 最高に綺麗だ! 女騎士は白い鎧しか駄目だと思っていた自分が恥ずかしいぜ!!」
こんなに楽しく戦ったのは久しぶりだ。この装備を手に入れてから少しだけ前を向ける様になった。
夜は今日パーティーを組んだ人達とまたパクパクグルメランドに行った。もう楽しくてしょうがない!
冒険者達の話ではポラリスカンパニーの運営する店は全部3連休らしい。あのカフェもそうだった。
「もう帰るのか……」
思わずそう呟いてしまった。
「ここはいいぜ! こっちに来いよ!」
「カジノや闘技場も出来るって話だぜ!」
ここに? 私が? 来る?
「いいのだろうか……」
私はレザムールズを追い出したギルドのメンバーだ。私自身が関与していないにしても止める気も無かった!
「いいんじゃね? モッシュなんてやりたい放題だぜ?」
「そうなのか?」
「俺達もだがルールを守ればここは自由だ。何にも縛られないのが冒険者だぜ!」
「冒険者辞めて他の職につく奴も多いな。チャンスはそこら中に転がってるぜ? 他の所じゃあ俺達はCランク止まりだったろうさ」
熱心に誘ってくれるのが逆に痛い……
「考えてみるわ。さあ飲みましょう!!」
グデグデになるのはあの時以来ね……
私はもう一度輝く事が出来るのだろうか?
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