第140話 愛の巣
〜 ギルド インスパイア ハウス 〜
ギルドハウスが完成した。今日はミンフィーに中を案内している。
「本格的な炉もあるのね」
「うん。全部の生産職の仕事に対応出来る様にしたんだ」
各生産ギルドが最新の設備を作ってくれた。意外なんだけど全面的に協力してくれたんだよね。
「僕はここで全職Sランクを目指すよ」
「冒険者Sランクより難しいわよ?」
「そうだね。でもいいんだ。やりたいんだからさ」
「さすがに一緒にはやれないわ」
ミンフィーは領主の役割があるからね。僕は生産職の底辺からミンフィーを支える。
「メンバー用の部屋もあるのね」
「まだ誰もメンバーは居ないけどね」
メンバーの貼り紙はギルド協会と職人交流施設にしてあるけど応募はまだ無いよ。
「ちょっと作業をして見せて」
ミンフィーがそう言うので骨の指輪を作るよ。
まずドラゴンの骨で作った指輪を出して……
石英のブロックをポンっと作り出す。
「ちょっと……それ何?」
「石英だよ? これをミョルニルで叩いて材料にするよ」
水晶とも呼ぶらしい。
ボコ! ボコ!
細かくなった石英を整形して綺麗に磨く。これで指輪に嵌める石はいいね。
後は指輪に細かな細工を施し、石を嵌めたら完成さ!
「はい! あげるよ」
「モッシュ……石は何を作れるの?」
「硬い石とか? 大理石とかは試しで作ったけど」
「……宝石は?」
「やった事無いけど小さな物なら」
ポン! 麦よりも小さな透明なブロックが出来た!
「ダイヤモンドだよ。かなり魔力が減ったな……」
「相変わらずメチャクチャね……」
それからミンフィーと色んな『石』を作ってみた。
「これは私以外に話しては駄目よ」
「う、うん。そんなにマズいのかな」
「命がいくつあっても足りないわね」
ミンフィーからスキルの使用について制限が課せられた。
ギルド インスパイアのギルドマスターとして最低でも週1日は活動する事にしたよ。
誰でも参加出来る受け皿は作った。
本当にやる気のある人だけ来てくれればいい。
待つ。 待つだけ。
険しい山頂へ共に登ってくれる志しのある人を
炉に火を付けて銅鉱石を溶かし、型に流し込む。そうして出来た銅の塊をドラゴンメガハンマーで叩き上げる。
「そのハンマーはこんな事にも使えるのね……」
「ハハハ、凄いでしょ? 今思い付いたんだよ」
ちゃんとしたドラゴンクラフトハンマーは売ってるよ。
薄く延ばした銅板をドラゴンシザーで切り分ける。切り分けた銅板をドラゴンチェイサーセットで加工する。
小さなハンマー、タガネ、ヤスリなんかがセットになっているよ。
花の絵をモチーフにした家具に付ける装飾品が完成した。
装飾品をテーブルに固定して出来上がりだ。
「これでちょっと見栄えが良くなるでしょ?」
「貴族の使う家具みたいね」
「こんな感じで技術を磨きながらハウスの装飾なんかをやっていくつもりだよ」
レザムールズ領の家具は主要施設を除くと華美な装飾はほとんど無い。
「贅沢品ね……今は需要が無いでしょうね」
「みんな新天地で生活するのに精一杯だからね」
「一緒にSランクを目指すのは無理だけどサポートする事なら出来るわ。私をここの事務員にしてくれる?」
「ええ!? 忙しいのに無理だよ。また体調を崩すよ」
「そうでも無くなってきたのよ。給料はいらないから」
どうも忙しいのはホクトさんとティアナの2人らしい。最近は世界樹関連でザリウスも忙しいみたい。ミンフィーの仕事量はどんどん減っているんだってさ。
「だからいいでしょう?」
ピッタリと密着して頼んでくる!
「う、うん! いいけど絶対に無理しないでよ?」
正式なメンバーではないけどミンフィーがギルド事務員として加わった。
〜 エドワード領 伯爵の屋敷 〜
突如現れたダンジョンにミッションを発令して対応した伯爵だったが、溢れ出るモンスターに苦戦を強いられていた。
「伯爵様、冒険者ギルド協会が応援要請をするそうです」
「むぅ……我が領地に力が無いと思われるではないか!」
既に領内の兵士も動員して対処させている。もう打つ手がない状況だった。
「しかし、協会には独立した権限がありますので……」
ギルド協会は国の指示に従っている。基本的には領主の意向に従うが最優先なのは国が定めたルールだ。
「金も必要だ……娘よ、例の話を早く進めてくれ」
冒険者を使うには多額の報酬が必要だ。
「お父様……実は少し待って欲しいと言ってるのです」
「ミンフィー嬢がか?」
「建築に遅れが出ているとか情けない事を言っているのよ」
「ミンフィー嬢には書簡を送る。エリザベートよ! 予定より更に上乗せして送り付けてやるのだ!」
「はい! お父様! わたくし自ら出向き見事に成し遂げてご覧にいれますわ!」
伯爵はその日の内にレザムールズ領に書簡を送った。
〜 ギルド レザムールズ 会議室 〜
エドワード伯爵から書簡が届いた。
『こちらの手違いで人的援助の人数が2000名になってしまった。申し訳ないがエリザベートが引率するので受け入れを頼む』
「酷い押し付けですね……断ってもいいかと」
ティアナは貴族の横暴さに呆れていた。こんな書簡だけで済まそうとしているのだから怒るのは当然だろう。
「もう各地から出発している。元々準備は整っていたんだ」
シャバニは既に情報を得ていたようだ。
「世界樹関連の建築で遅らせて貰ったのは事実です」
多少の非はこちらにもあるとホクトは言う。
「しかし、2000人か……そんなに集めれるならまともな領地運営をやったらどうだ?」
それをここで言ってもどうにもならないがシャバニの不満は収まらない。
「しばらくテント暮らしをしてもらうしかないな」
「堪えましょう……これを乗り切ればここは中都市です」
「中都市になれば周りもここを再認識するでしょう」
爆発的な人口増加にどう対応するのか。苦しい選択迫られるのであった。
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