第139話 ぶち上げる
〜 職人交流施設 〜
今日は、交流施設で彫金作業の練習をしているよ。とても細かい作業で器用さが求められるね。
骨のリングに細かな細工し、石英という透明な石で作った飾りを嵌め込んでいく。
「ふぅ〜 1個作るだけでも大変だ」
「ねえモッシュ。私もやってみていい?」
「いいよ。やり方はこの本に書いてあるよ」
「わーい」
ミーシャにやらせてみる。この子は僕より器用だから上手に出来るかもしれない。
「骨のリングはこれを使って。石英はこの皿にあるから」
1個仕上げたから僕は休憩だ。結構疲れるんだよね。
ミーシャが熱心に骨のリングに細工を施している。中々上手くいかない様だ。本を何度も見ながら挑戦している。
「楽しいかい?」
聞いても答えが返ってこない。物凄い集中力だ!
お茶を飲むながらミーシャが作業しているのを見守る。
この情熱を活かしてあげたい!
一時の子供の思い込みかもしれないけど、目標に向かってひたすら努力をしている子供を支援したい。
でも……やれば小さな子供の将来に大きな影響を与える。
そんな重責を僕は背負い続けれるだろうか……
彫金職人を捕まえてギルドをやらないか聞いてみる。
「ここには彫金ギルドないよね。君、やってみないかい?」
「無理だ……莫大な資金がいるし、ここでは装飾品を買う人が少なすぎる。趣味で細々やる方が自分に合っているしな」
「誰かギルドを立ち上げてくれそうな人を知らないかな?」
「居ないな。彫金だけは無理だろう。大変なのを知っているからな」
「そうか……やっぱり自分でやるしかないか……」
「やめておけ。いくら金があっても足らないぞ」
「でも君は彫金職人だろ?」
「普段は農業をやっているんだ。好きだから趣味でやっているだけだな。妻には金にならないから辞めろと言われてる」
この人は結構良い技術を持っている。それでも職人だけで生計を立てるのは無理みたいだ。
既に職人交流施設は多くの職人達の技術向上に役立っている。ミーシャみたいに職人になる為に勉強しに来る人も増えてきた。ここに来ればそこそこの職人になれるだろう。
でもSランクまではとても到達出来ない
良くてBランク。いや、Cランクかな……
僕は自分の店があった。そこに骨細工で作った物を販売する事でBランクまで上がる事が出来た。骨の矢の存在も大きいな。あれはいくら作ってもいいからね。
高価な宝石を使った指輪やイヤリングを骨の矢と同じ様に量産する事は不可能だ。
「僕が作ろう。骨と彫金……他にもギルドが無い職人の受け皿になるギルドを」
今、ここから始めよう。
「みんな聞いて」
職人交流施設にいるみんなに聞こえる声で呼びかけた。
「僕は色んな職人の集まるギルドを立ち上げるよ。冒険者ギルドみたいな形だと思っていいかな。興味がある人は何でも聞いてね!!」
名を付けないと……
「名はギルド『 インスパイア 』お互いに影響を与え合って高めていく。Sランク職人になるのが目標だよ」
…………突然の発表にみんな驚いている。ほとんど反応は無いね。
しばらく時間が経つとみんな口々に同じ事を言い出した。
「Sランクは無理だ」「理想だけでは無理だ」「前例が無いから無理だ」「時間が無いから無理だ」
無理な理由ばかりが聞こえてくる。
「詳細はここに貼り紙をするね」
多分、誰も参加してくれないな……
でもいいさ! 僕は決めたんだから!
「モッシュ……子供でも参加出来るの?」
ミーシャが心配そうな目をして聞いてきた。
「親の承認があればね」
ギルド協会に行ってミシェルさんと面会をする。
「職人だけのギルドですか……個別の生産ギルドでは駄目なんですか?」
「個別では趣味レベルでしかない骨や彫金、その他、ギルドの無い職人達が協力し合ってSランク職人を目指すギルドです」
「なるほど……確かにマイナーな生産職はランクアップが難しいですからね」
「はい。冒険者ギルドと同じ様にしたいと考えていますのでギルドハウスを建てるつもりです」
僕の話を全て聞いたミシェルさんはとても長い時間考えた。
「全く前例が無いのでレザムールズ領ギルド協会だけの独自の取り組みとしてなら認めます」
「ありがとうございます!」
「他領ではギルドとして通じない点だけは注意して下さい」
僕はミシェルさんと細部を詰めて話をまとめた。既存の生産ギルドに対抗する物ではない事はミシェルさんから各ギルドに説明してくれるそうだ。
ギルドハウスの場所はミシェルさんの配慮でポラリスカンパニーの近くにしてもらえた。冒険者ギルドDクラス用の場所らしい。
そこには新規のギルドがいくつか既にハウスを建てている。僕とミンフィーがギルドを始めた頃の事を思い出した。
スライムと互角だったけど今ではドラゴンと戦っている!
きっとやれるさ! 目標は高い方がいい!!
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