第135話 新プロジェクト
〜 ポラリスカンパニー 事務所 〜
ドラゴンシリーズは徐々に販売数を伸ばしていた。レザムールズ領に隣接する2つの領地で展示即売会を行う計画が練られていた。
それはスタッフ任せて、僕は別の事を考えていた。
次の新プロジェクトについてだ。
最高級シリーズはもう出したから次は安い方か……
大量のスケルトンの骨がまだリュックサックに入っているから消費したいな。
ボーンシリーズを出すか……
でも僕が携わるのは無しだ。スケルトンの骨なら加工出来る職人は多い。
低ランクの職人を使った初心者向け装備でいくか
高ランクの職人を使うと価格も上がってしまうからね。
任せるのはあの男しかいない。
「ポンテ君。ちょっと来て」
ポンテ君を呼んで新プロジェクトの構想を伝えた。
「この新プロジェクトの全権を君に任せたいんだ」
「ええ!? 僕がですか?」
「君は既に結果を出したからね。ドラゴンシリーズの経験が活かせるはず。対象はCからEランク。安いけどこだわっているって感じで」
「分かりました。全力で頑張ります」
ポンテ君の小さな体に気力がみなぎって来るのが分かる。
「こだわり過ぎて価格が上がったら意味が無いからね」
「そ、それは難しいところですね……」
「当然だけど安心して使える物にする必要もあるよ」
「安くて丈夫で使いやすいですね!」
これで新プロジェクトはいいな。後は……
「ポンテ君。ついでに懇親会の準備も頼むよ。セントフォース店の店員も招待しよう」
「全員呼ぶと休業しないといけませんよ?」
「いいよ。こちらは3連休にしよう。レストランを貸し切りにして盛大に頼むよ。ピアノの演奏会もやるからね」
ピアノがそろそろ出来そうなんだ。
「レストランのスタッフも一緒に楽しめる様にね。別で3連休を取らせてあげて」
「任せて下さい!!」
全店休みだと調整が必要だからね。ちょっと先の話になるけど頑張っているみんなに何かしないとさ。
リュックサックから大きな袋を2つ取り出した。
「予算は1000万ゴールドでいいかな?」
「た、多分足りるかと……」
「向こうからの旅費は結構かかるよ。安全に来れる様にして欲しい。足りなかったら言ってね」
「わ、分かりました。燃えてきました!!」
熱い男、ポンテ君に任せれば大丈夫だろう。
〜 小都市 シャングリラ 居住区 〜
栞の所有地で最も大通りから離れた位置に孤児院の建物が建設された。通りを歩く人達からは立ち並ぶ衣服店が壁になり孤児院を見る事は出来ない。
孤児院では3名の子供達と私が暮らしている。
あの人は私にスタッフを雇うからギルドハウスで暮らして欲しいと言った。
ここでは守り切れないそうだ。
何から守ると言うのだろうか。
分からない。
『運命のガチャの日』あの人が出てきて
私は全てを失ったはず。
でも今は望んでいた全てがある。
小さな教会、小さな孤児院。
病院では治癒師として活躍している。そこでは誰でも治療が受けられる。
神に祈りを
神に感謝を
全ての人々が幸せでありますように……
私の後ろで園芸ギルドの人達が一緒に祈りを捧げている。
「聖心教徒の方々でしたか?」
「違いますが祈りたくなったので……」
「構いませんよ。自由ですから」
園芸ギルドの人達が孤児院の敷地を整えてくれるそうだ。
「仕事をくれた感謝の祈りってありですか?」
「何でも自由です。私が、あなた達がここを綺麗にしてくださる事に感謝するのと同じです」
「もっと色々厳しいのかと思ってました」
「決まりはあったのかもしれませんが忘れました」
ただ自分の思う通りに生きていくだけ。
「さあ、みんなでお仕事を手伝いましょう」
子供達と一緒に花壇の花を植えていると遠くの方であの人がこちらを見ながら絵を書いているのが見えた。
〜 小都市 シャングリラ ギルド協会 〜
多くの冒険者が小都市シャングリラへ来る様になり、トラブルが増えてきた。タチの悪い冒険者も結構いる。
ギルド協会のスタッフは連日、大忙しで休む暇もない。でもその分、急速にその事務能力は成長していた。
ミシェルはスタッフ達が駆け回る傍らで書類の確認をしている。
「昔はもっと酷い冒険者も居たわ……」
要注意人物の書類に目を通したけど小物だ。
「要観察ってとこね」
対処が必要と思った人物はいつの間にか消えてしまう。
恐ろしい人があのギルドに居る……
殺してない事は知っている。消えた問題人物が遠くの都市でトラブルを起こした情報が伝わってくるからだ。
「ギルド長、冒険者から畑を耕す道具はどこに売っているのか質問が多いです」
移民者には支給品として農具が与えられた。だから農具を売っている店なんて無かった。今まではね……
「道具なら職人専門店にあるわ。クエストの貼り紙に追記しておいて。簡単な地図も添付するのよ」
ご丁寧にドラゴンシリーズの農具まであるそうだ。かなり高性能らしくクエストがすこぶる捗り、すぐに元が取れるらしい。
「分かりました」
モッシュさんは全く行政には関わっていないのに何故か絡んで来る。最近はモッシュさんに動かされている感じがする事さえある。
冒険者だけではなく職人達にも影響を与えている。
あれで無意識なのだから恐ろしい。
「次は何をやる事やら……」
恐ろしいあの人さえ予測不能なのだから。
頭を抱える政庁メンバーの顔が今から浮かびそうだ。
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