第133話 メガドンキ
〜 古代迷宮 第2層 〜
ザリウスが盾役をする訓練を十分にした事でパーティー戦術の選択肢は増え、多彩な攻撃を仕掛ける事が可能なった。防御面でも盾役のスイッチングが可能になり、より強い敵との戦闘の際に利用出来るよ。
今日はイエロードラゴンとブラウンドラゴンに挑戦する。
盾役はザリウスで僕は補佐に回るよ。
今日の武器はドラゴンメガハンマーだよ!!
「結局、本番は棍なのね」
「こ、コレはとっておきだよ! 会心の出来栄えだね」
これはいい! 絶対にいいよ!!
ドラゴンシリーズ中、棍2種だけが売れてない!
爪とムチは売れたのにさ……
「何で売れないんだろう……」
誰も使用者が見つからなかったので契約者無しで僕が直接、開発した両手棍と片手棍……
ドラゴンメガハンマーとドラゴンメイス!!
超いい感じなのに!
1人で落ち込んでいると置いていかれそうになった……
イエロードラゴンは体から雷を発生させる感電攻撃に注意が必要だ。
ブラウンドラゴンは地震を発生させるから足場に注意だ。
武器のグリップには感電対策としてポラリスカンパニーと錬金ギルドが共同開発したラバーテープを巻いてある。
感電対策だけではなく、滑り止めの役割もある優れ物だ。総合店で独占販売しているよ。
「ブラックドラゴンとホワイトドラゴンも確認!!」
クルミから偵察の報告があった。
森の中をクルミが斥候として動くのを見ると面白い。新装備の迷彩服が見事に森に溶け込んでいる感じがする。
クルミの動きが徐々に洗練されてきたのが分かる。シャバニさんの弟子として鍛えられているからね。
「それにあのナイフ……」
クルミはアサシンダガーとサバイバルナイフを使用する。いずれもシャバニさん製作の物だ。アサシンダガーは細くて長く、サバイバルナイフは太くて短めだ。
二刀流で戦う時もあればナイフ1本で戦う時もある。素手の戦闘もかなり鍛えている様だ。
「予定通り、イエロー、ブラウンの順で行こう!」
「了解です!」
サッとクルミが駆け出して行った。その後をサポートとしてフェンとスノウが続く。
「どうもここの安全地帯を中心に属性ドラゴンが配置されているね」
グリーンドラゴンは風属性だった。風、火、氷、雷、土、光、闇のドラゴンがいる。
「イエロードラゴン1体! 来ます!」
フェンとスノウが先に戻ってきた。ザリウスを先頭に戦闘陣形を整える。
「これは本当に怖いな。よく普通にやっていたな……」
「初めての敵は怖いよね。もう慣れだけかな」
ザリウスが深呼吸をしている。その気持ちがよく分かる。
漆黒の鎧に身を包んだダークナイトがイエロードラゴンに向かって突撃し戦闘が始まった。
〜 小都市 シャングリラ 居住区 〜
カジノの建設現場にシャバニの姿がある。シャバニが所有する1区間の土地を目一杯に使って、巨大な10階建ての建物が1棟だけ建てられる予定だ。
その建物の骨格は鉄で従来のこの世界の建物が木や石を骨格にしている事から考えるとかなり異質な建築だ。
土台にはぎっしりとモッシュの作った硬いブロックが敷き詰められている。
この建物が完成したら防御は完璧になる。
この建物は圧倒的に周りの建物より高い。シャバニが屋上から狙撃すれば小都市の全域を守る事が可能だ。
「こっちの建設はまだまだ時間が要るな。カジノスタッフの育成も時間が掛かる」
カジノスタッフは全員がプロフェッショナルでなければならない。特にディーラーの育成は大変だ。
隣りで工事を見つめるホクトは黙って頷いた。
シャバニとホクトはもう1箇所の建設現場に移動した。
栞の孤児院だ。
「大通りに面した土地は衣服店を並べる。孤児院は奥だな」
「それでもかなり広いですね」
「誰も金儲けを考えていない。変わったヤツらだ」
「モッシュさんは儲けてますよ」
「あれは別だな。普通の商売ではないぞ」
「勇敢に戦うだけが英雄ではありません」
「確かに……いろんな王がいたな。貿易王は強大だぞ」
孤児院の予定地には建築資材が運び込まれていた。そんなに大きな建物ではない。完成までの時間は短いだろう。
「更地は見栄えが悪いから園芸ギルドに依頼した」
「モッシュさんが役に立ちましたね」
園芸ギルドを大躍進させたのはモッシュだ。
「ああ。面白いヤツだ」
「孤児は集まりそうですか?」
「スラムに溢れているからな……だが、まずは公募だ」
「それが良いでしょう。全ての者を救う事は出来ません」
辺境の地に小さな孤児院が入院者を募集している。
とても小さなニュースが各地に伝わった。
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