第130話 熱男現わる

 〜 古代迷宮 第2層 〜


 今日に合わせてみんなが装備を整えてきた。


 僕も装備を一新したよ。全身ドラゴンシリーズだ! 


 異次元リュックサックもドラゴンの皮で作ったカバーを装着した。武器も作った。

 今日はザリウスがメインの盾役で僕がサブの盾役だ。ブラウンドラゴンやイエロードラゴンは僕の武器との相性が良くない。盾役を交代して対応してみるんだ。


 僕はドラゴンランスを装備した。ドラゴンの骨で作った長槍の試作品だね。ランサーと呼ばれるジョブの人が多用する武器だ。間合いも長いからやや敵から離れて戦う。


「モッシュ、槍なんて使えるの?」


 ミンフィーがドラゴンランスを不思議そうに見ている。


「ちょ、ちょっと練習してたんだよ。ドラゴンシリーズ開発に活かせないかなって!」


「ちょっとねぇ……」


 ソロダンジョンでワザと不慣れな武器を使い、防御を鍛えているとは言えないね……


 グリーンドラゴンをサクサク倒していく。ザリウスの盾役も見事だ。


「魔術師とは思えないわ。やけに堂々としているわね?」


「こ、怖いさ。モッシュを尊敬するな。こんな敵にいつも先頭で向かって行くんだからな」


 ザリウスは必死に誤魔化しているけどバレバレだね。ソロダンジョンで前衛として鍛えていたんだ。


 今日は試作品を全部持ってきたからとことん試すよ。強度、耐久性、使い心地、もちろん威力もだね。


『 契約者だけにしか使えない物になってないか 』


 それが最も気になっている事だ。自分で使って確認する。敵は竜種だ。検証するのにこれ以上の敵はいない。

 竜種はAランク冒険者パーティーが戦う敵だ。Bランク冒険者パーティーにとっては最上位の敵と言える。

 当然、ソロで戦うなんて無理だ。ソロダンジョンで竜種を相手には検証出来ないんだ。


 槍の次は斧、剣、棍と次々に試していく。


 ミンフィーの爪と靴。フェンのムチも試したよ!


「様になっているわね……どの武器もCランク以上の冒険者レベルに見えるわ」


「そ、そうかな? この爪とムチは最高だね。ははは……」


 ソロダンジョンでは敵にボコボコにされたけどね……


 ミンフィーから冷たい視線が飛んでくるけど社運を賭けたプロジェクトだからね。やるしかないよ!


 今日はザリウスの盾役の練習と新装備の慣らしだからグリーンドラゴンだけを倒して終了した。



 〜 ポラリスカンパニー 事務所 〜


 事務所でスタッフに自分がドラゴンシリーズを使った感想を伝えた。スタッフは冒険者ではないからとにかく丁寧に説明してあげないといけない。


「両手斧の持つ部分が太くて扱いにくかったよ。特に連戦していると握力が落ちてくる。もう少し細い方がいいかもね」


「両手斧を使う戦士の方は大柄の人が多いんです。それと太い方が安心すると言う人も多いです。あれより細いと苦情が来ます」


 両手斧を担当するホビット族の青年ポンテは僕の意見に必死に食い下がってくる。自分から難しい両手斧を担当したいと希望してきた。ちょっと変わった青年だ。

 激しく議論するとこの青年の信念と熱意を感じる。


「なるほど……確かにそうだね。誰が主に使うかも重要か」


 あ、熱い、熱すぎる男だ……ポンテ君! 

 

 小さな体に秘めた溢れる情熱!! 凄い熱量だ!!


 僕の負けだ……深い所までしっかり考えてあるよ。


 ポンテ君の情熱に賭けてみよう!


 あくまで量産するって事を頭に入れておく必要がある。議論と試作を重ねて良い形に仕上げていく。

 形が決まったら装飾を施し、契約者の意見も聞いてから量産するよ。


「ドラゴンシリーズは冒険者向けですが職人用も作らせてもらいませんか?」


 職人専門店『クラフトマン』の担当者が相談してきた。多分、僕とポンテ君の熱い議論に触発されたんだろう。


「ここまで来たんだ。やってみていいよ」


「ありがとうございます! 頑張ります!」


 正直言うと帳簿がギリギリ黒字で厳しい。これ以上、開発費が増えると赤字になりそうなんだ……

 一気にいろいろ立ち上げたし、まだあまり利益が出ていない。セントフォース店の売り上げと南の中都市コンテールとの交易による利益でポラリスカンパニー全体をなんとか支えてくれている状況だ。

 

 今は耐える時だ……


 信じていればきっと良い結果が出る!


 

 〜レザムールズ領 小都市シャングリラ ギルド協会〜


 ギルド協会に一枚の貼り紙がされ、多くの冒険者達と職人達の注目が集まっている。

 3つの冒険者ギルドがBクラスに昇格したのだ。


 同時の多数の冒険者が上のランクに昇格している。


 更に漁師ギルドと園芸ギルドの拠点が「マルシェ」と呼ばれる公設市場の横に建てられると発表があった。


「難関とされたBクラス昇格試験をレザムールズ領の3ギルドが突破したのは各地で話題になりますね」


 ミシェルは誇らしげにその様子を見ている。これで3ギルドは優良ギルドに指定された。


 レザムールズ領主ミンフィーから優良認定書がBクラスに昇格したギルドマスター達に手渡された。


 『ピュアトレント』の出現条件は新月の昼間でほぼ間違いない。あれから2匹倒した。でも宝箱は出なかった。


 これからは他のギルドとも協力して古代迷宮に挑むよ。

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