第125話 続・夢プラン
まずは徹底的に計画を練り上げる。経費や利益の計算もしっかりする。これは以前にホクトさんから教えてもらった事だ。立案していく中で足りない事があるのに気付いた。
まずはそれから着手しよう。
全体の構想はこれでいいはずだ。これから都市の整備が進んでミンフィーに余裕が出来ると古代迷宮の攻略が本格化する。そしたら僕もダンジョンに行く事が多くなる。
なるべく僕が居なくても上手くいく様にしないと……
夢プランの細部を修正していき完璧に仕上げた。
行政長官のホクトさんの所へ承認をもらいに行く。
「これだけの事をすると重大な責任を背負う事になります」
「理解しています。やってみたいんです」
「……内容は完璧です。基本にとても忠実です。よく私の教えを理解されています。もう教える事もない様です」
「そんな……まだまだですよ」
「ただ規模が大きいので店というよりカンパニーと呼んだ方がいいでしょう。会社の名が必要です」
僕の会社……僕が中心になって動く……
「ポラリス……ポラリスカンパニーとします」
「……良い名です。後は全て貴方の思うままに」
ホクトさんから承認をもらった。次はギルド協会だね。
ミシェルさんにポラリスカンパニーの設立を連絡してクエストを発注する。
「こ、こんなにですか?」
「はい! よろしくお願いします」
それから木工ギルドに建築クエストを発注したよ。
これでようやくスタートラインだ。ここからが足りない部分。これは自分で動いて切り開かないといけない。
生産者交流施設『サロン』に行って漁師ギルドの顔馴染みと調理ギルドの人に直接クエストを依頼した。
「魚料理を普及させたいんだ。ここで魚料理の無料試食会をやりたいんだけど協力してくれないかな?」
両ギルドは依頼を喜んで受けてくれた。
試食会の日。魚料理の普及が目的なのでいろんな料理がテーブルに並んでいる。
噂を聞きつけたギルドメンバーも集まってくれた。
「とても美味しいわ!!」
特に猫耳族のフェンは大興奮しているね! ミーシャもいた。美味しいそうに食べているね。
「モッシュ。これだけの料理があるとワインが欲しくなるわ。私のおごりでいいから樽酒をみんなに出してもらえるかしら」
ミンフィーの言葉を聞いて会場は大盛り上がりだよ!!
「じゃあ今日は魚料理の大宴会だね!」
試食会は大成功だったよ!!
よし! この調子で魚料理が普及すればレストランで魚料理を出しても採算が取れる様になる。
1週間後、僕の土地の真ん中に事務所が出来た。ちゃんとポラリスカンパニー事務所と看板もあるよ。
続けて職人専門店『クラフトマン』も完成した。ミシェルさんに頼んでいた従業員も出社して来てカンパニーは動き出した。
次に少数民族向けの店『ピープル』がオープンした。最後にレストラン『サザンクロス』がオープンして完成だ。
僕のカンパニーはいろんな種族を雇う様した。ミシェルさんも少数民族のエルフ族だし、僕の考えを理解してくれてバランス良くいろんな種族が雇える様に手配してくれたよ。
ここまでは順調だね!! 後はアレが上手くいけば……
職人専門店『クラフトマン』には工具から職人向けの服までしっかりと揃っている。全部生産ギルドに発注した。
更に家でも作業の練習が出来る超初心者セットの販売もする。このセットは使いやすい工具と加工しやすく整えてある素材、簡単な説明書がセットになっているよ。
素人からプロまで幅広く対応出来る店にしたんだ。
少数民族向けの店『ピープル』は雑貨屋さんだ。いろんな民族の意見を聞きながら少しずつ品揃えをしていくよ。
レストラン『サザンクロス』の看板メニューはレザムールズサーモンだ。これは他のどの都市に行っても食べた事の無い素晴らしい素材だからね。
僕はポラリスカンパニー全体をよく見て指示やアドバイスをしていく。それはまるでパーティーで戦っている時と同じ感じだ。
店員は前衛、事務所は後衛だ。
ポラリスカンパニーでも僕は盾役とサポーターだ。
そしてパーティーリーダーなんだ!!
みんなを上手に鼓舞して、自分はしっかりと構える。危険な所をフォローしに動く事もある。そう考えると不思議と上手く行くんだよね。
「みんな始めての事ばかりで失敗もする思うよ。でも、協力し合って乗り越えていこう。レザムールズ領は全て始めての事ばかりなんだ。ただ誰が最初にやるかだけ。僕達が道を切り開いていこう! 乗り越えれば必ず大きな自信になる。それが自分を更に成長させるんだよ」
僕はレストランで親睦会を開き、パラリスカンパニー全員を集めて激励した。
〜 ギルド レザムールズ 会議室 〜
政庁の首脳陣が集まる会議にミシェルが呼ばれた。
「モッシュはどうなっているんだ?」
シャバニは苛立ちを隠せない様子でミシェルに尋ねた。
「モッシュさんはあくまで正規の方法で事を進めます。拒否する理由がありません……」
大規模な事業を短期間で立ち上げてしまったので、様々な所に影響が出だしているのだ。首脳陣の想定からいろんな事が外れ始めていた。
「物の動きが爆発的に増えてきたぞ。人の動きも想定外になっている」
「モッシュさんは全て前払い、即金でクエストを発注します。多くの職人、冒険者の絶大な信頼を集めています」
ミシェルは弁解する様に説明した。
「そういえば……モッシュさんが木工ギルドでリュックサックから大量のゴールドを取り出したと噂になっていました」
近くの錬金ギルドで指導にあたっているティアナの耳にも入っていた様だ。
「3000万ゴールドをその場で払ったと聞いています」
「アイツ……任せたのは俺にも責任があるが……。一体、幾ら金を持っているんだ?」
尋ねられたのはホクトだ。モッシュに経営を教えたのはホクトだからだ。
「分かりませんが……恐らく億単位かと」
「何!? それをリュックサックに入れていつも動き回っているのか? 動く銀行だな……」
モッシュの異次元リュックサックは専用装備なので他人には荷物を取り出す事は出来ない。
無敵のセキュリティーなのだ。
「ホクト……お前の差し金だな?」
「私は何も……モッシュさんの計画は非の打ち所がない物でしたので承認しました。ただそれだけです」
「……まあいい。モッシュ込みで計画の立て直しだ」
モッシュの散財で生産者、冒険者は多額の金を得た。それはほぼレザムールズ領内で使われる。そしてまた別の者が金を得る。
経済はそうやって回っている。
ホクトとミシェルはまだ表面に出ていないモッシュの計画も知っていたがとても言える雰囲気ではない。
言ったらモッシュの計画に支障が出る恐れもあるからだ。
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