第124話 夢プラン

 〜 職業訓練学校 〜


 第2回 裁縫講座には8名が参加した。この前来てた同じ人達にプラス女性3名だ。ミーシャの母親の友達らしい。


 第3回の講座の時に問題が起きた。参加人数が多くなり過ぎてしまったのだ。急遽、講師を追加して対応した。

 その講座は漁師講座だ。漁師ギルドのメンバーはよく交流施設に来るので顔馴染みだった。この前もドラゴンの骨で大物用の釣り針を作ってあげた。形や大きさをいろいろ試している所なんだ。


 マイナーギルドの講座で30名以上も応募が来るとはね。


 何でも都市が大きな湖と隣接しているし、東砦にも小さな湖があるので釣りをしたいそうだ。


 全員分の釣り道具を何とか確保して湖で講座を開いた。


 何故かミーシャ親子もいる。


「ミーシャは釣りにも興味があるの?」


「うん! っていうか猫耳族は魚がすきなの! 釣れば魚が食べれるかなって!」


 狙う魚によって竿、糸、針、エサを変えないといけない。それらのノウハウを漁師ギルドは持っている。

 これから狙う小魚の釣り方を教えてくれた。


 市場にはあまり魚は並んでいない。内地の人はあまり魚料理に興味がないからだ。


 何とかみんな釣れたみたいだ。釣った魚を湖畔で焼いて食べたよ。


「美味しいなコレ!!」


 みんな口々に美味しいと言っている。ミーシャはいつも以上に嬉しそうだ。


「モッシュ。釣り道具を至急、発注したい。漁師ギルドの在庫が全部売れてしまいそうだ。これはウチのギルドも活気が出るぞ!」

 

 知り合いが嬉しそうにしているとこちらまで嬉しくなる。


「講座で思いもしない影響が出たな」


「ああ! 誰も来ないと思ったが最高だ! 感謝するぜ!」


 釣り道具は漁師ギルドにしか売っていない。そもそも釣りをやる人がギルドメンバーくらいしか居ないんだからさ。

 

 最後に知り合いが大物釣りに挑んで見事にゲットした。それはこの湖で初めて見つかった魚で漁師ギルドではレザムールズサーモンと呼ばれていた。それを手早く料理してみんなに振る舞ってくれた。


「な、なんだコレ!! 凄い美味しいじゃないか!」


「だろ? みんな魚を知らなすぎるぜ! これからは漁師ギルドの時代だ!!」


 かなり調子に乗ってしまったようだ。まあ夢を見るのは自由だからね!


 〜 ギルド レザムールズ モッシュの部屋 〜


 ミンフィーが頼みがあると言って僕の部屋に来た。


「職業訓練学校が好評みたいね?」


「うん。漁師ギルドの人気が凄かったんだ」


「あのね。錬金講座の講師は私にやらせて欲しいの」


「ミンフィーが? いいのかい?」


「ええ。やってみたいわ」


 僕も骨細工講座の講師をやる予定だ。他の講師が確保出来ない時に僕の講座を開く予定だよ。


「じゃあ、ミンフィーの予定に合わせて段取りしておくね」


 ミンフィーの講座を予定に入れる。そして貼り紙で告知すると大変な事になっちゃった。

 申し込みが殺到して大パニックになったんだ。

 しょうがないので冒険者訓練学校を借りて講座を開いた。


 ミンフィーの説明はとても分かりやすかった。講師のお手本になる様な素晴らしい講座だった。


 ミンフィーの講座には各生産ギルドの人達も見学に訪れていた。


「冒険者しての実力だけではなく、領地運営、領民教育、あらゆる面で完璧だ」


 領主が自ら先頭に立って教育の重要性を示した事はとても大きな事だったらしい。


 みんながミンフィーを褒め称えていた。


 僕は木工ギルドに依頼して職業訓練学校の増改築を行った。予想以上に人が来るので拡張したんだ。


「モッシュに協力したいだけだったのにごめんね」


「いいんだよ。それよりもこれを見てよ」


 僕は大きな図面を机の上に広げた。その図面は僕の土地の図面だ。今、店舗、冒険者訓練学校、生産者交流施設、職業訓練学校が建っている。


「この真ん中に各施設をひとまとめに管理する事務所を建てるつもりなんだ」


「バラバラで管理するより効率がいいわね」


 ミンフィーは効率を重視するから分かってもらえると思っていたよ!


「建物の無い所まで書き込んであるわね?」


「夢の設計図なんだよ。これからどんな施設があったらいいかなって。まず職人用のお店、それからレストランだね」


「面白しろそうね」


 ミンフィーといろんなプランを語り合ったよ。


「他の都市には無い変わったお店も欲しいなー」


「……この世界には多種多様な民族がいるわ。多様性をテーマにしたお店は王都にも無かったわ」


「なるほど……少数民族も楽しめる店……難しいね」


「全く儲からないでしょうけどね」


 そうだよね。買う人自体が少ないんだからさ。


「ミンフィーも土地があるんでしょ? 何かやらないの?」


「紅茶専門店とかお洒落なカフェね」


 ミンフィーの土地の図面も持ってきてあれこれ話し合った。楽しいなー。


「ミンフィーは忙しいだろうから僕がその内やっておくよ」


「任せるわ。期待しないで待っておくね」


 ミンフィーのプランには沢山の木を種類まで指定して植える事になっている。


「でもミンフィーは木を植える事を禁止しているよね?」


 居住区には木が全く植えられていない。だから殺風景なんだ。ダークエルフ達が都市内に住みたくないのも分かる。


「今は維持管理する余裕が無いわ。木は計画的に植えないといけないって思っているの」


 なるほど……都市内に木を植えたら管理が必要だね。


「これだけの土地に建物は2つだけ……ミンフィーの発想は大胆だよね」


 ミンフィーの土地も大通りに面した超1等地だ。まあ他のメンバーも同じなんだけどね。


「これは公園というの。みんなの憩いの場ね」


 憩いの場ね! イメージが湧いてきたよ!

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