第114話 護衛クエスト

 ミンフィーが全領民を集めた。

 こうして領民が集まっているのを見ると凄い人数だ。


「みんな今まで良く頑張ってくれたわ。ようやく領内の基盤整備が完了したわ」


 本当によくここまで来れたよ! みんなの協力のおかげ!


「今日から支給制度廃止して市場経済に移行します。そして税制も導入します」


 いつまでも支給制を続けるが無理だからね。領民には当面の生活費として一時金が支払われた。


「税はみんなの暮らしを維持する為にどうしても必要な物です。決して一部の物が私利私欲の為に利用する物ではないという事は理解して下さい」


 都市機能を維持するには税は必須だね。ここは上下水道完備だしさ。


「これまで望まない仕事に就いていた方もいると思う。今日からは自由です。都市からの転出も認めます」


 出て行くのは勝手って事か……ミンフィーらしいや。


「しばらく混乱を防ぐ為に物の価格は厳しく管理します」


 おかしな値段で商売したら無茶苦茶になるからね。


「ここには今まで辛い生活を強いられていた人達が多いと思います。どうかこの機会を活かして欲しい」


 ほとんどの人が貧民だった。ここには希望がある!!


「でも助け合う気持ちは忘れないで下さい」


 そうだ! 助け合ってここまで来たんだ!!


「みんなのさらなる活躍を期待します!!」


 盛大な拍手が巻き起こり小都市シャングリラは歓声に包まれた。


 ここに小都市シャングリラは新たな一歩を踏み出した。


 事前に詳しい説明をしていたので大きな混乱は無い。最も調整が難しいかったのが農業関連だ。農業はしばらく保護されるんだってさ。ホクトさんが直轄で管理監督する。


 レザムールズ総合店も今日が開店日だ!


 そして冒険者訓練学校も開校!!


 建物は隣同士にしてもらったから便利だ。店にはしばらくお客さんは来ないだろうけどね。必要な物は支給されちゃっているからさ。

 冒険者訓練学校には冒険者になりたいという人達が入校してくる予定だ。今日は入学手続きが行われている。ギルド協会に申請するだけで入学出来る。


「ニャーゴ……」


 ニャンタが店のカウンターの上で暇そうにしている。砦の守備から戻って来たよ。砦の守備はしっかり教育した衛兵達が行ってくれる。衛兵達の給料は税金から出るよ。


「まあ気長に待とう。そのうちお客さんが来るよ」


 これは衣服店も暇だろうな。フェン達の店もオープンしているよ。

 僕達は早々に店を閉めた。ニャンタはスペシャルダンジョンに行くそうだ。僕は都市の中を散策した。

 大通りには小さな出店が並んでいた。そこで買い物をしている人もいる。でも数はそんなに多くない。僕は果物の出店でリンゴを買った。昔もこれ位の価格だった様な気がする。

とても甘くてジューシーな美味しいリンゴだった。


 レザムールズ領の作物はなんでも美味しい!!


 ミンフィーが品種改良を重ねているし、丁寧に愛情を込めて作っているからね!!


「これ売れるな……」


 僕がそう呟くと出店の店主も同じ意見だった。


「南の中都市とは商売していいらしい。まあエドワード領もいいらしいがあそこには行きたくない。南に持って行こうと思うんだが魔物が怖くてな……」


 ここは辺境地だし、西の魔女も近い。


「冒険者に警護依頼したらどうですか?」


 ギルド協会にクエストして警護を依頼する事が可能だ。


「そうだな……そもそも道があるのか心配なんだ」


 領民はほとんど都市外へ出ていないからね。


「東と南への道はしっかりと整備されてますよ」


 大きな馬車が往来出来る様にしてあるよ!


「そうなのか? これはチャンスか……」


 店主は迷っているみたい。決めるのは自分だ。成功するか失敗するか。それは分からないんだ。


 ここではまだ商売が出来ない……僕も売りに出るか。店員の給料を払わないといけない。

 ミンフィーからは店と学校のお金は分ける様に言われている。学校からの給料や冒険者収入を店に回すのは駄目だ。


 ちゃんと店として成り立たせないといけない。


「よし! 行ってみるか!」


 翌日。自慢のキャンプグッズを馬車に乗せて南の中都市「コンテール」に向けて出発をした。1人でもいけるけど試しに冒険者に護衛を依頼した。


「みんなよろしくね」


 サポーター出身の4人パーティーに僕の護衛をしてもらう。ちゃんとギルド協会にクエストを発注したよ。


「モッシュさんの護衛って何か変ですね。ソロでも楽に行けそうですけど」


「ものは試しさ。これから依頼が増えるだろうからいい経験になると思うよ」


 小都市シャングリラを出発すると石畳の道が南砦まで続いている。関所を通り抜けると衛兵達が挨拶をしてきた。


「結構、様になっているね」


「ありがとうございます! 訓練を重ねましたので! 商売ですか?」


「そうだよ!」


「商売に出るのはモッシュさんが初めてです! お気をつけて!」


 衛兵の教育は万全だね。これなら安心だ。砦を出てもしばらく石畳の道が続いていた。


 これは楽だな。馬車のスピードも早い!


 途中で何度か弱いモンスターが現れたけど冒険者がしっかりと対応してくれた。


「やるじゃないか。僕の出番は無さそうだね」


「あったら冒険者失格ですよ!」


 中都市「コンテール」に到着した。かなり盛況な都市の様だ。まずは商業ギルドに行って取引を申し出る。そしてオススメの商会に行き商品を買い取って貰った。自慢のキャンプグッズもここでは認知されていない。だからあまり良い値段では売れなかった。でも質の良さは分かってもらえた。


 利益もそこそこある。ちゃんと黒字だよ!


 今後の売れ行きが良ければ高値で買ってもらえる。


 それで十分だね! 何の問題も起こらずにシャングリラに帰ってきた。

 クエスト報酬はギルド協会から支払われる。僕は依頼主なので前金で報酬を協会に収めていたよ。


 冒険者達と別れてから工房に向かった。売れたキャンプグッズを同じ数だけ発注しておいた。シャバニさんの工房とは契約を結んである。この工房は僕の店とフェン達の店にしか商品を卸さない。商品を受け取ったら代金を支払う。その辺は以前と少し変更になった。



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               ふぐ実

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