第115話 制御不能
〜 ギルド レザムールズ 会議室 〜
経済が動き出してから1か月が経過した。政庁の首脳陣が集まって検証をしている。この会議からギルド協会長のミシェルも加わる。
「物価は安定しています。治安も良好で大きな問題は起きていません」
まずは行政長官のホクトから報告があった。
「転入が領民の親戚37名、転出は0です。ザリウスさんからダークエルフ族23名の転入申請が来ています。ミンフィー様の許可済みです」
転入転出数をティアナが報告した。転出0は不満が少ない証拠と言っていいだろう。
「木工ギルドは大盛況です。錬金ギルドが良く病院を支えてくれていますので医薬品は格安です。他の生産ギルドも工房から人員を回してもらい始動しました」
ミシェルからギルド関連の報告だ。生産ギルドは多少の問題はあるが順調だ。
「商業の方は出店ばかりですが数は多いです。利益を上手に上げている店もあります。ただ……モッシュさんの店が南の中都市の商会と繋がって荒稼ぎしています。売り上げはダントツでトップです」
商業もミシェルの管轄だ。
「まさかアイツが先陣を切るとはな……商才があるとは思っていたが……頻繁に南へ行っているらしい」
いずれシャバニは自分が手を回して他都市との交易を無理にでも開始させようと考えていた。意外な人物が現れた形だ。
「おかげで工房は大パニックだ……生産ギルドに職人を送ったのが裏目に出た」
首脳陣は農産物が売れると考えていた。キャンプグッズは全くの想定外だったのだ。キャンプグッズは布や革を多く使う。それを作っていた優秀な職人を手放したのだ。
「モッシュさんが雇う護衛の冒険者達がキャンプグッズの宣伝役になっているようです」
「ヤツは無自覚に事を大きくするからな。警戒していてもこれだ。なぜ護衛をつけたのかも理解出来ん」
シャバニは呆れていた。モッシュが交易を行うのも意外なら冒険者を雇うのも考えられない事だった。
「モッシュさんは基本に忠実です。商人として南に行くなら護衛を付けるのが基本だと考えたのでしょう」
ホクトの解説を聞いてもみんな微妙な顔をしていた。
「農作物を売りに行く護衛クエストの数がとても多いです。冒険者の数が不足する可能性が出てきました」
ミシェルの顔にも焦りの表情が浮かぶ。クエストを消化出来ないと様々な価格に影響する。
「早すぎるからだ……アイツを抑える為に学校を任せたはずだが?」
「学校はしっかりと運営しています。とても良い冒険者が次々と増えています。これは余談ですがセントフォース店にも出向いて売り上げを伸ばしているそうです」
「それであの発注量なのか……あっちはそっとして置いてくれよ……」
「今でも自分だけが暇で申し訳ないと言ってあちこち動き回っています」
「あれだけ仕事を回してもか? そんなに稼いでどうするんだ? 欲しい物でもあるのか?」
モッシュの欲しい物など誰も思い浮かばない。なぜ彼がそんなに働くのか理解に苦しんでいる。
「店員の給料を稼ぐと言っていました。でもお金は欲しくないそうです。ソロダンジョンのドロップ品を無償でしかも大量に持ち込んでくれます。これはニャンタの分も入ってると言っていました」
モッシュとニャンタはギルド協会の運営に多大な貢献をしていた。ドロップ品の値崩れを防ぐ為にミシェルが各地のギルド協会へ分散して売却している。
これによりギルド協会に立派な図書室が完成している。
モッシュは店は店で頑張る。学校は学校で頑張る。ダンジョンはダンジョンで頑張る。とても単純なのだ。
ミンフィーからお金を分けて管理する様に言われた影響なのだが……それを首脳陣は分かっていなかった。
ダンジョンで稼げば店にお金を回せると思っていたのだ。
「モッシュさんは至って普通の商売をしています。妨げる事は出来ません」
「そこだ……そこが厄介なんだ……ダンジョンに押し込んでおくのが1番影響が少ないな」
「はい。モッシュさんが動くと物事は大きく動き出します。そこにミンフィー様が加わる事で加速するのです。これは皆さん覚えて置いて下さい」
今回はミンフィーが体調を崩して療養していたのが不幸中の幸いであった。
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