第111話 折れない心

 木工ギルドが本格的始動してようやくギルドメンバー達にも余裕で始めた。

 ティアナの錬金ギルドも順調みたいだしね。


 今日は久しぶりにみんなでダンジョンに挑戦している。


「Bクラスのダンジョンからは宝箱が出るから楽しみだね」


「クルミの出番ね」


 敵も強いし、まともなパーティー戦闘自体が久しぶりだ。まあみんな時折、スペシャルダンジョンに行って鍛えているのは知っているけどね。


 敵を倒すと稀に宝箱が現れる。それを簡単にクルミが開けていく。ちゃんと訓練を続けていたみたいだね。


「私達がAランクになる事は領地を守る上でも重要よ」


 ミンフィーの言葉にみんな頷いた。


 そうだよ! Aランクの冒険者は相当強い。僕達がAクラスのギルドになったら周りも簡単には手を出せないはずだ。


「ニャンタ。魔剣になってもらえるかしら? 持てるか試してみたいのよ」


 フェン、スノウと一緒にいる事が多いニャンタとティアナが会うのも久しぶりなんだってさ。


「ニャ!」


 ニャンタが魔剣になった!


 ドスン!!! なんか前に見たの全然違うぞ!!


 馬鹿みたいにデカくてカッコいい!!


 当然、ティアナは持てなくて剣を支えきれず地面に倒してしまった。


 ニャンタは魔猫に戻った……


「ニャーゴ……」


 ん? これってひょっとして……


「ねえニャンタ。もしかしたら魔剣になる時ってイメージした魔剣になれるのかな?」


「ニャ!」


 どうもその様だ……


「筋金入りの脳筋馬鹿猫みたいね……」


 ミンフィーは呆れている。


「そんな魔剣をイメージしたらティアナには持てないよ」


 ニャンタはハッとした様子だ! 


 今まで気付かなかったのか……


 それからニャンタ何度か魔剣なったけど中々上手くはいかないみたいだ。


「脳筋は簡単には治らないわよ。魔力が増えて更に制御が難しくなった感じね」


「ニャンタ! この両手剣をよく見てイメージして!」


 ティアナが自分の両手剣をニャンタの前に出した。


「ニャーゴ……」


 ニャンタは下を向いてしまった……


「どうしたの?」


「カッコ悪いのは嫌だと言っています……」


 そう言えば魔剣ニャンタは無駄にカッコいいな……


 それにデカイし……


「もう行くわよ……脳筋治療は任せるわ……」


 ポンとミンフィーが僕の肩を叩いた。


「ぼ、僕がかい?」


「似た者同士でちょうどいいと思うわ」


 後でニャンタと特訓する事にしたよ。


 〜 ギルドハウス 訓練所 〜


 ニャンタが魔剣になる訓練をするよ!


「魔法はイメージが大事だよ。強くてカッコいいってイメージじゃなくて……強くて美しいじゃ駄目かい?」


「ニャ……」


 ズドン!! ニャンタが魔剣なった!

 

 前よりましだけどまだまだ重そうだし飾りも多い。


 もっと具体的なイメージの方がいいのかな?


「うーん。剣を使うのはティアナなんだしティアナをイメージしたらどうかな?」


 ニャンタはちょっと考えて集中し始めた。


 ポトン!! ニャンタが魔剣になった!


 何故かピンク色の刀身で柄にはハートマークの飾りが付いていた!! 


 レイピアみたいに細くてティアナでも楽に持てるけど……


「ティアナが好きなのは分かるけどコレはちょっと……」


 ニャンタが魔猫に戻って恥ずかしそうにしている。


 見ていた僕まで恥ずかしいよ!


「じゃあティアナが先頭に立って戦うイメージでどう?」


「ニャ!!」


 どうもイメージがすぐに沸いたみたいだね!!


 ストン!!


 美しい金色の刀身はスラっと細くて長くしなやかな感じだ。それでいて芯の強さを感じる。装飾は少ないけど気品があり、その質の良さが素直に伝わってくる。


「いいじゃないか! これならティアナにぴったりだよ!」


 ニャンタが魔猫に戻った。


「ティアナをイメージした剣なのは内緒にして欲しい」


「わっわ! 普通に喋れるのかい!?」


「魔力が上がったからな。でも短時間だ……」


 急激に魔力を消費したみたいだ。


「タ、タノム……」


「わ、分かったよ! もう話さない方がいいよ!」


 別にニャンタにとってティアナはご主人様なんだから好きなのは当たり前だよ。隠さなくてもいいのにね。


 〜 古代迷宮 入口付近 〜


 この前のダンジョン攻略で体を慣らして、遂に新たに発見した古代迷宮に挑戦する事にしたよ!!


「中々みんな揃う機会が少ないわ。今日は頑張って奥まで進んでみましょう」


「そうだね。次の機会がいつかも分からないしね」


 短時間の会議なら出来るけど、まとまった時間を確保するのは本当に難しくなっていた。


「クルミ。トラップがある可能性が高いわ。Aクラス以上のダンジョンだと思って慎重に進んで」


「はい……ちょっと緊張しますね」


「危なかったらすぐに逃げるわよ!」


 ミンフィーがここまで慎重になるのは珍しい。


「ニャーゴ!」


「あ、そうだったね。ニャンタがいい感じの魔剣になれる様になったんだ」


 ストン!! ニャンタが魔剣になった!!


「へぇー 思った以上にいいわね。やけに上品だわ。何か特別な思いがあるような不思議な感じがするわね」


 うう……ミンフィーは鋭すぎる……


 ティアナをイメージしている事がもうバレそうだ……


 僕は何も言っていないからね!!


「さあ行くわよ! いきなりポキッと折れない様にね」


 折れるわけないよね!


 大事な人を形にしたんだからさ!!

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