第106話 解呪

 〜 レザムールズ領 〜


 ミシェルさんが冒険者達を引き連れてレザムールズ領に到着した。結構いるね……30人位かな。ほとんどの人が総合店のお客さんだ。Cランク以下の冒険者達だ。さすがにBランク以上の冒険者は来てくれないよね。


「お久しぶり! ギルド協会の向かい側の建物が冒険者用のアパートメントだよ」


 冒険者達はギルド レザムールズに仮入会って形で活動してもらう。レザムールズ領内には最近見つかった迷宮を除けばダンジョンは無い。でもこれ位の人数なら大丈夫!


 ダンジョンの鍵があるからね!


 ギルド協会の地下にダンジョンの入口用の扉が作ってあるからとても便利だと思うよ。


 冒険者達にも建築工事を手伝ってもらう事になっている。

自分達でギルドを結成したらギルドハウスを建てもらわないといけないしね。建築さえ手伝ってくれればハウスに使う建築資材何かは無料で提供するんだってさ。


 とにかく人手が足りないんだよね……


 エドワード伯爵からの人的支援という名目の貧民押し付けは1000名以上に達していた。


 さすがに増え過ぎなので中断してもらったよ。


 これからはダンジョンを利用しないとさすがに物資を賄えない。冒険者が来てくれたのはとても助かるはずだ。


「みんな落ち着いたら工房の方へ行ってくれるかな。職人育成に協力して欲しいんだ。オーダーメイドを無料でするからさ。武器、防具から小物類まで全部受け付けるそうだよ」


「マジですか!! 夢みたいな話ですね!!」


「今、職人達が作っているのは建築資材や生活用品ばかりなんだ。装備品も作れる様になってもらわないといけないからね」


 僕の総合店も開店準備中でまだオープンしていない。工房だけは新たな人員を加えてフル稼働状態だ。

 

「ダンジョンから持ち帰った素材を持ち込んでもいいよ。とにかく職人達に経験を積ませて欲しいんだよね」


「モッシュさんやニャンタに相談してもいいのかしら?」


「勿論いいですよ。他のギルドメンバーにも遠慮なく相談して下さいね」


 辺境地に来て不安だった冒険者達の顔色が明るくなってきたみたいだ。


「これはチャンスだ……今、頑張れば一気に強くなれる」


 1人の冒険者がそう呟くと冒険者達は歓声を上げ始めた。


 まずはギルド レザムールズに仮入会だね!


 ミンフィーは全員を鍛え上げるつもりらしい……


 大丈夫かな……



 〜 スパイダーダンジョン 〜


 今日はDランクの冒険者パーティーと一緒にスパイダーダンジョンに挑戦する。

 全員20キロの重りが入ったリュックサックを背負わされている。僕なんて40キロのリュックサックだよ……


「これがレザムールズ式の訓練方法よ」


「こ、こんなキツい鍛錬をしていたんですね」


「強くなったのには理由があるわ。当然ね!」


 ミンフィーが鬼教官になってしまった!


「この敵を倒したら昼食に戻るわ。そしたら前後衛交代よ」


「「 は、はい ?? 」」


「必要な魔法やアイテムはミシェルから貰う様に!」


「「 了解しました!!! 」」


 ダンジョンの奥からフェン、スノウ、ニャンタと衛兵達がやって来た。大量のドロップアイテムを抱えている。


 スパイダーダンジョンを選定したのが布材が不足しているからだ。衛兵達は既にDランク冒険者になっている。


 当然だけど全員がオモリ入りリュックサック装備だよ!


 衛兵達は特に戦闘向きの選抜メンバーになっているから強くなるのも早いね。


 

 〜 元レザムールズ区民 居住区 〜


 元レザムールズ区民達の住居はほとんど完成していた。そこを行政長官のホクトと副長官に就任したティアナが視察に訪れている。


「低級貴族、中級商人並みの住居ですね……」


 辺りには小さな庭付きの一戸建て住宅が建ち並んでいる。


「ミンフィー様の指示です。上下水道も完備しています」


「これから建てる方達も同じ様にするのですか?」


「ここは特別です。ミンフィー様にとっては苦楽を共にした家族の様な方達ですからね。他区画は上下水道完備のアパートメントにする予定です」


「それでも上下水道完備ですか……考えられません」


「領主が極度の綺麗好きなので仕方がありません。暮らしに見合った仕事をさせる様に指示が出ています」


「……まずは教育が必要ですね。学校を作って識字率や計算力を高める必要があります。そこから専門職に育成でしょうか……」


 元貧民達の教育水準を上げる事はとても難しい。気の遠くなる様な話だった。


 ティアナの表情は冴えない。何か深く考えているようだ。


「100年に1人と言われた賢者にも無理な事はあるでしょうね。それとも王家のプライドが貧民と接するのを拒否しているのでしょうか?」


「…………全て知っているのですね」


「シャバニさんは本当のプロフェッショナルです。動き出した彼は恐ろしい……瞬く間に裏社会に情報網を広げ、あらゆる情報を得ています」


 前世で裏社会のドンと呼ばれていたシャバニの最も得意とするのは情報戦であった。


「ゴラス帝国に魔導ゴーレムを仕入れに行っている時に貴女とニャンタにかけられた呪いについて調べて来ました」


「そうですか……」


「西の魔女を倒しても呪いは解けませんよ」


「やはり……そうではないかと薄々思ってました……」


「ダンジョンと同じです。クリア出来ないダンジョンが作れない様に解けない呪いはかけれません」


「え!? それでは?」


「貴女が魔剣ニャンタでモンスターを倒す事が呪いの解除に繋がるのではないかと私の旧友が教えてくれました」


 以前のティアナには魔剣を持ち上げる事出来なかった。


 でもBランク冒険者になったティアナならどうだろうか?

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