第99話 ロー2発!


 ニャンタの小さな体から激しい闘志が伝わってくる。


「分かった。小鬼はニャンタに任せたよ」


「ニャ!」


 一気に中ボス部屋に突入した!!


 僕は目の前の敵に集中するだけだ。普通のサイクロプスよりアトラスの攻撃は重くて強いだろうからまともに受ける訳にはいかない。盾で受けつつも少し受け流し、敵の力を逸らしていく。そしてすかさずカウンターで攻撃を加える。地味だけど効果は大きい。アトラスの巨大な単眼は僕だけを睨んでいる。敵の注意をしっかり引けたみたいだね!


 もう1体のアトラスはザリウスが眠らせたみたいだ。ザリウスは大盾を構えて敵が目を覚ました時の為に備えていた。


「こっちは任せろ! 耐えてみせる!」


 敵は上位種なのであまり長くは眠っていないかもしれない。ザリウスは寝ているアトラスに次々と弱体魔法を唱えているみたいだ。


 僕はザリウスに向かって小さく頷いた。あっちは任せて良さそう。問題は……


「ニャ!!」


 ニャンタと小鬼が激しく魔法の撃ち合いをしている。


 互角か? 


 いや……ニャンタは圧倒的な回避力を活かして魔法を楽々と避けている。それに対して小鬼は魔法を回避出来ていない。ニャンタやるな!!


 ミンフィーの強烈なローキックが決まるとアトラスは膝をついたがすぐに持ち直した。


「耐久力は高そうね。もう1発あげるわ」


 初撃のローキックと全く同じ所に2発目のローキックが炸裂した!


 バキィーーーー!!!


 無理に耐えようとしたアトラスの左足が折れ曲がり、横倒しになった!


「馬鹿ね。私の蹴りをまともに受けれると思うの?」


 ローキック2発でアトラス1体は再起不能だ……


「こっちは動けないわ。ザリウスの方に行くわね」


 ザリウスの方のアトラスは立ったまま寝ている。そこへミンフィーが駆け寄って行き、そのままローキックを放った!

 アトラスはすっ転んで仰向けに寝転がった!


「終わりね」


 アトラスの巨眼にミンフィーのかかと落としが爆烈した!

 アトラスは両手で巨眼を覆って痛がっている。


「あら? 頑張るわね」


 ミンフィーは悶え苦しむアトラスの胸へ乗り、鉄の爪を装備した拳を振り上げた!


 ザク……


 ミンフィーに心臓を貫かれたアトラスはピクッと一瞬だけ動いたけどそれっきり動かなくなった。


 アトラスは魔石になった!


 小鬼が必死に魔法を唱えて抵抗している。だけどニャンタは完全にその魔法を見切っている。ジリジリと間合いを詰めていき、頭に装備した剣で小鬼を切り刻んだ。


 小鬼は魔石になった!


 戦闘不能になり悶えているアトラスにニャンタが近づいていく。


 ポム……


 アトラスの額の上に乗って『ニャンタッチ』を発動した!


 アトラスは魔石になった!


 敵を全滅させると下への階段が現れた。


「降りる前に回復と補給をしておこう。薬が必要な人はいるかな?」


「マジックポーションを下さい」


 ティアナがアームホルダーから空瓶を3本取り出した。


「かなり消費しているね? 魔力は大丈夫かな?」


 弱体魔法をてんこ盛りしてくれているから相当魔力を消費しているみたいだ。はっきりとした効果は目に見えないけどその効果はかなり大きい。


「演奏で回復してもらっているので大丈夫です」


「薬は沢山あるから遠慮なく言ってね。ニャンタ、スペシャルドリンクをあげるよ」


 シャバニさんが作ってくれたニャンタ専用スペシャルドリンクは体力と魔力を同時に回復する薬だ。


 平皿に注いでニャンタにあげた。


 ペロペロペロ……


 他のメンバーに比べてこの2人の消耗は激しいな。体が小さくて体力面で劣るからね。


 でも……


 かなり鍛えて来たのが分かる。ここで抑える様に言うのは違う気がする。


「よし! 準備が整ったら先に進もう!」


 僕もポーションを少し飲んで体力を回復しておく。


 〜 ダンジョン 第16層 〜


 先に進めば進む程、パーティーの連携が高まって進行が早くなっていく。個々で鍛えてきた成果が更なるパーティーの進化へと繋がっていた。確実に敵は強くなってきていたけどそれを感じさせないくらいだ。


 今日は17層へと降りる階段でキャンプする事にした。ちょっと眠りにくいけど1番安全だと判断した。キャンプせずに最下層までアタックする手もあるけど、無理する必要はないからね。


「モッシュ、アイテムの残量は大丈夫かしら?」


 ミンフィーが紅茶を飲みながらリュックサックの中身を整頓している僕に近づいてきた。


「もう1回挑戦出来る位余っているよ。ただニャンタの剣の予備だけが後1本しかないね」


 ニャンタの剣は耐久性がやや低いので既に3回交換していた。


「長期間ダンジョンに潜るには装備のメンテナンススキルを持ったメンバーが必要ね」


「ちょっとの整備なら僕でも出来るけどニャンタのは特注品だから僕には無理なんだ」


「言えばシャバニさんも同行してくれるとは思うけど、あの人は戦う気が全く無いしね」


「せめてメンバーの装備がメンテナンス出来る様にしようかな。サポーターの役目だしさ」


「全部自分で背負い込む事はないわ。衣類のメンテナンスなら私がやるわ」


「じゃあ僕は鍛治をやるよ。ちょっと興味もあるしね」


「お店は順調みたいね。区民の仕事も増えて活気が出て助かっているわ」


 ミンフィーは区民の生活まで気を回さないといけない立場になっている。

 

 僕達がランクアップすれば更に活気が出るはず!


 絶対に昇格してみせるぞ!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る