第97話 オーバースペック

 僕達はCクラスのダンジョンを次々に攻略していった。ようやくBランクの冒険者になれそうだよ。Bランクになれば一人前の冒険者だ。中級者レベルだね。


 ギルド協会支部に行ってダンジョン攻略の予約をする。


「ミシェルさん、Bクラス昇格試験を申し込みに来ました」


 Bクラスのギルドになるには、新たに作られたダンジョンをクリアしないといけないんだよね。

 エストアール王国のギルド全てに課せられた共通課題で、全都市同じ仕様のダンジョンなんだってさ。


 このダンジョンをクリアする事が実力の証明になる


「モッシュさん、もしクリアすれば最速クリアになります。まだ何処も試験をクリア出来ていませんので」


 BクラスだけではなくAやSクラスにも昇格試験があるそうなんだけど、クリアしたギルドはまだ居ないんだってさ。


「僕達はのんびりやっているんですけどね」


「間違いなくCクラス最強だと思いますよ。新たに導入された昇格試験が厳し過ぎると不満の声が上がっています。冒険者ギルド協会としてはとにかくクリアしてもらいたいです」


 Bクラス昇格試験のダンジョンは全20層。クリアするのに最低3日は必要らしい。入る度にマップが変わるダンジョンでバランスの良いパーティーじゃないとクリア出来ない。公に公開されているのはこの情報だけだ。

 幾つものギルドが挑戦しているけど、みんな最速クリアを目指しているから情報を漏らす所なんて無い。


 予約が取れたのは1か月先だった。1日に1組しか挑戦出来ないんだってさ。

 1か月間で最高の準備をする。それがサポーターの重要な仕事だ。勿論だけど自分の鍛錬もしないといけない。



 〜 Bクラス昇格試験ダンジョン 〜


 国内ではほぼ無名の僕達のギルドが昇格試験ダンジョンを最速でクリアすると思っているのはシャングリラの住民だけだろう。

 

 最高のメンバーが万全の準備を整えてダンジョンの入口に集っていた。


「最強を目指すギルドにとってはただの通過点よ。最速でクリアして有名になるかもしれないけど、そんな事は最強に比べれば小さな事よ」


 ミンフィーはクリアできると確信しているみたいだね。緊張している他のメンバーと違って普段と全く変わらない。


「油断は禁物だよ。隊列をしっかり組んで慎重に進もう」


 シーフのクルミを先頭でダンジョンに入っていく。次にテイマーのフェンとスノウだ。その後に僕が続く。


「ノーマルな洞窟タイプのダンジョンだね」


 すぐ前を行くフェンに話しかける。


「さすがに入口付近の敵は弱いみたいね。クルミとスノウがどんどん倒しているわ」


「え!? もう倒しちゃってるの?」


「敵の強さを見極めるのも斥候の大事な務め。弱ければ倒してしまえばいいのよ」


 たまにクルミとスノウが戻ってきてフェンに情報を伝えている。


「下への階段を見つけたそうよ。思ったより敵が弱いわね」


 まだ1回も戦闘してないよ……


「ニャーゴ……」


 ニャンタが不満そうにこちらを見ている。


「ニャンタも斥候に出たいのかい?」


「ニャ!」


「しょうがないな。次の層からニャンタも出ていいよ」


 ニャンタが嬉しいそうにスタスタと駆け出し行った。


「馬鹿猫も行かせたのね。敵の姿を見るのは先の話になりそうだわ」


 ミンフィーはニャンタの後ろ姿を見送りながら呆れた顔をしている。みんなかなり強化してきたみたいだね。自信があるのは分かるけど無理はしない。


「フェン。ソロは消耗も激しいから敵が強くなったらパーティーで戦おう」


「そうね。少しずつ敵は強くなっているみたいだからソロは4層くらいが限界かな」


 フェンの予想通りで4層の奥の敵はかなり強かったみたいだけど斥候達が倒してしまった。


 5層からは斥候を休ませてパーティーで戦っていく事にした。敵はソロダンジョンで戦った事のある敵ばかりだ。特徴もよく知っている。ソロでも勝てそうだけどあえてパーティーで戦ってコンビネーションを確認する。


「みんなの動きが以前とは段違いだよ。下の層に降りながら連携を再確認していこう」


 まだ強化魔法も弱体魔法も使わずに魔力を温存している。栞さん、ザリウス、アイリス、ティアナは近接攻撃で戦っていた。ニャンタまで魔法を温存している。

 休憩を取りながら一気に10層まで到達した。


 最奥部らしき場所にボス部屋があったけど、みんなでボコボコにしてしまった。


「今日はここでキャンプをしましょう」


 ミンフィーの提案で1日目はここまでに決めた。

 ボス部屋の片隅にテントを素早く設営した。自分達のギルドで作っている自慢のテントだから設営も慣れているね。栞さんがスキル『聖域』を発動した。


「ボスがリポップする可能性があるね。交代で警戒しよう」


 実力のあるパーティーならここまでは問題なく来れるはずだ。このダンジョンをクリアできないのは20層という長丁場が原因だと予想している。キャンプに1番適しているのはボス部屋だろう。リポップさえしなければだけどね。


 ボスは1時間後にリポップした。雑魚モンスターに比べたらポップ間隔はかなり長いけど、睡眠を取りたいパーティーにとってはキツイだろう。だけど……


「ボスは襲ってきませんね」


 栞さんの聖域に守られているキャンプは安全みたいだ。見張りは交代でするけど安心してぐっすり眠れたから体力は完全に回復していた。


 早朝に準備を整えて出発する。ウォーミングアップにボスをサクッと倒しておく。


 改めて思ったのはみんなが相当強くなっているって事だ。

 

『本気で最強を目指している人達が集まっている』


 唯一、なんとなく鍛えているのは新加入のクルミだけだ。そのクルミも周りに引っ張られて急激に力を付けている。


 11層からは本気で進む事にしている。よくこんなメンバーが集まったなぁ……

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