第94話 旅する理由
ニャンタの謹慎期間が終了した。朝夕の訓練は継続して行う事にした。僕の店にも来てくれるってさ。
ニャンタの鎧がついに完成した。何度も試作を繰り返して作り上げたシャバニさん渾身の作品だね。
僕がニャンタに装備してあげている。魔猫用のフルプレートアーマーだよ。装備するのが結構大変だけど強度は抜群だね。ニャンタの足の一部と目しか見えない。パッと見だと単なる全身鎧のおもちゃだね。でも、ちゃんと動けるよ。
額の部分に骨のナイフの刀身が嵌めれる構造になっているのがポイントだよ。背にはマントも装備する。
「まずは僕と訓練してから実戦で装備しよう」
「ニャ!」
いきなり壊したら大変だからね。動きも確認しとかないと本当に危険だからさ。
ちょっと訓練してみたけど……
やっぱりニャンタの動きが遅くなる。どれだけ工夫してもそれだけは避けられないんだよね。
「ニャンタの良さを消してしまうけど……いいのかい?」
「ニャ!」
「基本設計は完璧だ。後は素材だな。鋼より軽くて硬い素材さえあればいいんだが」
シャバニさんも鎧の重さが気になるので、ずっと訓練の様子を見てくれている。
スペシャルダンジョンはレア素材が出る。これに賭けるしかないね。
「工房の炉を改築する予定だ。完成すればもっと温度を上げれるぞ」
どんなレア素材でも加工出来る様にするんだね。シャバニさんの工房もだけど、作業場の設備も徐々に良い物になっているよ。
久しぶりにメンバー全員でスパイダーダンジョンへ来た。
今回から立ち位置は1戦毎にローテーションする。ポジションが変わらないのはミンフィーだけ。いつでも助けに入れる様にだね。
僕とティアナ、ニャンタが後衛になった。そこで今まで気付かなかった事に気付いた。
ティアナは黒魔術しか使えない。精霊魔法、回復魔法が使えないみたいだ。
もう1人同じ人がいる……
ザリウスだ。彼も黒魔術しか使えない。呪いかな?
栞さんとアイリスはガンガンと精霊魔法で攻撃している。当然、回復魔法も使用している。クルミは魔法を使わないね。多分、何も考えていないよ。
ハウスに戻ってから呪いにも詳しいホクトさんに相談してみた。
「ティアナ、ニャンタ、ザリウスが使えない魔法があるのは呪いのせいですか?」
「ティアナとニャンタは呪いでしょうね。かなり複雑な呪いの様なで命に関わります。本人達には聞かない方がいいでしょう」
やっぱりね。ホクトさんに聞いて正解だったよ。
「ザリウスも呪いといえば呪いですが、本人が直接呪われた訳ではありません。ダークエルフという種族自体が呪われているのです。これも聞かなくて良かったです」
ダークエルフは精霊達から見離された種族なんだってさ。だからダークエルフで精霊魔法を使える者は存在しないらしい。
「そうなんですか……その辺の事も勉強しないと……知らない内に誰かを怒らせてしまうかも知れませんね」
「各種族には異なった事情が必ずあると思っていいです。ただ、それは書物などには載っていません」
「学ばないと……ホクトさん教えてくれませんか?」
「……いいですよ。でも、どうせなら見てみませんか?」
「見る? 実際にですか? どうやって?」
「各地を旅するんです。それで各種族や各国の実状を目で見て学ぶのです」
旅か……ここを長く離れる訳にはいかないしな。
「シャバニさんのペガサスに2人で乗って各地に行きましょう。すぐに戻れます」
それならいいかな……
「お願いします。とても大事な事の様な気がします」
ホクトさんが世界地図を持ってきた。地図を見せても僕は自分のいるエストアール王国の場所も分からない。
「海の部分が多いですね」
初めて世界地図を見た率直な感想はそれだった。
「世界の7割は海です。海はモンスターが支配しています」
「じゃあ世界の7割以上は魔王の支配下ってことですか」
「いえ。世界はほぼ魔王の支配下です。空は完全に魔王が支配していますからね」
空と海……そこまで含めちゃうと陸地の部分なんてほんの僅かだね。
「陸も半分以上は魔王の支配下です。魔王がその気になれば世界を征服するのは容易です」
そんな気は無い感じだったな。暇そうにしてたしね。
「陸地では戦えるかもしれませんが、海と空ではモンスターの方が遥かに有利です。争うのは愚かですが幾つかの国は交戦状態らしいです」
エストアール王国は魔王と戦う意志が全く無いらしい。今、王国の脅威は西にいる『西の魔女』だとホクトさんは言う。
「ゴラス帝国も脅威ですよね?」
「最初の旅はゴラス帝国に行きましょう」
「き、危険ですよ」
「
僕なら大丈夫? どうして?
次の休みの日にゴラス帝国へ行く事になった。
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