第92話 みんなで強くなろう
ニャンタと訓練するのは早朝と夕方にした。店に出る前に短時間だけ集中して特訓をする事にしたんだ。
「その代わりに全力勝負! しっかりとコンディションを整えておくんだよ」
「ニャー!」
ニャンタはとても嬉しそうだ。ニャンタ用の矢尻を準備する量を減らした。僕自身も無理をしない事にした。しっかりと休息を取って、いい訓練をしたいからね。
ホクトさんがロビーに本棚を設置してくれた。ミンフィーの依頼で本を集めていたんだってさ。
ロビーの雰囲気に合った豪華な飾りの付いた本棚だ。
そこには『モンスター辞典』『魔法解説書』『生産レシピ集』『パーティー戦術指南書』の4冊が置かれていた。
どれも最新の本でとても貴重な物なんだって。当然だけど持ち出し禁止だね。これから少しずつ最新の本を増やしていく予定なんだってさ。
モンスター辞典をパラパラと軽く読み流してみた。
「あの大きな蜘蛛の名前はブラックスパイダーなんだ。攻撃の特徴とかドロップ品まで書いてあるや」
モンスターのランク毎に分けて書かれているのでとても見やすいな。挿絵まで付いているのでイメージもしやすい。これならスペシャルダンジョンで未知の敵に合っても戸惑う事が無いね。
この本とは別にギルドのみんなで共有ノートを書く事にした。スペシャルダンジョンの敵情報を書き込み、情報を共有する為だね。
「本に書いてある事と自分が感じた事に差がある場合があるわ。その辺をノートに書いてくれると嬉しいわね」
この共有ノートを提案したのはミンフィーだ。既にノートにはかなりの書き込みがしてあった。どうも自分なりにモンスター辞典が正しいのか検証していたみたいだ。
「本の情報はあくまで参考程度よ。本当に大事なのは自分で見て感じる事。情報があるからと油断しない様にね」
「初めて対戦する敵は今まで通り、慎重に戦えって事だね」
「そうよ。『本に書いてある通りじゃなかったから死んだ』なんて事にならない様にね」
良い布材をドロップするので、僕達はCクラスダンジョンでブラックスパイダーを狩る事が多い。
よく読んでみよっと……
フムフム……大きな目が弱点でそこへ攻撃を加えると怒り狂う。火属性の攻撃を加えると厄介な糸を出さなくなる。どうしてなのかは判明していないっと。
へぇ〜 本当はネバネバする糸をお尻から出すんだ。かなり戦ってきたけど1度も見た事ないや。
ニャンタがいつもファイアボールで攻撃していた。
偶然かな……知っていたのかな?
ニャンタの魔法で威力が強いのはファイアボールだけだからね。僕も全属性の魔法を揃えておこう。敵への初撃に使えるからね。
火、水、雷、土、風、聖、闇、無の属性魔法攻撃だ。正式な呼び方は精霊魔法っていうそうだ。無属性だけが精霊魔法では無い。
精霊魔法とは世界中に存在するという見えない精霊の力を利用した魔法だ。
栞さんの得意な回復は聖属性の事が多い。神聖スキルが高い程、回復量が多くなるんだって。
ニャンタの使う重力魔法は無属性だね。
それとは別にザリウスの得意な黒魔術なんてのもあるよ。
アイリスの得意な演奏と歌も一種の魔法だっていう考え方もあるんだってさ。
魔法の事だけでも覚えるのが大変だよね。
強い魔法だと詠唱が長くなってしまうので初撃には向かない。初心者用の魔法で丁度いいや。
ほとんどのモンスターに弱点の属性がある。それに合わせて初撃を選べばいいね。
ファイアボール、ウォーターボール、ストーン、ウィンドカッター、ライトアロー、ダークアロー、マジックミサイル
を覚えた。これで8属性全部に対応出来るよ!
ついでに初心者用黒魔術を覚えようかな。でも黒魔術を使う人がパーティーに2人もいるから相談してから覚えよう。
勝手に黒魔術を唱えると魔法使いから怒られるんだってさ。魔法使いは効果時間をしっかり考えて再詠唱する。
他者の魔法が掛かっている状態では魔法の上書きが出来ない為、効果が切れるのを待つのだけど……
術者によって効果時間、再詠唱時間、効果自体もマチマチで管理が出来なくなっちゃうだってさ。
ロビーにみんながいる時に相談を持ち掛けた。
「スキル上げで黒魔術を1個だけ覚えておこう思うんだけど何がいいかな?」
「一般的なのは遅延魔法や毒魔法だな。ただ、Cクラスのダンジョンではほとんど魔法は効かないぞ? 魔法が掛からなければスキルは上がらないからな」
ザリウスが丁寧に教えてくれた。黒魔術は成功しないとスキルは上げれないって事だね。結構厳しいな……
「そうなんだ。まずはEー3で上げないとダメか〜」
「オススメはスロウですね。成功すれば敵が少しだけ遅くなりますので分かりやすいです。毒は効いたのか初心者には分からないと思いますよ」
ティアナのアドバイスに従ってスロウを覚えた。確かに毒状態の敵なんて見分けがつかないよね。
黒魔術は効いたのかどうか分かりにくい魔法だ。でも、ザリウスやティアナが居ないと明らかに敵は強く感じる。
それだけ効果のある魔法なんだよね。
僕は出来る事を何でもやらないといけない。みんな秀でた才能があるけど僕には無いからさ。
いろんな事をとことんやって鍛えまくるしかないんだ!
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