第29話 プロの売人

 〜 ギルドハウス ロビー 〜


 シャバニさんのスキル集めをする為に初心者向けダンジョンを全てクリアした。回り道をするみたいだけど文句を言う人はいない。

 みんな装備をしっかり整えて、戦闘の連携を深めて、個々の戦い方も基本を大事に見つめ直す。いい機会になったと喜んでいる。


 シャバニさんは商売を始めるそうだ。


「まずはやくを売る」


「ポーションですか? あまり儲かりませんよ?」


「ウチが商売を始めたのが周りに分かればいい」


「市場に出店を出すくらいかな……」


 パーティーには必ず回復役がいるのでポーションの需要はあまり高くない。ギルドに納品すれば安いけど買い取ってくれるので今まではそうしてきた。


ぶつを見せてくれ」


 ミンフィーが最近作ったポーションを持ってきた。


「かなり品質が高い自慢の品よ」


「栞、鑑定してくれ」


 ポーション +5


「ここまでいくとハイポーションに匹敵します」


「俺が市場で仕入れたぶつも鑑定してくれ」


 そう言ってポーションをテーブルの上に置いた。


「10ゴールドで売っていた」


 ポーション 


「普通のポーションですね」


 ポーションをもう1個テーブルに置いた。


「こっちはどうだ?」


 ポーション ー2


「なるほどな……セコい儲け方だな」


「粗悪品を混ぜて売っていたんですか!?」


「よくやる手だぞ? 驚く事は無いな」


 そうなのか……どれも同じ品質だと思っていたよ……


「ウチは普通のポーションを普通の値段で売るから、品質はに揃えてくれ」


「いい品質の薬を安く売った方がいいと思いますけど?」


「それは1番ダメな売り方だな」


「どうしてですか?」


「そんな事をしたら価格が崩れてトラブルになるぞ? 市場から追い出されるか、場合によっては消される」


 消されるってそんな物騒な事あるわけ……無いよね?


「こっちはプロだぞ? まあ任せておけ」


 市場に露店を出すには通常だと商業ギルド協会に申請しないといけない。だけど冒険者ギルド協会と商業ギルド協会は提携しているので冒険者ギルド協会でも手続きは可能だ。


 ミシェルさんに出店申請をお願いしたらすぐに許可が出た。通常だとかなり時間がかかるって聞いてだけどさすが仕事が出来る人だ。


「本当に場所は目立たない所でいいんですか?」


「細々とやるそうなのでいいそうです」


 良い場所じゃない方がいいとシャバニさんから言われたのでかなり外れの場所にしてもらった。人気が無い場所だから許可が早く出たのかもしれないな……


「そうですか……まあここなら場所代も格安ですしね」


 やっぱり賑わっている場所は場所代も高いらしい。そんな所は空きがまず出ないし、出ても競争が激しい。


 〜 町の市場 〜


 今日からシャバニさんが市場に露店を出しているのでミンフィーと様子を見に行く。


 市場のあまり人通りが良くない場所に露店はあった。店のテーブルにはちゃんとギルド『レザムールズ』の小さな看板が掲げてある。商品はポーションだけだね。


 なぜかダークエルフのザリウスが店番をしている。


「ザリウス、シャバニさんは?」


「売り上げをやるから店番をしてくれって言われたんだ」


「あの人はやる気が有るのか無いのかわからないわ……」


「肝心の売れ行きはどうなのかな?」


「こんな所で売れる訳無いと思っていたが……なぜか売れてるんだ」


 シャバニさんが露店に戻ってきた。


「どうだ?」


 ザリウスに売れ行きを確認している。


「まあまあだな……空瓶はどうだ?」


「5個ですけど次回から持ってくると言う方もいました」


「空瓶?」


「ああ、空瓶を持ってきたら2ゴールド値引きして売る事にしているんだ」


「なるほどね……瓶は買うと1個4ゴールドよ」


「洗えば十分使える物ばかりだ」


 回収した空瓶を見て満足そうに微笑んでいる。空の瓶に直接、薬を入れるサービスもしているそうで、その場合は1ゴールド値引きするらしい。


 ちょっとの手間でボロ儲けじゃないか!


「ザリウス、お前はいい売人になれるから毎週月曜日雇わせてくれ」


「こんなのであなたの言う額が貰えるなら喜んでやります」


 幾らなんだろう? 


「どう考えてもポーションの売り上げより多いですが?」


「ダンジョンの稼ぎを回すから問題無い」


 店は月曜日の午前中と日曜日しか営業しないそうだ。


「まだ売り物が少ないからな」


 日曜日は午前中は猫耳族のフェン、午後からはエルフ族のアイリスが店番をする事になっているそうだ。


 自分はあくまで裏方で前面には出ないらしい


「ちょっとこの帽子を被ってみてくれないか」


 シャバニさんはそう言ってザリウスに丸いツバの帽子を渡した。あまり町中で帽子を被っている人は居ないので結構目立つ。


「日除けにいいから被っておいてくれ」


 あまり店の前にいると客が来ないから、見たいなら離れた所から見る様に言われたのでちょっと遠くに移動した。


 しばらく見守っているとお客さんがやってきた。


 ザリウスがニコニコ笑って対応している。クールなダークエルフってイメージだったんだけどギャップがあるな。パーティーの時とは全然違う。


 またお客さんが来た。結構来るな……


 しばらく見守っていると……


「お客さんはみんな女性だわ……」


 お客さんは顔を真っ赤にして買い物している。


 日曜日も気になったのでミンフィーと見に行ってみた。


 フェンがウォーウルフと一緒に接客していた。みんなウォーウルフをモフモフと撫でていく……


 午後からはアイリスが店番だ。なぜか竪琴を演奏していて人が集まっている。男性ばかりだ……


「まともかと思ったけど……」


「全くまともに売るつもりは無いわね」


 フェンもアイリスも可愛いらしい帽子を被っていた。


 シャバニさんが作った物だね。


 次は帽子を売るつもりだね!

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