第28話 プロフェッショナル

 ギルドがDランクに昇格した事で行けるダンジョンが大幅に増えた。当然、敵も強くなるから大変だね。

 今日は無難に人があまり居ないキノコダンジョンで乱獲をする事にした。


 シャバニさんは狩人っぽく動くそうだ


 ミンフィーと僕が敵をガンガンとしていく


 ちょっとテイマーのフェンがもたつくので、そこへシャバニさんが援護射撃をしてくれる。本当にスキルがあるみたいで1発も外さずに矢が命中している。


 戦いにもすぐに順応して理解しているみたいだ。


「プロなら当たり前の事だ」


 戦いが進むとフェンとテイムモンスターのウォーウルフが強くなってきた。もたつきが無くなり援護が要らなくなる。


「ちょっと真面目にやるから同じ様に敵を回してくれ」


 今まで真面目じゃなかったんですか……


 シャバニさんの所にも敵が連れて来られる。


 バシ!!


 お化けキノコの頭部に矢が突き刺さった!


「ヘッドショット、生物は急所を攻撃すれば死ぬ」


 敵を必ず1撃で射殺していく。とても初心者じゃない。


 本当にプロフェッショナルだ……


「敵が足りないわ……シャバニさんは休んでいて」


 敵が全く居なくなる時間がとても長くなってきた。これでは効率が悪くて、索敵して敵を連れてくるフェンとアイリスに負担がかかる。


「働かなくていいのか? 金が欲しいんだが?」


「みんなの訓練も目的なのよ、あなたは訓練が要らない。お金は休んでいても渡すわ」


「なるほどな……では遠慮なく絵でも書かせてもらうよ」


 僕のリュックから紙と鉛筆を取り出して絵を書き始めた。メンバーが交代で休憩する時だけシャバニさんが入る。


 シャバニさんは生産職のスキルが欲しいらしい。無い物は作ればいいと考えているみたいだね。特に衣服にはこだわりがあるので裁縫、革細工を優先的に習得して鍛治もやる予定らしい。アイロンを作ると言っている。ヨレヨレの服は許せないと言っている。

 悪人といえば汚い衣服を着て、盗みか何かをしているイメージだけどシャバニさんは全く違う。洗練された無駄の無い大人なんだよね。


 シャバニさんの書いている絵を見せて貰った。


 お化けキノコの絵だ。とてもよく似ている。


 今にも動き出しそうな迫力がある絵だ。


「キノコに手足があるなんて面白い、モデルに最高だ」


「とても上手ですね」


「小僧、お前の攻撃はバラツキ過ぎだぞ? もっとしっかりと急所を狙え」


「頭ですか?」


「そうだ、止まって寝ている敵なのに急所を外すなど素人すぎて見ていられない」


 ううう……そうだよね。簡単に倒せるから雑になっていたかもしれない。だってぶっ叩くと気持ちいいし……


 たまにシャバニさんが気づいた事をみんなにアドバイスしている。


「フェン、もっと狼を死角から攻撃させて2対1の状況を活かす工夫をしろ」


 特にフェンと僕には多くアドバイスをしてくれる。後衛は問題無く強力なのに対してフェンと僕はちょっと劣っている感じだ。どうしてもミンフィーとは倒す数が違いすぎてそう感じてしまうのもある。


 だけど確実に強くはなっている!


 でも……1番成長が遅いのは僕だ……


 だんだんフェンの倒す数が増えてきて、もうちょっとで同じ位の数になりそうなんだよね。


 無駄な動きを減らして、狙いをしっかり定めて武器を使うようにする。とにかく集中して戦わないと雑になる。


 ボスを倒してガチャを引いてもらう。


 シャバニさんがゲットしたのは……


 スキル 調理 +2


「あれ? 服を作るんじゃないんですか?」


「まずは食う事からだ」


 

 〜 ギルドハウス キッチン 〜


「チッ! 砂糖もミルクも無いのか!」


「どちらもとても高価で買えないわ」


「卵はあるな……砂糖水を出して分離すれば砂糖は手に入るな……ミルクも出せるはずだ」


「可能ね……何を作るにかしら?」


「プリンというデザートだ」


「聞いた事が無いわね……」


 シャバニさんは甘い物が大好きらしい。特にプリンは必ず夕食後に食べないと気が済まないそうだ。


「これでもかなり我慢して暮らしているから頼むよ……」


 相当、深刻な様だ。


「モッシュ、協力してあげて」


「後はマヨネーズを出してくれ」


「マヨネーズは出せませんよ」


「嘘だろ? マヨネーズは飲み物だ!!」


「どう考えても違いますね」


「チッ! それも作るのか……」


 市場に行って食材をいろいろ買い込むのを手伝う。


「何で海産物がこんなに少ないんだ?」


「この町は内陸部で海はかなり遠いですから、ほとんど海産物はありませんね」


「イカとエビ、タコと魚も欲しいんだが……」


「エビなら川海老、魚は川魚ですが臭いのでみんな食べませんよ?」


「深刻だ……俺はずっと海の近くで生きてきたんだ」


 海産物を買える程の予算は無いんだよね。どれもかなり高価なんだ。魚の干物くらいしか無いけどね。


 夕食はシャバニさんがキノコクリームパスタとチキンソテーにミンフィー特製トマトソースかけた物を作ってくれた。

 プリンというデザートは明日からしか出せないらしい。


「すまないが明日からは食事を作らせてくれ」


「別に構わないけど大変よ?」


 びっくりするほど美味しいからいいけど……


 とにかく自分でやりたい人らしい。今まで結構、我慢していたんだけど、一旦、自分でやったら抑えられなくなったそうだ。

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