第10話 鬼教官出現

 〜スケルトンダンジョン〜


「ではモッシュ。後は1人で戦ってみて。経験値アップの飲み物をみんなで飲みましょう」


「「 えええ!? 」」


「栞さんもこっちで座ってて。カウンターヒールだけ狙えばいいわ」


 お嬢様はリュックサックから水筒を取り出してコップにアイスティーを注いでいく。


 みんなで経験値アップのアイスティーを飲んだ。


 栞さんはお嬢様の隣りにちょこんと座って両手棍を構えたけど、心配そうに僕を見ている。


「お嬢様。他の飲み物も飲んでいいですか?」


「駄目よ。それじゃあ訓練にならないわ。強くなる飲み物はしばらく禁止よ。戦闘中に集中を切らしては駄目よ!」


「ううう……」


 またスケルトンが3匹ポップした。


「ヒール!」


 敵を引きつけてボコボコと攻撃し、棍棒で敵の攻撃を受け流し、盾で防御しながらカウンターで戦っていく。


「ぐっ……!」

「ヒール!」


 ちょっと切られた!……けど治っている!


 栞さんがジッと僕と敵を見ている!


 ボコボコ! 棍棒でスケルトンを叩いて倒す。


「痛ぅ!」

「ヒール!」


 またやられた! ……けど治っている!


「モッシュ、魔法も使うのよ。自分の持っているもの全てで戦うの」


 そうか! 僕もヒールで攻撃すればいいんだ!


「ヒール!」 ボコボコ! ガシャ……


 受け流しながらカウンターをチョコチョコ入れて


 蹴り! 「ヒール!」 ガシャ……


 ボコボコボコ!! ガシャ……


 スケルトンを3体倒した!!


「いいわね。魔力を回復する飲み物を作って」


 ふぅ ふぅ ふぅ もうバテてきたよ……


「ヒール!」


 栞さんが回復してくれた。体力が戻ったみたい。だけど体が重い……魔力が底をつきそう……


 リュックサックにぶら下げている『コップ』を両手で持って飲み物を作る。味は……野菜ジュースにしてみよう。


「魔力の回復する飲み物出ろ!」


 オレンジ色の飲み物で『コップ』が満たされた!


「野菜ジュースにしてみました」


 とりあえず水筒に移し替えてから僕と栞さんのコップに注いでいく。


「……私のは無いの?」


 お嬢様がとても悲しそうな顔をしている。魔力を使って無いからミンフィー分はいらないと思ったけど欲しいみたい。


「も、勿論ありますよ、お嬢様」


 ミンフィーのコップにも注いであげると嬉しそうにジュースを飲んでいる。


「中々美味しいわね。野菜ジュースは健康にいいわ」


「このジュースで魔力を回復を出来るんですか? 本当なら凄いような……」


「え? 凄いんですか?」


「ほら! みんな早く飲まないと敵がポップするわよ」


 慌ててジュースを飲み干すと体が軽くなった。


「私には魔力が回復しているのか分かりませんね……」


「モッシュとあなたでは魔力の絶対量が違うわ。モッシュはこれから鍛える所ですもの」


 僕の魔力は限界だったけど栞さんは平気だったみたい。


「モッシュ、もう少し魔法を多く使って。体が重いと感じたらジュースで回復ね」


 ミンフィーが水筒を2個、リュックサックから取り出して『コップ』に野菜ジュースを出す様に指示した。

 

「今日は魔力回復の飲み物をキープしておきましょう」


 『コップ』に作った野菜ジュースを水筒に移し替えてリュックサックに片付けた。


「そろそろレベルが上がると思うわ」


 次のスケルトン3匹では上がらなかったけど、その次にレベルが5に上がった。


 ミンフィーがリュックサックから水筒を5個取り出した。いつの間にあんなに用意したんだろう……


 全部に魔力回復の野菜ジュースを入れていく


「そろそろこの水筒をコップと思う事が出来ないかしら?」


「ううう。水筒にしか思えないよ。形も違い過ぎるし」


「あ! コップ1杯のスキルの人だったのね!」


 僕も不名誉な有名人。すぐに忘れ去られそうだけどさ。


「さあモッシュ。どんどん魔法を使うのよ!」


「もうお腹がタプタプで飲めないですよ……」


「じゃあ、ジッとしてないで走るのよ! そうすれば喉が渇くわ!」


 ミンフィーの目がとても怖い……どうしたんだろう?

 もの凄いスパルタ教官になってしまったよ……


 仕方ないから敵がポップまでジョギングをする事にした。


 ミンフィーと栞さんは本を読んでいる。


 え? 栞さんの分まで本があるの?


 何冊僕のリュックサックに本を入れているんだよ……


 やけに重たいと思ったんだよね。


 スケルトンが3体現れた!


 栞さんも本を置いて両手棍を構えている。


 座ったままだけど……


 ミンフィーも本を置いて僕の動きをチェックしている。


 座ったままだけど……


「ほら! 集中が甘いわよ! 研ぎ澄まして!」


 ヒィーーーー!


「ほら! 魔法、魔法! 蹴りをもっと使って!」


 ヒィーーーー!


「痛っ!」

「キュア!」


 栞さんはヒールからキュアに魔法を変えてくれた。体力的にも楽になる!

 経験値アップのアイスティーと魔力回復の野菜ジュースを交互に飲む。


 そしてジョギングをする! 敵を倒す!

 回復魔法を受ける! 魔力を回復する!


「凄い訓練ですね……」


 栞さんが驚いている。そうだよね。


 ちょっとキツくない?


「こんなのモンクコースの初日以下よ?」


「「 えええ!? 」」


「こんな程度で泣き事を言ったら初日で落第よ」


 どんなコースなんだろう?


 モンクコース恐ろしいや……


 モンクコース10年ぶりの卒業生って相当凄い?


 てっきり不人気だから10年ぶりと思っていたけど


 卒業するのが大変だから10年ぶりなの?


 ミンフィーより強い人なんていないね!

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