貧民区のお嬢様

第9話 回復できないヒーラー

 〜スケルトンダンジョン〜


「やっぱり緊張するね、スケルトンは強そう……」


「しっかり訓練したから大丈夫よ、自信を持ってね」


 ダンジョンに入って行くと最初の部屋に誰かいる。不人気のダンジョンだから誰もいないと思っていたけど。


「すみません、奥の部屋に行きますので通りますね」


 先に居た人に場所の優先権があるから、邪魔をしては駄目というのがダンジョンのルール。


「あ、あの……宜しければご一緒させて頂けませんか?」


 女性の冒険者さんが1人でスケルトンダンジョンにいるなんてどうしたんだろう?


「僕は初心者だし、ここに来たのも初めてです。ベテランの冒険者さんとはとてもパーティーは組めません」


「あ、あの、私、パーティーをクビになって行く所が無いんです。どうかお願いします」


「お嬢様、可愛そうな人みたいですよ。どうします?」


「ジョブは何かしら? ここでソロを出来るなら1人でもいいと思うけど?」


「私、見習いのプリーストなんです。ソロには向いていません。お願いします。パーティーに入れて下さい……」


 確かに両手棍を装備しているし格好もプリーストっぽい格好をしている。

 でも、回復役って結構人気があるジョブだよね。パーティーの募集も沢山あると思うけど。


「なるほどね。プリーストならスケルトンには強いわ」


「パーティーを探しても入れてもらえそうなパーティーが無くて途方に暮れていたんです」


「え? ウチのギルドは募集を出しているはずだけど?」


「モッシュ! 困っている人は助けないと! あなた! 一緒に頑張りましょうね!!」


 ミンフィーが女性の手を両手で握って励ましている。


 本当にミンフィーは優しくていいギルドマスターだね


「で? どうしてパーティーをクビになったのかしら?」


「回復が出来ないんです……」


「ええ?! 回復役ですよね?」


 女性は落ち込んで下を向いている。回復が出来ない回復役なんているのかな?

 

 それって回復役じゃないよね……


「私、血を見ると気を失ってしまうんです……」


「……分かったわ。パーティーを組みましょう」


「ありがとうございます。私はしおりと言います。プリースト見習いのレベル4です。よろしくお願いします」


「僕はモッシュです。サポーターですけど戦闘の訓練をしています。よろしくお願いします」


「私はミンフィーよ。モンクだけど今日は見学します。よろしくお願いします」


「ミンフィーさん? そう言えばギルド協会に募集が」


「栞さん! まずはモッシュの戦いを見て下さいね。1人で戦える様に特訓して来たのよね? モッシュやってみて!」


「う、うん! やってみるよ!」


 スケルトンが1体ポップした!


 剣と盾を持っているな……強そうだ!


 昨日の特訓を思い出してやってみよう


 スケルトンが剣で斬りかかって来た!


 棍棒で受け流す


 スー


 そしてカウンター気味に攻撃する!


 ボコ! 


 ガシャ!


 スケルトンの骨が砕けて ちょっと怯んだ!


 すかさず蹴りを入れて さらに棍棒で叩く!


 ボコ! ボコ!


 ガシャ ガシャ……


 スケルトンを倒した!!


「お嬢様! 特訓のおかげで敵の動きに体が反応します!」


「ね? 意味がある特訓でしょ?」


「はい! さすがです! お嬢様!!」


「サ、サポーターとは思えない動きですね……」


「栞さん、モッシュは他の人とパーティーを組んで戦った事が無いから魔法で攻撃してくださるかしら? 一緒に叩いても良いけどどうしますか?」


「で、では両方やります!!」


 奥の部屋に行くとスケルトンが3匹居た!


「やれるかな……」


「メインの盾役はモッシュよ。まず回復魔法で攻撃をしてから敵のターゲットを自分に固定するのよ。後は特訓を思い出して攻撃をよく見て戦えば大丈夫よ。危なかったらすぐに私が入るわ。安心して」


 スケルトンの真ん中にいるヤツに魔法を使う。


 「ヒール!」


 そしてスケルトンの群れに突撃して行く!


 まずは真ん中のヤツを倒すぞ。


 ボコ! ボコ! ガシャ…… スケルトンを倒した!


「キュア!」


 栞さんが回復魔法を唱えた! 


 右側のスケルトンが消えてしまった!!


 残りは左側のヤツだけだ


 よく見て攻撃を受け流してカウンターで攻撃をする!


 スー ボコ! ボコ! スー ボコ! ガシャ……


「ふぅ〜 倒せましたね。栞さんの魔法は凄いですね。1撃で敵が消えちゃうなんて!」


 ヒールは初心者用のとても弱い魔法だけど、キュアはちょっとした状態異常まで治せちゃう中級回復魔法。威力もヒールよりキュアの方が全然強い。アンデッド系のモンスターを浄化する事が出来るので攻撃にも使える。


「ここはプリースト有利ですからね」


「栞さん、モッシュの回復もお願いしますね」


「え? 私、あの……」


「お嬢様、栞さんは回復出来ないって言ってましたよ」


「ちゃんと魔法が使えたわ。詠唱も早いし中々ね。回復が出来ないんじゃなくて血が苦手なんでしょ?」


「え? あ、はい……そうですね。回復は出来ますね」


「じゃあ、血が出る前に治せばいいわ。解決ね!!」


 ミンフィーは僕のリュックサックを持っていき、敷き物を引いて紅茶を飲み始めた。


「お嬢様……そんな無茶苦茶な……」


「そ、そうですね、頑張ってやってみます!」


 ええ!? やるの? そんな事出来る訳ないよ〜


「ここも5分ポップね、今日はここで2人共特訓よ!」


「「 はい!! 」」


 栞さんは僕の事をジッと見ている。いつでも回復魔法を唱えれる様にしているみたい。


 スケルトンが3体ポップした!


「ヒール!」 

「キュア!」


 右のスケルトンを栞さんが1撃で倒した!


 真ん中と左の2匹だけを相手にすればいい


 盾と棍棒を使いながら敵の攻撃を防御して


 カウンターでボコボコと反撃していく!


「モッシュ、蹴りも使うのよ! 栞さんも攻撃して!」


「「 はい! 」」


 栞さんは敵の背後に回って両手棍でボコっとスケルトンの頭を叩いた!


 ガシャン……


 真ん中のスケルトンが崩れ落ちた!


 左のヤツが怒って僕に飛び掛かって来た!!!


「わわ !!」


「ヒール!」


 受け流しきれなくてちょっと足を切られたけど


 何ともなってない……


「あれれ?」


「モッシュ! 集中よ! 盾を前に出して」


 そうだ! まだ戦闘中だった!


 ガン!


 スケルトンの剣を盾で受け止めた!


 ベキ!


 スケルトンの足に蹴りを飛ばした!


 栞さんが後ろから両手棍でスケルトンの頭を叩いた!


 ガシャン……


 スケルトンを倒した!!


「回復出来ました!! ありがとうございます」


「回復して貰ったのか〜 怪我をしたと思ったら治ってた」


「カウンターヒールよ! 攻撃を受けた瞬間に治すの」


 全く血が出て無いや。ミンフィーの指導は凄いな


 栞さんの回復力も凄いや……


 僕のヒールとは全然違う


 やっぱり本職にかなわないね

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