森をぬける

豆君と鳥は

森の中を歩いて飛んでいた

「楽しいか?」

「楽しいよ」

鳥はニコニコしている


「なんかはなして」

鳥はニコニコしながらいった

「いい…話さないって意味のいいだ」

豆君はムスッとした顔でいった

「それならまずわたしが話すね

えっと…あなたはなあに?」

「梅干しの種だ」

「梅干しの?」

「そうだ」

豆君は梅干しについて説明した

それからきょうだいたちともわかれ

食べられて種だけになったことも


「そうだったの 木の実かと思ってた」

「木の実と言えば木の実だが やっぱり種だな」


「たいへんだったね」

「なにもたいへんじゃない

種になるために生きてきたんだ もう芽はでないけど」


「これからどうするの?」

「世界をみてまわるんだ」


「ふ~ん みたあとはどうするの?」

「そのとき考える」

「ふ~ん」


「おまえはひとりなのか?」

「ひとりだよ」

「ずっとか?」

「ずっとじゃない」


「なまえはあるのか?」

「うん」

「なんてなまえなんだ?」

「とり」

「それはなまえじゃないんじゃないか」

「なまえだよ」

「そうか」


「おかあさんはいるのか?」

「いたよ」


「いた?いまは?」

「遠くにいると思う」


「帰ってくるのか?」

「うん たぶん」


「ともだちはいるのか?」

「いるよ」


「どこに?」

「いろんなとこ」


「さみしくないのか?」

「うん」


「いっしょにくるか?」

「いい…いかない」


「あなたのなまえはなあに?」

「おれか…豆君だ」

「いいなまえだね」

「ああ」


豆君と鳥は

しばらくいっしょに散歩した

いつのまにか森の出口

「この先には行ったことがないんだ」

鳥はいった


「どうする?」

「もう少しあそびたいけど やめとくね」

「そうか おれはこの先に行ってみる」

「うん」

「じゃあな」

「じゃあね ありがとう」

鳥はもときた道を戻っていった

豆君はそのまま歩いていった

少し歩いて立ち止まり

もときた道をふりかえった

鳥はもう見えなくなっていた

「ありがとう」

豆君は小さな声でいった

そしてまた歩き出した

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