第38話 カチカチね!
〜ガガンゴ鉱山村 南側〜 《勇者side》
巨大な白い鎧が玉付きの両手棍を構えた。
ブーン!
両手棍を軽く振ると空を切る音がした。
ズドッ……
「グハッ……」
エリートパーティーのヒーラーが衝撃波を受けて墜落した!
ブーン! また白い鎧が衝撃波を放った!!
ドガッ!
魔法使いが衝撃波の直撃を受けて墜落していく……
「ヤバイ!! アイツを先に倒せ! 後衛を狙ってるぞ!」
緑の鎧を相手にしていた前衛職が白い鎧を取り囲み、交戦し始めた。
が……いくら攻撃を加えても白い鎧はびくともしない。
既に後衛陣は撃墜されてエリートパーティーはその力を発揮する事を出来ずにいる。
「ドワンゴ国の鎧は化け物か!?」
エリートパーティーの装備品はもちろん一流の装備だ。しかし、その装備を持ってしても白い鎧には傷1つ作れない。
1人、また1人と白い鎧に撃墜されていく……
撃墜されたエリートパーティーは緑の鎧達に手錠と足枷をされている。
『 任務完了しました。初号機、帰還します 』
白い鎧はガガンゴ要塞へと戻っていった。
数日後、エグゼ王国に衝撃が走った。
『 ギルド「ワールドファースト」メンバー6名がドワンゴ国内に無断侵入し、略奪を図った罪として拘束された。この件により、拘束されたメンバーは冒険者管理システムにブラックリストとして登録された 』
玉座の間に国の重鎮達が集って会議を行っている。
ドワンゴ国からエグゼ王国に書簡が届いた。そこには何度も警告したにも関わらず、領空侵犯した冒険者を捕らえた事が記されていた。ドワンゴ国の法では『死罪』とも書かれている。
「1週間以内にドワンゴ国と和解しなければギルド『ワールドファースト』をブラックギルドと認定すると冒険者管理システムが警告して来ました!」
玉座の間に文官が駆け込んで来て、王に報告した。
「なんだと!?」
「冒険者管理システムが罪を認定した以上、ドワンゴ国の法に反いた事は間違いないかと……」
クリストファー王がギルドマスターを務める『ワールドファースト』がブラックギルドに認定されれば、国としての信用も失墜する。
「向こうは何と言っている?」
「国際法に基づき賠償金を支払えば和解に応じても良いと」
クリストファー王がドワンゴ国へ冒険者を行かせた事自体、ここにいる者の大半が知らない事だ。
「クリストファー王、本当は何の目的で冒険者を行かせたのですか? 捕まった者達は真面目で法を破る様な輩では無いと伝え聞いています」
「多分、何かの手違いです。たまたま上空を通った所を捕まったみたいです。ドワンゴ国の法を知らなかったのです」
クリストファー王の側近の女騎士が用意していた答弁を淡々と述べた。
とても納得のいく答弁では無かったが、とにかく火消ししなければ国内は大変な事になってしまう。
エグゼ王国の各地で噂はどんどん拡散し、ギルド『ワールドファースト』に対する目は厳しくなっているのだ。
「賠償金と捕虜の身柄引き取りに10億ゴールドを支払う必要があります」
「ギルドにも懲罰が必要になります。当面の間、活動を自粛して頂きます」
「とにかく手違いで押し通しますので捕虜には寛大な処分をお願いします」
捕虜を厳しく罰すれば、重大な罪を犯した事を認める事になってしまう。
大臣や文官達が次々に王へ進言した。
ただの偵察でとんでもない事態へと進展した。
そもそもエリートパーティーが失敗する事など全く想定していなかったのだ。
悪い知らせは続くものだ。
この後、さらなる衝撃を勇者は受ける事になる。
モンスターを倒してもレベルの上がらない妖狐ちゃんは3日で勇者に国外追放されて辺境国で好き放題!え!?戻って来い?絶対ム〜リ〜私、レベル1の無能ですから!《天才妖狐ちゃんの辺境やり直し生活》 ふぐ実 @fugumi
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