第37話 侵犯ね!

 〜ガガンゴ鉱山村 南側〜 《 勇者side 》


 1組の冒険者パーティーがガガンゴ鉱山村に向かっていた。その任務は単なる偵察だ。

 

 エリート集団のギルド『ワールドファースト』は新人でない限りSランクとAランクの冒険者しかいない。


「こんな任務は他のギルドにやらせればいいのに」


 辺境に派遣されたエリート達の口からは不満しか出ない。


「簡単な任務だ。サッサと終わらせて帰るぞ」


 先頭を歩く斥候役のレンジャーがピタッと足を止めた。


「待て!!」


 レンジャーが双眼鏡でガガンゴ鉱山村の方を見ている。


「アレは城か? 聞いていたのと全然違うぞ……」


 前方には高い壁があり、堀まで張り巡らされている。


 壁の上には緑色のフルプレートアーマーを装備したドワーフ?が巡回警備している。顔は兜に隠れて確認出来ないが背が低いからドワーフだろう。

 奇妙なのは真昼間なのにカンテラを持っている事だ。


「何だあのカンテラは? ドワーフ族の風習か」


「そんな事よりかなり厳重に警戒されているぞ。あれではとても中に入れて貰えるとは思えんな」


「だが所詮は野蛮なドワーフ共だ。いくら地上の守りを固めても空はガラ空きだ」


 エリートパーティーは全員、飛翔魔法が使える。更に姿を消せばほとんど発見される事は無い。


 パーティーメンバーが飛翔魔法と姿を消す魔法を唱えて空へ飛んでいくと……


『 コン!コン!コン! 警告! ドワンゴ国では飛翔魔法の使用を禁止されています。直ちに地上へ降りなさい!』


 パーティーはキツネの鳴き声と女の子の声で警告された。


「チィィーー! 魔法感知のトラップ魔法だ!!」


 壁の上からワラワラと緑色の鎧が飛んでくる!


「何!! ドワーフが魔法を使うのか!!」


「どうする!?」


「このままでは何の情報も得られん! 突入するぞ!!」


 エリートパーティーが辺境の村に入る事も出来ずに帰ってくる等、到底許されない。


『警告!領空侵犯! 引き返さないと攻撃します』

『警告!領空侵犯! 引き返さないと攻撃します』


 無視して突き進むパーティーを緑色の鎧が取り囲んだ。


「どけ!! 殺すぞ!!」


 緑色の鎧は一定の距離を保ったまま警告を繰り返す。


「な、何か来るぞ!! デカイ! 何だアレ!?」


 巨大な白い鎧が一直線にエリートパーティーに向かって来た。そして緑色の鎧達と陣形を組んだ。


「ド、ドワーフにしてはデカイな……」


 白い鎧は両端に丸い大きな玉があるバカでかい両手棍を装備している。


「デカイだけだ! 撃退するぞ!!」


 エリートパーティーと鎧の部隊の空中戦が始まった。


「小さい緑はそれ程強くないぞ!!」


 エリートパーティーの攻撃が何度も緑の鎧を捉える。しかし、痛そうな素振りもせずに突っ込んでくる。


「チッ! 鎧がバカみたいに硬いぞ!」


 高純度アイアンインゴットを使用した上、防御力アップの魔法が付与してある鎧は簡単には壊せない。


 白い鎧はしばらく様子を眺めていたがゆっくりと両手棍を構え……戦闘態勢に入った!

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