第35話 天変ね!
服の製作がとても忙しくて、ついつい夜遅くまで作業をしてしまう。
「お姉ちゃん、そろそろ寝ようよ」
弟くんは私が作業終えるまで寝ないで待ってくれるんだ。
「寝る前に頼み事があったんだ」
「んん? お姉ちゃん何でも聞いちゃうよ!」
優秀な弟くんからの頼み事は少なくからね。
「今から雨降らせてくれないかな? 最近、雨が降らなくて作物の育ちが悪いんだよね」
そういえばあんまり雨が降った記憶が無いなぁ〜
まだ使った事の無いスキルだけど……
「天変の尾!」
コン!
「雨天になれ!!」
こんな感じかな? 弟くんと窓から外を眺めていると……
「あ……降ってきたね」
ポツリ、ポツリと雨が降りだして、次第に強く降ってきた。でも、それ以上は強く降らないみたい。
「うんいいね。魔力はどう?」
「少しずつ消費しているよ。さすがに天候を変えるんだから消費するよね。でも朝までは十分保つよ」
「お昼に突然雨が降るとみんな困るだろうから、夜寝る前に頼んでいいかな?」
「勿論いいよ。降らせたい時は言ってね」
農作業をしてる人も増えてきたし、雨が降らないと困るよね。これが恵みの雨ってやつね!
〜 とある王城 〜
スッと音も無くその男は現れた。全身を真っ黒な衣装で包んでいる。
「シャドウか……」
「はい」
薄暗い玉座の間で密談を交わしている。
「どうした?」
「ドワンゴ国に放ったオークロードが討伐されました」
「む……そうか……あの国……それ程の力を」
アレは普通のオークの数倍は強い。Aランクの冒険者パーティーでも接戦を強いられるモンスターだ。
「ドワンゴ国へ偵察を送れ。別の手段を考える」
「承知しました」
黒装束の男がまた音も無く消えた。
そして玉座の間にドス黒い怒りの炎が立ち込めた。
「手を貸しましょうか?」
玉座に座る男の後ろから若い女の声がした。
「いらん! 黙って見ていろ!」
「あら怖い……野蛮なドワーフすら思い通りに出来ない様では先が心配になってきましたわ」
「心配など無用だ!! すぐに手を打つ!」
「お手並み拝見させて頂きますわ」
玉座の間に静寂が訪れた。王の椅子に座る男は深く、深く考えて次の一手を模索している。
「ドワーフ共は打たれ強い。叩けば叩く程、力を増すかもしれんな。周りの国を崩してそこから雪崩込ませるか……」
彼は己の野望の為に手段を選ばない男だ。
世界は大きな混乱へと向かいつつあった。
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