第27話 チェックされちゃうね!
ナナンゴ村はドワンゴ国の要所に位置するそうだ。ここを抑える事がこの地を治めるには最重要みたいね。
復興が進むナナンゴ村に行商人の馬車が到着した。
ドンガ王、自らが行商人を出迎えた。
「よくあの状況から挽回出来たな」
「貴国の助けがあったからこそだ。この恩は必ず」
「俺は恩なんて売ってないぞ? 売るのは商品だけだ」
ドンガさんとあの行商人は仲が良いみたいね。
「お姉ちゃん、あの商人は隣国『仁』の大商人だよ」
東の隣国『仁』はドワンゴ国よりは大きいけど、似たような小国。別名『商人の国』とも呼ばれ、優秀な商人が多く、各地との貿易で栄えている。
「ウチも大変なんだ。オークに綿花畑をやられてな」
「モンスターは確実に勢力を増しているようだな……」
チョンチョンと弟くんが背中を叩いた。
「それよりお姉ちゃん。例の操作はしてあるよね?」
「うん、ちゃんとやったよ」
たまに弟くんは変なお願いをしてくる。
『 今日は冒険者管理システムのチェック日 』
なんだってさ。この日は大魔導のレベルを1にするの。
ハルカ 大魔導 レベル 1
採掘師 レベル 60
錬金術師 レベル 60
裁縫師 レベル 60
鍛治師 レベル 60
木工師 レベル 52
システムチェックで分かるのは戦闘系のジョブレベルだけなんだけど、念の為に平均にする様に言われた。
魔法やスキルは絶対にバレないけど、生産系のジョブはバレちゃう可能性があるらしい。
〜 エグゼ王国 王都 〜 《 勇者side 》
エグゼ王国は新たな王の元で大変革が行われている。
『エリート至上主義』……選ばれた1部の人のみを貴族として扱い、能力が低い者は全て平民として扱う。
元貴族の大反発を受けたが圧倒的な武力を持つ勇者とそのギルド『ワールドファースト』によって瞬時に鎮圧された。
貴族の特権を排除した事に民衆は喝采を送った。勇者の名声は高まり、早くも名君と言われていた。エリート至上主義に異を唱えるものはほとんど居ないかった。
「クリストファー王、冒険者管理システムチェックのご報告に参りました」
聖騎士専用の白い鎧を装備した美しい女性騎士が玉座の間に入って来た。
「ああ、待っていた。エリートは居たか?」
この日が最高に楽しみだからな。
「基準を満たす者が3名。既に招待状を送付しました」
私は世界中のエリートをこの国に集めなければならない。
「必ず引き抜け。いいな?」
「承知致しております。その他に気になる者が居ります」
「ほう? 聞こう」
「世界冒険者ランキング100に変動がありました。100位に新人がランクインしました」
ランキングはシステムチェックの1週間後に発表される。
私がトップである事は揺るぎようが無いがな。
100位か……誰だった?……老ぼれの賢者だったか
「ドワンゴ国のハルカが新たにランクインしました」
ハルカ……聞き覚えがあるな……
「大魔導のハルカです。以前、追放処分にしました」
あの永久にレベル1の女狐か……何故だ。
「システム上でも大魔導レベル1のままです」
「チッ! 生産系のエリートだったか!」
どれだけシステムを解明しようとしてもガードが厳しくて打ち破れない。未だに戦闘系のジョブレベルしか分からん。
クソ……エリートを流出させてしまうとは!
「分析官も同じ見解です。調査しました所、この様な物を作っている様です」
銅の剣か……確かに品質は良さそうだが……ランキングに入れる様なレベルか?
「コレならウチのギルドにも作れる者が居るだろう?」
「はい。ですがルーキーイヤーでコレを作れたと言う者は居ませんでした。職人達は末恐ろしいと言っています」
職業鑑定は穴だらけだ。最適なジョブが1つしか分からんし、戦闘系ジョブを優先判定している節がある。
「何でも小さな店に引きこもり、日々鍛治仕事に没頭しているとか。ドワーフの採掘を手伝わされている様にも見えたとの報告があります」
愚かなドワーフ共め……
辺境国ではエリートの才能は花開かん!
我がエグゼ王国でこそ大輪の花を咲かせる事が出来る!
「ギルドに戻してやるから帰って来いと伝えろ」
「は!」
ドワンゴ国など吹けば飛ぶ様な国に居るのであれば、さぞ不遇な状況だろう。
泣いて喜ぶに違いあるまい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます