第26話 涙が止まらないね!

 ギルド『フォックステール』にドワーフ族の有志者が冒険者として登録してくれた。勿論、新兵の3人も登録してくれたよ! 更にソウガとプラムまで登録してくれた。

 冒険者達の勧誘効果もあって人員は増え続けている。


 現在、ギルドの登録者数は33名。


 最近、ドワーフさん達は店側によく来る様になった。冒険者達と親交を持つ人まで現れている。

 家を建てるドワーフ族も出てきた。そして、他国からの移民者も増えている。


 ドンガさんは移民を手厚く保護して、一緒に頑張っていくつもりみたいだ。


 弟くんみたいに畑を作る人も多くなってきたね。


 鍛治施設から鉄のインゴットが各地に出荷されて行く。


 着々とナナンゴ村まで防衛線を押し上げる計画は進んでいた。


 そしてついに大規模な作戦が実行される。


 ドワンゴ国軍と冒険者連合軍でドワンゴ国全域のモンスター駆除を実施する。


「ハルカ、今日はやりすぎでもいいぞ」


 集結した全軍にありったけの強化魔法を唱えた!!


「様々な人の協力を得て、ようやくこの日が来た!我らの国からモンスターを消し去るのだ! 全軍突撃!!」


 ドンガ王を先頭に爆発的な勢いで突撃を開始した!! その後を建設職人達が追う。


 今日はゴブリンをゾンビ化するのは無理ね。ゴブリンは粉砕されて原型を全く留めていない。


 凄まじい突撃が繰り返されている!!


 ナナンゴ村まで一気に軍は進行し、建設職人がバリケードを設置していく。更に何台も馬車が到着して城壁を築き始めた。モッチさんが建設職人達の指揮をしているのが見えた。


 第7特殊部隊は戦場を自在に駆け巡り、敵の殲滅と味方の治療をしていった。


 遠方に狼煙のろしが上がっているのが見えた! 

 1本、また1本と上がっていく。そこへ私達は急行する!


 ゴブリンのボス『ゴブリンキング』との戦闘が始まった合図の狼煙だ。それ以外にも強力なモンスターが居た場合には狼煙を上げる事になっている。


 ゴブリンキングとの戦闘はとても激しいものだった。到着したらすぐに回復魔法で負傷者を治療した。

 そしてゴブリンキングにありったけの弱体魔法を唱える!


「ソウガ! ここは任せたわ!」


 私は飛翔魔法で狼煙を回って同じ事していく。次第に狼煙の数が減ってきた。


 更に遠方で赤い狼煙が上がった!!


 大物だ!!


 急行したらドンガ王と巨大なモンスターが一騎討ちをしていた。周りは負傷者だらけだ。


「ハルカ、まずは回復を頼む! 何とか耐えてみせる!!」


 範囲回復魔法で負傷者を全回復した。みんなすぐに立ち上がって巨大なモンスターに向かって行く!


「コイツはオークロードだ!! ゴブリン達を束ねるボス中のボスだ!!」


 オークロード! 


 オークはゴブリンより大きくて強いとされる豚顔の人型モンスターで無尽蔵な体力と凄まじい腕力を誇る敵だ。


 その中でも更に上位種! 


 ドンガ王が必死の抵抗をしている!!


 真正面に立ち、死力を尽くして敵に立ち向かっている!


 凄い!! これこそ真の王の姿だ!!


 最初にギルドメンバーになった3人組のパーティーが決心の覚悟でドンガ王をサポートしている!!


 ドワーフ族だけじゃない! 冒険者達もこの戦いに全力を尽くしている!!


 私は弱体魔法を連続で唱えていく!!


 オークロードを沢山の人が取り囲んで攻撃する。


 グッ! これでは誤爆が怖くて攻撃魔法が使えない。


 更に部隊が集結してきて大混戦になってきた!


 第7特殊部隊も参戦している!


 あれだけの攻撃を受けて耐えるなんて本当の化け物!


 とにかく集中して回復魔法を唱えていく!!


 1人の死者も出してはいけない!!


 少しずつ、少しずつオークロードがふらつき始めた。こちらは万全の態勢で取り囲み削っていく。


 ついにドンガ王の大戦斧が敵の心臓に突き刺さった!


 オークロードは大きな音を立てて地面に崩れ落ちた……


「「 ウオォォーーーー!! ドンガ王万歳!! 」」


 ここに集った全ての勇者達が歓声を上げた!!


 これが真の勇者達だ! 


 志を一つにして巨大な敵に立ち向かい!


 そして討ち果たした!!


「行くぞ勇者達よ! 我らの国を完全に取り戻すのだ!!」


「「 ウォォォーーーー!! 突撃だ!!」」


 激戦を終えたばかりなのに全く疲れた様子も無く、更に進軍して行く。


 そして全ての狼煙が消えた。


 ナナンゴ村に全軍が退却して来た。既にナナンゴ村には強固な城壁が築かれていた。


 重い門が開き勇者達を迎え入れた。


 そして門が閉じられた。


「みんな良くやってくれた! モンスターと戦った者だけではない。こうして城壁を築いてくれた者達、それを背後で支えてくれた者達。全ての者達が勇者だ! これからも共に国を支えていこう!!」


 熱い魂がここに集った。なんて素晴らしい人達だろうか。


「お姉ちゃん、ここに来て良かったね」


 いつの間にか弟くんが私の後ろにいた。


「そうね。こんなに嬉しい事ないかな」


 初めてかもしれない。


 嬉しくてこんなに涙が止まらないのは……


 その日、


 ドワンゴ国は全ての領地をモンスターから奪還した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る