第28話 マックスね!

「ぷふぁ〜〜 効くわ〜〜 このお風呂〜〜」


「どうも水に豊富なミネラル分が含まれているみたいね」


 今日はモッチさんと洞窟の大浴場に来ている。


「最高だわ〜〜 何だか泣けてきちゃいますよ〜〜」


 洞窟の天井はとても高くて圧迫感は全く無いし、雰囲気が最高にいいんだよ〜〜 お湯がとにかくイイ!!


「多少、塩分が入っている様ね。しみるのはその影響ね」


 そう言われるとちょっとお湯がしょっぱいし、薄く濁っている。これは絶対、体に効くよ〜〜


 広々とした大浴場にはドワーフさん達の他にも冒険者の姿も多い。冒険疲れにも効くだろうな〜〜


「で、ハルカ。あの本はどうだったの?」


 先日、ナナンゴ村で見た行商人からドンガさんは本を購入していたの。


「ドンガさんが読んでくれって言うからかなり読みましたよ。もう少しで読み終わりますけど?」


「そう……内容は理解出来たの?」


「魔法とはちょっと違いますよね。似ている所もあるかな」


 本の内容は呪術に関する事だった。何でそんな本を読んで欲しいのかは分からないけど。

 

 モッチさん何か深刻そうなんだけど……


「モッチさん、どうかしたんですか?」


「ドンガさんの奥様の事は知らないのね?」


「会った事ないですけど、洞窟に家あるとは聞きました」


「ハルカ、お願いよ。王妃を救って……」


 んん? なんか大変な事になっているみたいかな?


 モッチさんがドンガ家へ案内してくれた。洞窟の中と言ってもちゃんと扉がある。


 モッチさんが扉をノックするとソウガが出て来た。


「ソウガ、ハルカを連れて来たわ。王妃に面会させて」


「誰も合わせてはいけないと言われてます!」


「ハルカでも駄目なの?」


「う、そ、それは……」


「あの〜〜 私、別にいいけど……」


 モッチさんに無理矢理、家の中に押し込まれちゃった。


「お、おい!」


「もうハルカしか居ないのよ! 王も分かっているわ」


「ぐっ……」


 モッチさんに手を引っ張られて、王妃の元へ連れて行かれた。


 こ、これは……


 王妃の全身が真っ黒になっている!


「最初は病だと思ってあらゆる治癒をしたわ。でも駄目だった。もう呪いしか考えられないのよ」


「恐らく黒死の呪いです。本に記載されてました。全身が真っ黒になると死に至ります」


 もう真っ黒だ。これはもう……


「そうなのね! 解呪は可能なの?」


「え、ええ……でも、もう真っ黒です。間に合わないかも」


「お前達! そこで何をやっている!!」


 わわわ!! ドンガさんが来ちゃったよ!!


「一刻を争います!」


「ハルカ! 母ちゃんはまだ背中の一部分だけは黒くなってないぞ!」


「え!? それなら間に合うわ!」


「失礼します!!」


 モッチさんが王妃をうつ伏せに寝かせて、服を脱がせ背中を確認している。


「手のひら位の大きさね」


「き、昨日はもっと大きかったぞ! 両手位はあった!」


 激ヤバじゃん!! 急がないと!!


「ドンガ王! ハルカは解呪が、解呪可能と言っています!」


「……解呪には2段階の手順がいる様だ。1段階目も2段階目もハルカには無理だ」


「そうなの? ハルカ!?」


「まだそこまで読んでなくて……1段階目っていうのは出来ると思います」


「そんなはずは無い。呪いを掛けた術者を上回るレベルでなければならんはず。恐らく呪術師はかなりの高レベル者。ハルカの大魔導はレベル1。無理だ」


 こ、困ったな……も、もうバレてもいいや。


「2段階目は何ですか? 1段階目は何とかしますので」


「……2段階目は大量の聖水で呪いを溶かす事だ。全力で聖水を集めたが小瓶に30本程度しかない。黒い部分から想定すると大浴場並みの聖水が必要だ。他国に高レベルの聖女を派遣してくれないか問い合わせているんだ……」


 はて? 聖水ってどこかに……


「あるぞ! 聖水はある! 父ちゃん早く言ってくれよ!」


 ソウガが大声で叫んだ! 


 よし! やるぞ!!


「あの〜 これから見る事はどうか内密にお願いします」


 スッと隠蔽の杖からアルテミスの杖に持ち替えた。


「どこかに呪いの素があるはず……」


 杖の先で王妃に触れて呪いの素を探る!


「左の足首ね……そこに何かあるわ」


 とても小さな異物がある様に感じる。とても邪悪な物。


「いきます! 移点の尾!!」


 コン!


 レベルはマックスにしないと! これで駄目だったら……


 まだ時間はある! 何とかするしかない!!


 大魔導のレベルをマックス! 


 ハルカ  大魔導  レベル  403

      採掘師  レベル    1

      錬金術師 レベル    1

      裁縫師  レベル    1

      鍛治師  レベル    1

      木工師  レベル    1


魔法   狐火   追加効果 燃焼継続

     特殊魔法以外の全魔法


 スキル  重量上げ  大   常時発動

      鉱物探知      常時発動


 特殊スキル 移点の尾 経験値を他ジョブに移す

            1日1回使用可能


      変化の尾  姿を変えれる


      育成の尾  経験値増のマーカー設置

            設置数 白尻尾の数

            効果  白尻尾数の倍


      天変の尾  天候を変えれる


 ん! スキルが増えたけど今は要らないね!


「いくよ! セイクリッド・ファイア!」


 呪いの素に集中して炙り出す!!


 聖なる炎で足首を炙る!


「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 王妃がもがき苦しんでいる!!


「押さえろ!!」


 ドンガさんとソウガの2人でガッチリ押さえ込んだ。


 まだ、まだ……集中して、出ろ!!


 ニュルっと黒い塊が王妃の足首から出てきた!


「コイツか!!」


 ソウガが叩き潰そうとした!!


「ダメ!! 捕まえるの!! ビンに閉じ込めて!!」


 モッチさんがビンを持って来て棒で黒い塊をビンへ入れて閉じ込めた。


「これは血を吸うヒルね……」


「セイクリッド・エクスキュア!!」


 聖属性の最上級回復魔法で王妃の弱った体力を全回復する。火傷の跡も完全に消えて無くなった。


 今の私では王妃を背負えない。


「ソウガ! あそこへお連れして!」


「おうよ!!」


 ドンガさんが王妃を背負ってソウガとあの聖水の池に向かった。


「他言は絶対にしないわ……でも、1つだけ教えて。今のあなたのレベルは幾つなの?」


「レベル403です。私も池に向かいますね」


 フワッと浮き上がり、聖水の池へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る