第9話 ウハウハの予感ね!

 ニヤけ顔マックスで掘り掘りしていたらソウガに気持ち悪いって言われたけど……


 全然OK!! 早く夜にならないかな〜〜


「何だよ、そんなにオラとメシ食うのが嬉しいのか?」


「え? ああ、今日はドンガさんとこに泊まるんだっけ?」


「ちぇ! 忘れてたのか? 狐火を父ちゃんによく見せてあげるんだって」


「そっかそっか! もうじゃんじゃん見ていいよ!」


 ムフフ……ソウガ君! 私は今日、大魔道士への一歩を踏み出すんだからそれどころじゃないのだよ!!


 心ここに有らずの状態で晩ご飯をドンガさんの小屋で食べて、ようやく弟くんに打ち明ける時が来た!


「お姉ちゃん、ドンガさんの本当の家は洞窟の中にあるんだってさ。美人の奥さんもいるって」


「ん? そうだったの?」


 ムフフ……そんな事より大発表よ!


「ねえ! これを見て! スキルが増えたのよ!」


「重い物を持てるスキルでしょ? ドンガさんから聞いているから知ってるよ」


「フフフ……それだけじゃないのよ! じゃ〜〜ん!!」


 冒険者カードを弟くんに見せてあげると……


「移点の尾ね……とりあえず使ってみて」


「いくよ! 移点の尾!!」


 コンっとキツネの鳴き声がして金色の尻尾が増えた!


 ウヒャ〜〜 シッポが2本になっちゃったよ〜〜


『 レベルを幾つ移しますか? 』


 弟くんは私の冒険者カードを凝視している。


「お姉ちゃん、数字の所が点滅しているよ?」


 本当だ……レベルを表す数字が点滅しているよ。


「神の声でレベルを幾つ移すかって聞かれたよ?」


「幾つ…………」


 弟くんはアゴに右手を当てて考える仕草をした。時々、弟くんはドキッとする程、大人っぽい仕草をするんだよね。


「5レベル分を全部やっちゃうとせっかく鍛えた体が戻っちゃうかもしれないよ?」


「それは困るよ〜〜 結構、大変なんだから〜〜」


 また最初の体力に戻るなんて絶対ムリムリ!


「大魔道は魔力よりのステータスになる思うよ」


 弟くんが言うには採掘師はレベルアップすると力や体力のステータスが上がりやすくて、大魔道は魔力や知力のステータスが上がりやすくのが普通なんだって。


「とりあえず1レベル分だけやってみようかな」


「うん……ちょっと気になる事があるけどいいよ」


 やるよ! っとは言ってもどうやるんだろ? 


 声に出して言えばいいのかな?


「大魔導へ1レベル移して下さい」


 ハルカ  大魔導  レベル  2

      採掘師  レベル  4


 特殊魔法   狐火   追加効果 燃焼継続

 

 特殊スキル 移点の尾 経験値を他ジョブに移す

              1日1回使用可能


 冒険者カードを見てレベルが上がったのを確認した。


「大魔道のレベルが上がったよ! やったねシュン!」


 弟くんはジッと冒険者カードを見つめ考え込んでいる。


「ごめん、お姉ちゃん。多分、損しちゃったよ」


「え!? どういう事?」


 弟くんの解説によるとレベルは上がれば上がる程、次のレベルへ上がる迄の経験値が多く必要になる。

 採掘師のレベル4から5まで上げる経験値より大魔道士のレベル1から2へ上げる経験値の方が少ないみたい。


「でも……これなら明日、採掘すればすぐに採掘師のレベル5に戻るから荷物は軽くなるわ」


「さすがお姉ちゃん! そういう考え方もあるね!」


「お姉ちゃんはちゃんと考えていたのだよ!」


 本当は今、思いついたんだけどね! 弟くんはさっきよりかなり真剣さを増して考え込んでいる。


「う〜ん……もし大魔道のレベルが5を超えたらヤバいスキルだよ。ううん、大魔道みたいな超レアジョブはレベルが上がりにくいはず……今の時点で激ヤバかも……」


 弟くんはブツブツ呟いている。


「特殊スキルは消えてないね」


 弟くんの推察によるとこの特殊スキルは種族用のスキルでジョブは関係ないんじゃないかってさ。獲得した経験値のトータルで特殊スキルが発現したかもしれないってさ。


 色々検証しないとよく分からないな。


 面倒だから検証なんてしないけどね!!


「採掘師をレベル1へ戻して3くらいまで上げる。それを繰り返すとあっという間にレベルが上がるよ」


「効率だけ考えるとそうみたいだけど、お金を稼ぎたいから1レベルずつにするね」


 私は採掘師のレベル4までしか戻さない事にした。採掘師のスキルが有ればリュックサックを満タンにしても楽々持てるからね! 今は大魔道のレベルより採掘師のレベルの方が断然役に立っているもんね。

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