第7話 掘って稼ぐわね!

 何とかしてお金を稼ぎたい。だけど、ガガンゴ村には冒険者ギルドが無いのでモンスター退治や薬草採取なんかのクエストを受ける事が出来ない。


「ドンガさん、近くに冒険者ギルドは無いですか? クエストを受けたいんです」


「んん? お前さんがクエストを受けた村が1番近いな。他は遠くて子供にはとても無理だ」


「あそこには行けないです……何かお金が貰える様な事はないですか? ゴブリンくらいなら倒せますので」


「ここで金が欲しいなら掘るしかないな。キツイ仕事だぞ」


「やります! やり方を教えて下さい!」


「フーム……じゃあオラの息子を連れて来るか。お前さんが大人達と一緒に掘るのは無理だ。息子と初心者向けの鉱物を掘って練習みるってのはどうだ?」


「お願いします!」


 ドンガさんが息子のソウガを連れて来た。私と同じ10歳と言っていたけど背丈は私の半分くらいしかない。

 ドワーフ族は背が低い種族だからね。


「オラがソウガだ。よろしく」


「ハルカです。よろしくね」


 採掘に必要な装備はドンガさんが全部貸してくれた。カンテラだけは小屋で使っていた物を持って来たけどね。


「狐っ子は魔法使いだったのか。狐人族は魔力が高いんだったな」


 ドンガさんが小さな狐火が入ったカンテラを不思議そうに眺めている。

 

「ソウガ、手間の採掘場で石炭を掘って練習して来い」


「分かりました。ハルカ、行くぞ」


 ソウガはノシノシと洞窟の中へ入っていった。入口すぐにあるカンテラ置き場までしか洞窟内には入った事が無かったからドキドキする。


 カンテラの明かりを頼りに洞窟の奥に進んで行くと、道が2本に分かれていた。


「右は最奥へと行く道だ。大人達が行く道だよ。オラ達は左に行く」


 ソウガが左に進むとすぐの所にちょっとした空洞があり、黒い岩肌が見えた。


「大人達は石炭は掘らない。もっと貴重な石を探しているかなね。でも、石炭だってお金なるよ」


 ソウガはピッケルと呼ばれる採掘道具で黒い岩肌を掘っていく。


「あまり細か過ぎると駄目なんだ。手のひらくらいのサイズを目安に掘ってみて」


「うん! やってみるね!」


 見よう見真似でやるしかないね! 


 ピッケルを構えて〜〜


 コチン!!


 黒い塊が地面に落ちた!!



『 採掘師  レベル 1になりました 』



 急に頭の中に言葉が浮んできた。


「わ! なんか聞こえてきた!!」


「ん? ああ、神さまの声さ。採掘師は生産系のジョブだからな。戦闘系とは別枠で冒険者カードに書かれるんだ」


 冒険者カードを見たら採掘師が追加されていた。


「ソウガは戦闘系ジョブは何?」


「もちろん戦士さ。ドワーフ族はほとんど戦士だね」


 ドワーフ族で魔法を使う者はあまり居ないらしい。


「ほら、ドンドン掘ってリュックサックに詰め込んで」


「うん! 頑張っていこ〜〜!!」


 コチン! コチン! コチン! コチン!



『 採掘師 レベル2 になりました 』



「うわ! また聞こえた! もうレベルが上がったって!」


「最初はレベルが上がりやすいんだ。ここで続ければレベル5まで上がるよ。レベル5になると重たい物が持てる様になるスキルが貰える」


「わ、私……レベルが上がらない体質だって言われたのに」


「はぁ? それ言った奴は嘘つきだな」


 レベルが上がった! レベルが上がった!!


 嬉しくて採掘も楽しくなってきたよ!


 リュックサックに石炭を詰めて持ち上げれるか試す。


「う〜ん、もう限界かも……」


「少ないな……今回だけオラも一緒に行くけど、次からは自分だけで戻れよ。オラも稼がないといけないからね」


 力の強いドワーフ族と非力な狐人族では持てる石炭の量がかなり違うみたい。私はリュックサックに半分も入ってないのに限界だ。

 ソウガは半分以上入っているけど楽々と背負っている。


「まあレベル5まで我慢だな。往復していれば自然と体力もつくだろうし」


「うん! ありがとう! ソウガって優しいんだね!」


「い、行くぞ!」


 ソウガは顔を赤くして急にモジモジし始めた。かなり照れているみたいね。

 洞窟の外に出て鉱物を入れる小屋に着いた。


「この空の木箱はハルカのやつな。間違って他のに入れるなよ。自分が掘った物は自分の稼ぎってルールだ」


 ソウガと書かれた箱には石炭が山積みされている。


「ねえ? 私が今掘った分で幾らくらいになるのかな?」


「銅貨3枚くらいじゃないかな。リュックサックに一杯詰めてくれば10枚だよ」


「凄い!! そんなに貰えるの!?」


「ああ、キツイ仕事だからね。大人達は貴重な鉱物を取って来るからもっと稼ぐぜ?」


 確かに重い荷物を背負って洞窟から小屋まで来るのは大変だった。みんな鉄鉱石を背負ってここまで来ているみたい。


「お、大金持ちだね!!」


「まあ色々だな。お金を貯めて喜ぶ人も多いし、生活する分だけしか掘らないって人も多い。本当はドワンゴ国の人以外が採掘したら採掘料を取るんだけど、ハルカはいいってさ」


「え、そうなんだ。何で取らないの?」


「弟も居るし訳アリなんだろ? 子供1人分くらいでガタガタ言う父ちゃんじゃないぜ!」


「ありがとう……みんな優しいんだね」


「ほら! 早く行くぞ! 稼ぐんだったろ?」


 またソウガは赤い顔でモジモジしている。


 照れ屋さんね!

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