第4話 スクールぷりてんだーず
色々ありすぎた春休みが終わった。
春休み自体そこまで長くはないのだがそれはもう充実していたためあっという間に2年生の新学期のスタートとなった。
新学期といえばクラス替えという一大イベントがあり、普通に高校生活をエンジョイするものたちは胸を躍らせ軽い足取りで学校に行くものだが、かくいう俺はいわゆるリア充とは違い教室の隅っこで読書にふけっているような陰キャなので当然、同じクラスになりたいような友人は基本いない。
だから、この晴れ晴れとした新学期も俺からしてみればただの日常の1コマでしかない・いや、なかったのだが・・
「うそ・・・なんでうちの制服を・・・」
「そっちこそ・・まじか、そうだったのか・・」
何を隠そう目の前に立つ義妹の着ている制服は俺の通う高校のものだったのだ。
ということは去年も同じ学年としてやってきたはずなのだが、どうやらどちらも知らなかったらしい。
まあ、一つの学年に240人もいれば知らない奴がいてもおかしくはないのだが。
とまあ、ここまで冷静に考察しているのは決して俺が冷静な人間だからというわけではなく、動揺を必死に隠そうとしているだけである。
眼前の義妹もいつもの飄々とした態度ではなく、動揺を隠しきれていない様子だった。
「想定外だった・・そんなことならお母さんに聞いておけば良かった・・」
「ああ、まさか同じ学校だなんて思ってもいなかった」
父の再婚相手の娘と同じ年齢というだけでもなかなかの確立だが、それに加え同じ高校という偶然にしてはできすぎているもはや神様のお遊びとしか思えない事態が起きているのだ。
ちなみに、由美さんたちの苗字は2人が気を遣ってくれたのかまだ変わっていない。というか、しばらく変えないらしい。なんともありがたい話だ。感謝感謝
「こればっかりはもうしょうがないわね・・」
「どうする?学校でも家でのルールを適用するか?」
「うん、それはもちろんなんだけど・・そうだ、ルールの改変、その手があった」
そういえば、無関心条約を結んだ時に随時更新とか言ってたような・・
まあ、改変できるなら是非こちらとしてもそうしたい。悪い話ではないな。
「いいんじゃないか。こっちとしても彩花さんの迷惑にはなりたくないからね」
「別に迷惑ではないけれどきょうだいってことがバレたら色々と面倒だから」
彼女も学校での立場がある。
俺は学校でどんな扱いを受けようと構わないが、彼女がその巻き添えを食らうのは違うだろう。
「じゃあ、あなたと私は無関係で赤の他人。OK?」
「ああ、もちろん」
クラス替えもあることだし意識しなくても無関係を演じれるだろう。
第一、家でも無関心を掲げるくらいだ。難しいことではないだろう。
彩花さんとは家をでる時間をずらすことにした。とりあえずバレる可能性があるようなものは極力避けるようにしようということだ。
家から学校まではさほど遠くはない。自転車で15分ほどといったところだ。
桜の花にも似たリンゴの白い花が殺風景な通学路に彩りを加える。
THE・田舎といった風景ではあるものの、都会とはまた違った良さがあるのはもちろんで独特の空気感がこちらを安心した気持ちにさせてくれる。
自転車で走ると遮蔽物になる高い建物が一つもないため春とはいえ肌寒い風を直に感じられる。
そんなことを考えているうちに辺りにチラホラと俺と同じ制服を纏った人達が出てきた。そろそろだ。
どんなクラスになるんだろうか。そう考えると柄にもなく緊張していた。
クラス替えの名簿は生徒玄関の扉にクラスごとで貼りだされている。家を出た時間がちょうど通学ラッシュの時間だったのだろう。そこには人だかりができていた。
あのおしくらまんじゅうにはできるなら参加したくないが、いい加減寒くなってきた。仕方ない。どうせ名簿は最初の方だから一瞬だけ見てすぐに離れよう。
「すいませーん、通してくださーい」
と聞こえるか聞こえないかくらいの小声で呼びかけながら人波をかき分ける。
やっとの思いでたどり着いた1枚の紙には
2年3組1番 綾辻 優斗
と書かれていた。相川さんや相沢さんがいなければ基本的に毎年名簿1番であるため1番であることに驚きはない。
でも、1組じゃなくて良かった。卒業式ではトップバッターになってしまうからな。
あんまり長居すると周りの生徒たちに迷惑になるので自分の名前だけを確認しすぐさまその場から立ち去ろうと名簿から視線を外す瞬間、俺の視界の端に信じられない・・いや確率的にはあり得るが偶然にしてはできすぎている情報が入ってきた。
2年3組39番 米澤 彩花
「おいおい、嘘だろ・・・?」
神様よ、お遊びもほどほどにしてくれ・・
明日あたりに死んでしまう気がするんだが・・
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土日は投稿しません。月曜日からまたよろしくお願いします
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