魔王城への帰還!

「それでは、ラフィーさんに無事終了した旨を連絡しておきますねっ、ですわっ」


 ペリメール様の通信手段は、親指と小指を立てて受話器として通信する『指通話フィンガーフォン』スキルですよ。

 俺もめっちゃ欲しいスキルです!


「ラフィーさんにコールっ。ぴぽぴぽぷぷぷう♪」


 って、なんですか、そのめっちゃカワイイ呼び出し音! ラーフィアちゃんのもカワイかったけど、ペリメール様のもカワイイ!

 さすがは仲良し従姉妹いとこってカンジですよ!


「もしもし、ラフィーさんですかっ? 

 ヒカリ様のご活躍でルルコさんのリセットが無事に終わり、万事解決なのですわっっ。では、ヒカリ様に代わりますねっ、ですわっ」


 ペリメール様が、ずびしっ、と俺の耳に受話器に見立てた指を当てると、聴こえてきましたよ、愛しいラーフィアちゃんの声ですよー!


「『もしもし、ヒカリちゃんっ? 無事に終わったんだねっ! おめでとうっ!』」


「ありがとう、ラーフィアちゃんっ! 帰ったら話したい事がいっぱいあるからっ! だから、楽しみに待っててねっ!」


「『うんっ! 待ってる! お疲れ様っ、ヒカリちゃんっ!』」


 俺を労ってくれるラーフィアちゃんの明るい声がココロに染み入って、なんか、じーんときちゃいますよ。

 なんだか急に会いたくなってきましたよー!


「それじゃあ、帰ろうっ。フィルフィー!」


「あん? まだ一週間は帰れねーぞ?」


「えっ!? なんでっ!?」


 これで帰れると思いきや、フィルフィーからのトンデモ衝撃発言ですよ!


「あたしらはスキルアップしたとは言え、まだまだペーペーだからなっ。魔力チャージに時間がかかるんだよっ」


「えー!?」


 こんな、なーんもない真っ白な空間に一週間もいるなんて、耐えられないっ! 

 時間の感覚がおかしくなる前に、アタマがおかしくなってしまうっ!


「そんなっ!? だって、ちっちゃいルルコちゃんがいるんだよっ? ラーフィアちゃん達も魔王城でずっと待ってなきゃいけないんじゃないのっ?」


 ルルコちゃんは、おっぱい飲めば生き延びられるかもしれないけど、ルルコちゃんママのおっぱいが干からびてしまうのではっ!?


「水も食料も無いのに、どーするのっ?」


「ああんっ? そんなもん、気合いだ気合いっ!」


 空腹とか水分不足が気合いでなんとかなるワケないだろ、根性論女神っ!

 このままだと、ルルコちゃんの生命の危険が危ないですよっ!



「あー、それなら心配はいらんぞ、ヒカリよ。ワシにまかせんしゃい」


 自信満々ってカンジで、すいっと歩み出て来ましたよ、神様店長。

 さっきまでバグりまくってたから、なんか不安しかナイんですけどっ!


「ではでは、コウダさん一家は自宅に、ヒカリ達は魔王城に戻ってもらおうかのー」


 神様店長が送り返してくれるんですか、そーですか。とりあえず、ひと安心……かっ?



 父さんと母さん、ルルコちゃんとのしばしの別れ。近くに住んでるんだから、いつでも会えるってわかってても、やっぱり名残惜しいなー。

 

「歩いて10秒のご近所さんなんだから、気兼ねなく遊びに来ればいいぞ、ヒカリっ」


「ちっちゃいルルちゃんに会いに来てあげてね、ヒカ君っ」


「……うんっ。ありがとうね、父さんっ、母さんっ! 時々ルルコちゃんの顔見に行くから、その時はよろしくねっ!」


「うむ。それではみなさん、ごきげんよう、ですじゃ」


「「「えっ!?」」」


 思わず、俺達三人の声が重なった!

 まだ別れの挨拶の途中なのに強制送還ですよ、神様店長っ!


「それじゃあ、まず、ヒカリから。あー、ほいっ!」


 神様店長が、ふわっと腕を振ると、しゅわあっ! と、真っ白い空間の床に真っ黒い大穴が空いたっ!

 って、コレは、どこかで見たコトあるような落とし穴っ! 

 またコレかっ! 神様店長といい、大魔王サマといい、落とし穴好きだなっ!

 ここに来た時みたいに、転移テレポートするとか他に移動手段は無かったのかっ!?


「うにゃああああああああああっ!?」


 と、真っ逆さまに落ちてく俺ですよー!


「ヒカリよー。もろもろ落ち着いたら、またバイトに来てもらうからのー」


 フェードアウトしていく神様店長の軽ーいカンジの声ですよ。落ち着いたらまたバイトって、けっこう活躍した勇者なハズなのにセチガライですようおおおー!


「またなヒカリぃー!」

「またね、ヒカくーん!」


 父さんと母さんの声が遠くから聴こえますよ、落下しつつもそれに応える俺ですよー!


「うんっ! 必ず会いに行くからねー! またねー!」


           ◇


 真っ暗な空間を落ちていきますよー!

 ひゅううううんっ。

 と、落下する感覚から、ぼすんっ。しゅるるるるんっ! と、滑り台、イヤ、ボブスレーみたいな感覚に変化っ!

 コントロールなんて出来ないから、右に左にギュインギュインと振られる俺ですよー!


「うにゃっ!? うにゃっ!? うにゃああああああっ!?」


 めっ、目が回るっっ!

 コレ、いつまで続くんじゃいっ!

 と思った瞬間、突然、目の前が明るくなった!

 ひゅうんっ! と投げ出されて、ぼてっ、こんころりんっと転がる俺ですよ。

 どうやら到着したのかなっ?

 と、そこにっ!


「お帰りなさいっ! ヒカリちゃあんっ!」


 ズドォン! と、ナイスタックルで胸に飛び込んで来たのは、ラーフィアちゃん! いって! いってーですよー!

 でも、ラーフィアちゃんのツヤサラ銀髪からは、とってもいい匂いがっ!


「お帰りなさいませですぅ、ヒカリ様ぁ♡ 後でたっぷりしっぽり癒しのマッサージしてあげますねえ♡」


「大義だったぞ、ヒカちくりんっ! よくやったっ!」


「勇者の名に恥じない闘いでござったよ、ヒカリ殿ぉっ!」


 フェイリアちゃんとレイルさん、ムラサメさんも出迎えてくれてます!

 みんなしてチヤホヤしてくれちゃって、なんだかとってもハーレム状態ですよー!

 ニャハー! 


 って、なんか、俺達の行動を見てたみたいな言いぶりなんですけどっ?



「ヒカリちゃん達のコト、お姉ちゃんの目を借りて、ずっと見てたんだよっ!」

 

「えっ!? 見てたって、全部っっ?」


「『モニタリングアイ』っていう、私の女神スキルのひとつなのっ♪」


 なななんと、恐るべしラーフィアちゃんの女神スキル!

 ルルコちゃんと取っ組み合いしてたのとか、フィルフィーのリセットスキルとか、ペリメール様の目線で全部見てたのかっ。

 と言うコトはっ。

 ルルコちゃんのおパンツをグイグイ食い込ませちゃってたのも見てたのかなっ?

 怒られちゃうかなっ?

 と思ってると、なんとっ。


「お姉ちゃんたら、フィルフィーのコトばーっかり見てるもんだから、ヒカリちゃんの活躍は半分くらいしか見れなかったのが残念だったなあっ」


 マジですか。俺の活躍は眼中ナシだったんですか、ペリメール様っ。

 いくら新婚さんとは言え、どんだけフィルフィーのコトが好きなんですかねっ。


「無事に戻ってきてくれた事がイチバンだよっ! 帰ったら祝賀会しなくっちゃねっ! なんてったって『勇者と魔王の大戦争』を終わらせた超スゴい勇者なんだから!」


「それだけではござりませんよ、ラーフィア殿っ! ヒカリ殿は、瀕死だった妹君の命を救った英雄でもあるのでござるからしてっ!」


「えっ!? 英雄っ!?」


 って、言い過ぎなような気がするんですけど、ムラサメさんっ? なんせ、ザコレベルに戻っちゃったし!


「それを言うならね、ムラサメさんっ!

 ヒカリちゃんは、私のコトも救ってくれたんだよっ。男のヒトの『アレ』がグロいモノばかりじゃないって、身をもって教えてくれたんだものねっ!」


 うごっっ。

 身をもってって言うか、ムリヤリだったような気がするんですけど、それは言わないでおきますよっ。


「ヒカリちゃんに出会わなかったら、私は女神にならずに魔王として生きてたと思うのっ! だから、改めてありがとうねっ! ヒカリちゃんっ!」


「救って頂いたと仰るのなら、それは拙者も同じでござるっ! クロジョのザコレベルB班でのヒカリ殿のザコっぷりに感銘を受けて、拙者もここまで頑張ってこれたのでござるよっ!」


 俺のザコっぷりに感銘受けたってマジですかっ。ムラサメさんだって、けっこうなザコっぷりだったんですけどねっ。

 言わないけど!


 と、その時ですよ!


「どいたどいたあっ! うらあああっっ!!」


「着地いたしまあすっ、ですわあっ! おどきになってくださいましっ、ですわあっっ!」


 頭上から賑やかましい声がっ!

 パッと上を見ると、ぽっかり開いた真っ黒い大穴からフィルフィーとペリメール様が落っこちて来ましたよー!


「あぶっっ! 危にゃぁいっっ!!」


 しゃかしゃかしゃっと素早く逃げると同時に、ズドドォン! という激しい二つの衝撃音!


「あ~あ、帰還帰還っ。てなもんでいっ!」

「ただいま帰りましたっ、ですわっ」


「おっ、お姉ちゃんっ!? と、ついでにフィルフィーっ!?」


「ああんっ? ついでにってなんだよ、ついでにってよー」


「ドコから落ちてきたのかわかんないけど、スゴい衝撃だったよっ!? 膝とか腰とか大丈夫なのっ?」


「全然平気なのですわ、ラフィーさんっ。こんなこともあろうかと、如何なる高所から落ちようと大丈夫なように日々鍛錬しているのですから、ですわっ」


 こんなこともあろうかとってマジですか。

 フツーに生きてたら高所から落ちるコトなんて、ほぼほぼ無いと思うんですけどねっ。

 

「良い機会ですから、ラフィーさんにひとつお教えいたします、ですわっ。女神にとって大事なモノ、それは『気合い』! なのですわっ!」


「えっ!? 気合いなのっ?」


「何事も気合いだ、気合いっ! 気合いさえ入ってりゃ、大概なんとかなるからなっ!」


 出ましたよ、フィルフィーのドヤ顔と女神様の根性論!

 根性と気合いで高所から着地するなんて、やっぱ規格外の二人ですよー!

 

「そっかー、気合いかあ。うんっ、覚えておくよ、お姉ちゃんっ!」


 あらら、納得しちゃいましたよ。

 でも、ラーフィアちゃんなら、女神様の根性論をしっかり吸収反映しちゃいそうな気がしないでもないですよっ。

 

「危ないから、ラーフィアちゃんは真似しないでねっ?」


「えっ? しないようっ。でも、心配してくれてありがとうね、ヒカリちゃんっ♡」



 フィルフィーとペリメール様も無事に帰還して、いつものメンバー勢揃い!

 パッと見では、美女と美少女のグループに見えるかもだけど、ひとり混じってるのですよ、男のっ!

 

「さあ、凱旋だぜヒカリぃっ! 超ドヤ顔でふんぞり返って闊歩かっぽしやがれっ! てなもんでいっ!」


 ナニ言ってんですかねフィルフィーはっ!

 ふんぞり返って闊歩なんてしてたまるもんですかっ! 

 そもそも俺は、目立ちたがり屋なんかじゃナイですよー!

 

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