妄想勇者へのご褒美!

「あー、そうそう。ヒカリには、大魔王を倒し『勇者と魔王の大戦争』を終結させた功をねぎらい、褒美を与えようかと思っておるのじゃよ」


「えっ!? そうなんですかっ!?」


 ルルコちゃんママの授乳をガン見した後、ピクリとも動かないから、っちまったんじゃないかって思ってた神様店長からの驚きのひと言ですよっ。


「ご褒美って、なにか貰えるんですかっ?」


「うむ。モノでは無いんじゃがな。価値のつけられない、栄誉ある褒美なのじゃ」


「えー!? そんなスゴいご褒美なんですかっ!? 早く教えてくださいようっ!」


「うむ。では教えてしんぜよう。まあ、モノでは無いんじゃがな。価値のつけられない、栄誉ある褒美なのじゃ」


「……それ、さっき聞きましたよっ?」


「それ? どれ?」


 キョロキョロと周りを見回す神様店長ですよ。真っ白な空間なんだから、周りにはなーんも無いですよっ!


「ボクにくれるご褒美がモノじゃ無いってコトですよっ」


「ご褒美? はて? なんでヒカリにご褒美を?」


「さっき、神様店長がくれるって言ったじゃないですかっ!」


「ん? ワシ、そんなコト言うたかな?」


 こっ!

 これはヤバいっ!

 バグり出したぞ神様店長っ!

 またコレかっ! 地獄のループの始まりかっ! なんか久々なやり取りなような気がしないでもないけどもっ!

 ぬおおおお、このパターンは、頭痛がいてーヤツですようおおー!


「んお? あー、そうそう、思い出したぞい。ヒカリには、大魔王を倒し『勇者と魔王の大戦争』を終結させた功を労い、褒美を与えようかと思っておるのじゃよ」


 それ、さっきも聞いたヤツ!

 でも、『それ』って言ったら『どれ?』って返ってくるから、別の訊き方に変更です!


「ご褒美って、なんですかっ?」


「ん? なんでヒカリにご褒美を?」


 くあっ!

 振り出しに戻っちまいましたよ、どーすりゃゴールに辿り着けるかわかんない迷路みたいですようおおおー!

 こうなりゃ、こっちから仕掛けてやるですよ!


「ボクが『勇者と魔王の大戦争』を終わらせたご褒美って、何を貰えるんですかっ?」


「ん? あー、そうそう、そうじゃったそうじゃった。褒美な。歳を取ると物忘れがひどくて困るわい」


 そうなんですかねっ。困ってるようには見えないんですけどねっ。


「ヒカリには、あー、大魔王を倒し『勇者と魔王の大戦争』を終結させた栄誉を称え、褒美を与えようかと思っておるのじゃよ」


 それ聞くの三回目っ!

 でも、何を貰えるか訊いたらバグるから、やんわりと回り道してみるですよっ!

 

「わあっ! 嬉しいですうっ!」


 これです! 素直に喜んで、神様店長がバグらないように話を進めさせるのです!


「はて? ナニが嬉しいんじゃ?」


「ボクにご褒美をくれるんですよねっっ?」


「はて? なんでヒカリにご褒美を?」


 ぬああっ!

 地獄のループが終わらないっ!

 助けを求めようにも、フィルフィーとペリメール様は『いつものコト』みたいなカンジで知らん顔してるし、父さんと母さんは、このやり取りを苦笑いで見てますよー!

 ルルコちゃんはスヤスヤと眠ってるし、誰も助けてくれない『地獄の無限ループ地獄』ってヤツですようおおー!


 ここはいっちょ、ショック療法とか言ってブン殴っちゃっても良いのではっ!?


「あー、そうそう、思い出した思い出した。ヒカリには、えー、ご褒美として『天界の住人になる権利』を与えようかと、おー、思いまする」


「えっ!? 天界の住人っ!?」


 突然バグが直ったと思ったら、驚愕のお言葉がっ!


「おおっ! スゴいじゃないか、ヒカリっ!」

「スバラシイ栄誉じゃないの、ヒカ君っ!」


 父さんと母さんがビックリしつつ喜んでくれてますよ、それは素直に嬉しいですよー!

 確か天界の住人になれば、男でも出産出来ちゃうって言ってなかったっけかっ?

 イヤ、産まないけど!


「ザコレベルに戻っちゃったのに、天界の住人になれるんですかっ!?」


「うむ。あと、最上級勇者の証しとして、『グレート』の称号を与えよう。これからは『グレート』妄想勇者と名乗るが良いぞ」


「えっ!?」


「ん? 聞こえんかったかな? ヒカリはまだ若いのに難聴なんかな?」


「違いますよっ。称号を頂けるのは嬉しいけど、グレート妄想勇者って名乗らないといけないんですかっ!?」


「うむ。これからは、グレート妄想勇者と名乗るが良いぞ。神様ワシのお墨付きじゃから堂々とな。何ならスーパー妄想勇者でもよし」


 グレートがイヤならスーパーでも良しですとっ!?

 いっ……!

 イヤだ、カッコ悪いっ!


 ただでさえカッコ悪い『妄想勇者』なんて肩書きなのに、『グレート妄想勇者』とか『スーパー妄想勇者』なんて、輪をかけてヘンタイっぽくてカッコ悪いっ!


「天界の住人になるには条件があってのう。天界の住民票には、ソレのどちらかで登録するコトが必要なのじゃ」


 マジ、かっ!

 天界がどんなトコかわかんないけど、それを登録しなきゃいけないのかっ!?

 て言うか、なんでっ?


「天界は良いトコじゃぞー? カワイくてキレイな娘っこ達が毎日チヤホヤしてくれるからのう」


「えっ!?」


「ん? 聞こえんかったかな? ヒカリはまだ若いのに難聴なんかな?」


ちっがいますよっ。天界って、そんなハーレムみたいなトコなんデスカっ!?」


「うむ。酒池肉肉肉林、イヤ。男にとっては女体の森林浴みたいなトコじゃ」


 女体の森林浴ってマジですかっ! それって、たっぷりどっぷりハーレムじゃないデスカっっ!


「ヒカリはカワイイ男のじゃから、モテモテになるコト受け合いじゃろうのう」


「あのっ! 気になるコトがあるんですけどっ!」


「んお? ああ、そうか。ヒカリは未成年じゃから、酒はダメなのが残念じゃがのう」


 違うっ! 気になるのはそこじゃないっ!


「もし、ボクが天界に行っても、地上界には、いつでも戻って来られるんですかっ?」


「あー、それは無理じゃ。天界の住人として末長く幸せに暮らして貰うコトになるのう」


 なななんとっ!

 天界行きは片道切符!


 それって、つまり。


 地上界にいるみんなと。


 フィルフィー。ペリメール様。

 父さん。母さん。ルルコちゃん。

 フェイリアちゃん。

 レイルさん。

 ムラサメさん。

 シフォンちゃん。

 ゴリュウさん、アーラさん、キャノラさん。

 ついでにスズキさん。


 そして……ラーフィアちゃん。


 今まで俺に関わってくれた仲間とか友達とか。みんなと二度と会えなくなる可能性が、ものスゴく高いってコトだよな……

 いつだったかフィルフィーが『まだ天界には行かない』って言ってたのって、このコトを知ってたからかな……?

 

 だったら。

 だったら俺はっ!


「神様店長っ! ボクはっ! 天界の住人にはなりませんっ!」


「え? あー、そう。了解したぞい」


 かるっ! 返事、かるっ!

 けっこう、イヤ、かなり真剣に言ったつもりなのに、神様店長には響いてナイ!


『お茶とジュース、どっちがいい?』

『じゃあ、ジュースで』


 みたいな、うっっすい内容の会話っぽい!


「まあ別に、今すぐ天界の住人になる必要はナイからのう。天界の住人になる権利は永久に失わんからな」


「そうなんデスカっ!?」


 そーいうのは最初に言って欲しいもんですようおおおー! 俺のアツい想いが急速冷凍! ってカンジですようおおおー!


「まあ、天界の住人になりたくなったら、いつでもワシ言うが良いぞ。ほっほっほっ」


 なんつって、軽ーく笑ってますよ神様店長っ。

 ハーレムは魅力的だけど、みんなと離ればなれになっちゃうのはイヤだから、天界の住人になんてならねーですよー!


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