いざ尋常に勝負! ルルコちゃん!

「今度はゼッタイにルルコが勝つんだからねっっ!」


「ボクだってっ! 負けるワケにはいかないんだからねっ!」


 取っ組み合いの勝負、つまり相撲に勝ってルルコちゃんをリセット!

 ちっちゃいルルコちゃんに戻ってイタダキますよー!


「うむ。ここは、勇者と魔王としてでは無く、兄と妹として、思う存分、はっちゃけるが良いぞ」


 神様店長の言い方はどうかと思うけど、まあ、はっちゃけますよ、男のっ!

 父さんと母さんが見てる前で負けるワケにはいかないっ!

 もう一度、ちっちゃいルルコちゃんに会わせてあげたい!

 イヤ!

 父さんと母さんに、『ルルコちゃんがいる当たり前の日常』を取り戻してあげたいっっ!

 前の世界では突然死んじゃったから、この世界では楽しく平和に生きて欲しいっっ!


 うおお、頑張りドコロですよ、男のお兄ちゃんっ!



「では、私、ペリメールが審判を務めさせて頂きますですわっ」


 すすいっと、進み出てきましたよ、ペリメール様。フィルフィーが審判するより段違いに信頼できますよー!


「頑張れー♪ 二人ともー♪」

「ルルコもヒカリも負けるなよっっ!」


 父さんと母さんが応援してくれるのは良いけど、それじゃあ、いつまでたっても勝敗がつかないぞっ。


「負けたら大爆笑してやんよ、ヒカリぃー!」

 

 ひとりだけヤジ飛ばしてるのがいるけど、そんなのは無視ですよ、無視っ。


 ルルコちゃんとの対決にっ!

 目の前の勝負に集中するのだっ!


 腰に手を当ててふんぞり返るルルコちゃん。

 ドコからともなく吹く風がズタボロになっちゃった白いワンピースを揺らしてます。

 小柄な身体に気合い入りまくりですよ、強がる態度がちょっとカワイイですよー!


「思いっきりブン投げてあげるから覚悟してよね、お兄ちゃんっ!」


「それはこっちのセリフだよ、ルルコちゃんっ!」


 睨み合う兄と妹の図!

 端から見れば『ゴスロリメイド服の美少女』と『ズタボロ白ワンピのカワイイ女の子』が見つめ合ってる様にしか見えないかもけど、だがしかし!

 飛び散ってるのですよ、見えない火花がバチバチとー!

 いざ尋常に勝負! ってヤツですよー!

 

「時間無制限一本勝負っ! 床に背中をついた方が負けといたします、ですわっっ!」


 んっ? 背中っ?

 あれ、ペリメール様っ?

 相撲のルールじゃないのかなっ? もしかして知らなかったりするのかなっ?


「では、始めっ! ですわっっ!」


 うお、始まっちゃったっ!?

 まあ、相撲のルールでやるって決めてナイから、開始の合図が違うのは気にしません!


 先手必勝でいくですよっ!


「いくよルルコちゃんっ! うにゃああっ!」


 と、掴みかかろうとすると、なんとっ!

 

「う゛にゃあっっ!」


 魔王城の時と同じように、ずどどっ!と、突進してくるルルコちゃん!

 これは願ったり叶ったり!

 がっぷり四つの体勢に持ち込んで、上手うわて投げで投げ飛ばしちゃう作戦でいきますよー!

 ワンピースの上から、おパンツ掴んでブン投げちゃります!

 どんとこいですよ、ルルコちゃんっ!


「んんんっ! う゛にゃっ!」


 うにゃり声とともに、くいっと身体をひねって側転するルルコちゃん!

 俺の腕をすり抜けると、なんとっ!


 バチーン!


「あいたあっ!?」


 思いっきりほっぺたはたかれたっ!

 これって、張り手と言うよりビンタですよー!

 いって! いってーですよー!

 だがしかしっ!

 こんなのでひるむワケにはいかにゃいっ!


 すかさず取っ捕まえようとすると、スルリと俺の腕を交わして絶妙な間合いを取るルルコちゃんですよ。

 これはかなりの素早さですよっ!


「ほらほら捕まえてみてよ、お兄ちゃんっ♪ にゃははっ♪」


 ぴょんぴょん跳び跳ねるわ、バク転するわで自由自在に動き回るルルコちゃんですよ。

 相撲にはあり得ない動きだし、ホントなら手をついた時点で負けなんだぞっ。


「どしたの、お兄ちゃんっ? カワイイ妹にビンタされて、半泣きになっちゃってるんじゃないのおー?」


「なっ!? 泣いてなんかないよっっ!?」


 ぐぬぬ、小生意気な妹ちゃんですよ、もうっ!


「あのね、お兄ちゃんっ!」


 ふっと真顔になって、ビシッと俺を指差すルルコちゃんですよ。


「ルルコが魔王のチカラ使わないからって、舐めてかかると痛い目に遭うんだからねっ!」

 

 うごっ。

 先手でビンタされちゃって、とっくに痛い目には遭ってるんですけど!

 ぐぬぬ、そーですか。俺を本気にさせちゃうんですか、ルルコちゃんっ!

 それならばっ!

 手加減とか容赦はしないっっ!

 

「わかったよ、ルルコちゃんっ! ボクを怒らせるとどうなるか見せてあげようじゃないのっ!」


「男ののお兄ちゃんが怒ったって、怖くもなんともないもーん♪ べー、だっ」


 ぎぬぬ。

 お兄ちゃんに向かってあっかんべーしやがるですよ。魔王のチカラを使うよりタチ悪いんじゃないのかっ。


「なんだなんだー? 押されてんじゃんねーか、ヒカリぃー」


 ぐぬぬ、ウルサイぞ、ヤジ飛ばし女神っ。

 こちとら、どうやってすばしっこいルルコちゃんを捕まえるか、考え中なんだからなっ。


 これはもう、相撲じゃなくて鬼ごっこっ!

 端から見れば、美少女二人がきゃっきゃウフフと走り回ってるようにしか見えない『鬼ごっこ』ですよー!

 それならば、今こそファミレスのバイトで鍛えられた足腰のバネを生かす時!


「いくよ、ルルコちゃんっ! うにゃあっ!」


 しゃかしゃかしゃっ! と、反復横跳びでルルコちゃんを翻弄するのだっ!

 右に左にと、リズミカルで素早いステップワークで間合いを詰めていきますよー!

 ルルコちゃんも俺の動きに警戒して、中腰で左右にステップ切ってますよ!

 って、なんかこれ、カバディっぽいなっ。


「へえー。お兄ちゃんのクセにいい動きだねっ」


 むむむ、お兄ちゃんのクセにって言っちゃダメですよ、ルルコちゃん!


「うにゃっ!」

「う゛にゃっっ!」


 しゅっと手を伸ばすと、ぺちっ!と叩かれたっ!

 ならば連続攻撃をぶっこむですよー!

 

「うにゃにゃにゃにゃっ!」

「う゛にゃにゃにゃにゃあっ!」


 ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちっ!   

 と、はたはたかれ、ほぼ互角!

 なかなかに手強いですよ、ルルコちゃん!

 端から見れば、美少女二人がネコパンチの応酬してるようにしか見えないかもだけど、せんせんを取る攻防って言うか、攻撃は最大の防御なりって言うか、まあ、そんなカンジです!


 って、こんなんじゃ、いつまでたってもラチがあかないっ!

 ネコパンチにフェイントステップを加え、一瞬の隙を突いて急接近! 


「うにゃっ!」

「あっ!?」


 ぱしっ! と捕らえましたよ、ルルコちゃんのズタボロワンピ!

 このチャンスを逃してはなりませぬっっ!

 一気に引き寄せて上手うわて投げの体勢に持ち込むのだっ!


「やっ! やだもうっ! 引っ張らないでよ、お兄ちゃんのヘンタイっ!」

「真剣勝負にヘンタイもナニも無いよ、ルルコちゃんっっ!」


 がしっ! とワンピースの上から掴んでやりましたよ、おパンツをっ!

 魔王城で闘った時と同じ『がっぷり四つ』ですよ!

 これで一気にカタをつけるのだっっ!


「うにゃあああああっっ!」

「やあっ!? 食い込むっっ! ぱんつ食い込むってばあっっ!!」


 魔王城の時は暴走してたから羞恥心なんて無かったみたいだけど、今はめっちゃ恥ずかしがってますよ、だがしかしっ!

 止まりませんよ、お兄ちゃんっ!

 俺を怒らせると、こうなるってコトをわからせてあげますよー!


 カワイイ妹のおパンツを白ワンピの上からグイグイ上に引っ張って食い込ませる男のお兄ちゃんの図。


 確かにヘンタイ行為だけど、そんなコトは気にしませんようおおー!


「うにゃあああああっっ!」

「あっ!! やだあっ!?」


 ブン投げられないように足を絡ませてくるルルコちゃん!

 だがしかし、その体勢だと俺の方が有利!

 投げから押し倒しに変更して、俺の全体重をちっこいルルコちゃんに乗せちゃります!


「う゛にゃあああああっっ!」


 じわじわと仰け反り、押し倒されるのは時間の問題! それでも必死に耐えてますよ、ルルコちゃん!

 

「これで決まりだよ、ルルコちゃんっ! うにゃあああああっっ!」


「いっけえー! ヒカリぃー!」

「ヒカリ様ぁー! 頑張れー!ですわあっ!」


「ヒカ君っっ! ルルちゃんっっ」

「ヒカリっ! ルルコっ!」


 みんなの声援を背に受けて!

 勝利を掴み取るのだ男のっ!


 ぐぐぐと仰け反って耐えるルルコちゃんを、このまま一気に押し倒すっ!


「うにゃあああっ!」


 と、気合いのこもったひと押しで!


 ぱたっ。


 と、背中をつきましたよ、ルルコちゃん!

 決まり手は『押し倒し』!

『押し倒し』ですようおおおー!

 勝った、勝ったよ、お兄ちゃんっ!

 これでルルコちゃんをリセット出来ますようおおー!

 

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