またまた対決!? ルルコちゃん!!

 フィルフィーにリセットして貰えば元の姿に戻れるのに、拒否っちゃいましたよ、ルルコちゃん!


「ちょっ、ルルコちゃんっ? このままで、ってなんでっ!?

 それって、ちっちゃい子供の頃の嬉しいコトとか楽しいコトとかを、ぜーんぶ、すっ飛ばしちゃうコトになるんだよっ!?」


「うっ、うるさいなあっ。お兄ちゃんがルルコにお説教するなんて10年早いんだからねっっ!」


 うごっっ!

 なななんとっ!

 妹に10年早いって言われちゃったよ、お兄ちゃんっ!

 こりゃまた小生意気な妹ちゃんですようおおおー!


「とっ、父さんと母さんからも何か言ってあげてよっ!」


「……そうだなあ……でも、それは……ルルコが決める事だと思うなあ。なあ、母さんや」


「……そうねえ。まだ喋れない赤ちゃんとかならまだしも、自我も芽生えちゃってるみたいだし……でもね。ヒカくんの言う通り、子供の頃の楽しい時間をすっ飛ばしちゃうのは寂しいかなあ……」


「そうでしょっ? そうだよねっ?」


 カワイイ我が子の成長を見届けるのって、親の楽しみだし、生き甲斐にも繋がると思うのですよ!


「父さんも母さんも、ちっちゃいルルコちゃんとの思い出とか、たくさん作りたいでしょっ?」


「あ、そうそうっ。思い出と言えばねっ。ヒカくんは2歳頃までずっと女の子のカッコしてたのよー♪ て言うより、させてたんだけどっ♪」


「えっ!? そうなのっっ!?」


 前の世界で、いつだったかアルバムを見た時に写ってた知らない子の正体は『俺』ですかっ!

 て言うか、ハナシが明後日の方向にぶっ飛んだんですけどっ!

 そういうトコロは相変わらずだな、母さんはっ。


「ヒカくんが3歳の時だったかなー? 近所で飼われてた犬と仲が良くて、みんなで一緒によく散歩したわよねー」


「そうだったなあ。でっかい犬だったから、ヒカリを背中に乗せてもらったりしてな! ヒカリは時々噛まれてたけど、何故か嬉しそうだったなあ」


「えっ? そんなコトあったっけっ?」


 それって、3歳の頃にはドMゴコロが芽生えてたってコトなのかなっ? 犬に噛まれて喜ぶなんて、我ながら真性ですよー!


「4歳の頃は動き回るコトが大好きでねえ。しょっちゅうタンスの角に小指ぶつけて泣いてたわねー♪」


「5歳の時に階段から落っこちてな。そりゃもう見事に、ごろごろごろっ! て、上から下までド派手になっ。でも怪我ひとつしなかったんだよー。運が良かったんだなあ」


「あの時、人生の幸運を全部使いきっちゃったのかもねー♪ なーんてねっ♪」


「あっはっはっ。そうかもなあっ、ヒカリっ!」


「えー!? それがホントなら、笑い事じゃないんだけどっ!?」


 こうやって両親と話すのはホントに久々で、なんかこう、胸の奥が、ほっこりしちゃいますよ。

 と、そこに。

 俺達の間に、ずずいっと割って入ってきましたよ、ルルコちゃん。


「パパもママもっ! お兄ちゃんの子供の頃の話なんてもういいよっ。そんなの聞きたくナイもんっ!」


 ルルコちゃんのカワイイお顔が、めっちゃ不機嫌! お兄ちゃんの話を『そんなの』呼ばわりですよ。

 でも、ちょっと拗ねちゃってるカンジがするのは、なんでかなっ?

 俺の子供の頃の話がつまんなかったって言うより、羨ましがってるカンジなのではっ?

 

「ねえ、ルルコちゃんっ」

「なによっ!」


 機嫌きげんわるっ!

 めっちゃぶんムクレですよ、ルルコちゃん。

 会話の輪に入れなくてプンスカしちゃうなんて、まだまだお子ちゃまな証拠ですよー!


「父さんも母さんも、ボクの小さい頃の思い出はあるのに、ルルコちゃんとの思い出が無いって……寂しいと思わない……?」


「……べっ、別に思わないもんっっ!」


「大魔王サマにムリヤリ成長させられちゃったコトを……ルルコちゃんは受け入れちゃうの?」


 父さんと母さんは、ああ言ってるけど……本心では、元の姿に戻って欲しいんじゃないのかな……?

 ちっちゃいルルコちゃんとの思い出を、いっぱいいっぱい、作りたいんじゃないのかな……?


「ルルコは……っ……」


 むむ、これはっ!

 迷ってるカンジですよ、ルルコちゃん。

 もうひと押しですよ、お兄ちゃんっ!

 頑張りドコロですよ、お兄ちゃんっ!


「ちっちゃいルルコちゃんがカワイク成長していく姿を、父さんと母さんに見せてあげようよ……ねっ?」


 これが今の俺が思い付く精一杯の言葉です!

 どうかなっ?

 どうかなっっ?


「っ……しっ……仕方ないなあっ。お兄ちゃんが、どーしてもって言うなら、ルルコと勝負してよっ。お兄ちゃんが勝ったら、元の姿に戻ってあげてもいいよっ」


「えっ!?」


 勝負!? って、なんでそうなるかなっ!?


「さあ、どうするの、お兄ちゃんっ? 勝負するのっ? しないのっ? どっちっ!?」


 言い出したら止まらないカンジですよ、ルルコちゃん! うむむ、なかなかに跳ねっ返りな妹ちゃんですよっ。


「勝負って、何をするのっ?」


「魔王城でルルコと取っ組み合いしたでしょっ。もう一回、アレやりたいっ! 今度は絶対にルルコが勝つんだからねっっ!」


 取っ組み合いって、相撲のコトですかっ!

 気合い十分ですよ、ルルコちゃんっ!


 って、こここれはっ!

 責任重大ですよ、お兄ちゃんっ!

 絶対に負けられない闘い! ってヤツですようおおおー!



「ハナシは決まったみてーだな、ヒカリっ! あたしの舎弟ならビシッとキメてみせろやあっ!」


 勝負と聞いてウズウズしちゃってますよ、ヤンキー女神っ!

 本来なら説得するのが女神ってものじゃないのかなっ!? 逆に煽ってきやがりますよ、フィルフィーはっ!


「なんで焚き付けるかなっっ? それって女神的にはどうなのさっ!?」


「あん? 女神は中立の立場だからなっ。煽るくらいがちょうどイイんだよっ。正々堂々、武器エモノは無しの殴り合いだっ! 根性見せてみろやあっっ!」


 相撲なのに殴っちゃダメだろ、反則女神っ。


「あ。ルルコはまだリセットして無いから『魔王のチカラ』は残ってるからなっ」


 なぬっっ!

 今の俺は『勇者のチカラ』なんて無い、フツーの男のっ!

 魔王のチカラなんて使われちゃったら、ボロカスにられてしまうのではっ!

 むむむ、これはお着替えガチャの出番かなっ!?

 と、思ってるとなんとっ!


「魔王のチカラなんて、そんなの使わなくても勝てるもんっ!」


「えっっ!?」


 魔王のチカラは使わないんですか、そーですか。ちょっと、イヤ、かなり、ほっ。

 でっかい大鎌デスサイズとかブン回されちゃったらたまったもんじゃねーですよっ!


 だったらガチで頑張りますよ、お兄ちゃんっ!


 取り組み表は『男の(兄)対カワイイ小柄な女の子(妹)』なんていう、しょっぱい対戦だけれども!


 俺の勇者としての歴史の1ページにっ!


『カワイイ小柄な女の子(妹)と相撲取って負けた』


 なんて黒歴史を残すワケにはいかないのだっっ!

 勝つしかねーですよ男のお兄ちゃんっ!

 

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