復活のルルコちゃん!

「では、失礼いたします」

 

 ルルコちゃんの傍らに膝をついて、額にかかる髪を掻き分けるフィルフィー。

 その横顔は穏やかで優しくて、なんだかとってもキレイですよ。

 普段からこうならいいのになー。

 言わないけど!


「目覚めよ、コウダルルコよ……『注入インジェクション』」


 ルルコちゃんの額に、そっとチューするフィルフィーですよ。

 俺の時と違って、慈しみをもって優しくチューしてますよ。って、俺との扱い、段違い!

 なんなんだ、この差はっ。


 ふわっとした白い光に包まれていくルルコちゃん。それは、ゆっくりと身体の中に吸収されていって。

 

 俺と、父さんと母さん。

 神様店長とペリメール様が見守る中で。


「ん……? ママ……? ……パパ? ここは……?」


 おおっ!

 意識が戻ったっ!


 復活ですよ、ルルコちゃんっ!


「ルルちゃんっっ! 良かったっっ!」

「ルルコっっ……!」


「うむ。善きかな善きかな」

「成功ですわっ! フィルフィーさんっ!」


 堪らず涙ぐむ父さんと母さん。

 神様店長とペリメール様も喜んでますよ。

 俺の勇者のチカラが役に立ったってコトですよー!

 これって、少しは親孝行になったのかなっ? 

 だとしたら、ホントのホントにヨカッタですようおおおー!


 ゆっくりと上半身を起こした後、どういった状況かわからずにカワイイ目をパチクリしてますよ、ルルコちゃん。

 まあ、ムリもないかなー。


「……ここはドコ……? あ、パパとママだ……ルルコ、どうしちゃったんだっけ……?」


「お前は大魔王サマに連れ去られたんだよ、ルルコっ!」


「いきなり大魔王サマがやって来て『ちょいと貸してもらうぞい』って、連れてっちゃったのよっ。覚えてない!?」


「んー……わかんない……」


 父さんと母さんに説明されても、ぼーっとしてますよルルコちゃん。


 て言うか。

 父さんも母さんも、前の世界での喋り方そのまんまだから、父さんは『男喋りのお姉さん』で、母さんは『オカマちゃん』ぽく見えちゃいますよー!


『ルルコちゃんのママの中身は俺の父さん』

『ルルコちゃんのパパの中身は俺の母さん』


 って、アタマで理解してても、ややこしいっ。



「ルルちゃんっ、痛い所とか無いっ?」


「んー……ダイジョブみたい……」


 キョロキョロと周りを見回し、ふっと俺の方を向いて、きょとんとした顔しちゃってますよ、ルルコちゃん。

 

「あのっ。ボクのコト、わかる?」


「ヒカリお兄ちゃん……でしょ? ルルコは、お兄ちゃんと闘って……負けちゃったんだっけ……?」


 じーっと、俺を見つめてますよ。

 て言うか、ガン見なんですけど。

 もしかしてメンチ切られてるっ?


「あっ……あー! 思い出したっ! ルルコっ、お兄ちゃんと取っ組み合って、思いっきり投げ飛ばされちゃったんだっ! あの時、ルルコのぱんつ、めっちゃ食い込んだんだからねっっ!」


「えっ!?」


 思い出したのはソコですかっ!

 おパンツ食い込んじゃったんですか、そーですか。上手うわて投げするには、他に掴める所が無かったからしょーがないですよー!


「あの時は、だってっ、真剣勝負だったんだから仕方ないんじゃないのかなっっ?」


「だからってカワイイ妹のぱんつ掴んでブン投げたりするー!? ひっどおーい! お兄ちゃんのヘンタイ!」


「えっ!? ヘンタイっ!?」


 カワイイって自分で言っちゃう辺りがシフォンちゃんと似てますよっ。

 元気に復活してくれたのはいいけど、お兄ちゃんをヘンタイ呼ばわりですようおおおー!


「あらあら、ヒカくんたら兄妹ゲンカかなっ? ケンカするほど仲が良いっ♪ 二人とも負けるなー♪」


「ちょっとパパっ!? そんな簡単なハナシじゃないんだよっ!? 妹のぱんつ掴んで投げ飛ばすなんてひどくない!?」


「そうねえ。でも、世間一般にはよくあるコトだよ?」


「だよねー♪ って、そんな世間一般なんてあるワケ無いでしょっ!」


 ノリツッコミっ!

 のんびり屋さんなトコロが相変わらずの母さん、つまりはルルコちゃんのパパにツッコミいれちゃってますよ、ルルコちゃんっ!


「大きくなったルルコってこんなカンジなんだなあ。でも、成長していくルルコも見たかったなあ……」


 ほっとした笑顔で、ぽそっと呟く父さん、つまりはルルコちゃんのママの言葉で、はっとしましたよ、そうですよっ。


 ルルコちゃんのリセット問題!

 大魔王サマにムリヤリ成長させられたルルコちゃんをリセット出来るのは、フィルフィーしかいない!


「それだよ、父さんっ!」


「ん? どれ?」


「フィルフィーなら、ルルコちゃんを元の姿に戻せるんだよっ! ねっ! そうだよね、フィルフィー!」


「あん? さっき、そう言っただろーがっ。ナニ聞いてやがったんでい、べらぼーめっ」


 ぐぬぬ、いちいち口の減らない江戸っ子女神ですよ、まったくもうっ。



「元の姿に、って……そんなコトが可能なんですかっ? ヤンキー女神様っ?」


「ヨチヨチ歩きのルルちゃんに戻せるんですかっ? ヤンキー女神様っ?」


 父さんと母さんったら、またまた二人してヤンキーって連呼ですよ。

 あんまり言ったら不機嫌になっちゃいますよー!

 と、思いきやっ!


「おうっ! ヤンキー女神のフィルフィーマートに任せやがれっ! てなもんでいっ!」


 フィルフィーったら、自分で認めちゃってるし。むしろ気に入ってるカンジだしー!

 薄々、そうなんじゃないかなーとは思ってたけどもっ。だったら遠慮無くヤンキー女神と呼ばせてもらおうじゃないですかっ。


「あのねっ、ルルコちゃんっ。ここにいるヤンキー女神サマなら、ルルコちゃんを大魔王サマに成長させられちゃう前の姿に戻せるんだよっ」


「えっ?……ホントにっ?」


「信じられないかも知れないけど、ホントにそうなんだよっ!」

 

「えー? このヤンキーのおばちゃんがー?」


「誰がヤンキーのおばちゃんだっっ! 泣かすぞクソガキっっ!」


 うわ、ブチ切れたっ!?

 ヤンキー女神って言われてもキレなかったのに、おばちゃん呼ばわりされて即ギレですよ。

 クソガキって、女神なのに口悪すぎだろっ!


「落ち着いて下さいですわっ、フィルフィーさんっ! 神様のお手前であまりに口が悪いと、女神ポイントを削られちゃうのですわっっ」


「えっ!? ペリ子が言うならしょーがねーなあっ。許してやんよっ」


 ペリメール様のひと言で、あっという間に鎮火ですよブチ切れ女神。

 一緒に居てくれてホントに助かりますよ、ペリメール様っ!



「んで? どーすんだよ、ルルコっ?」


 仏頂面でルルコちゃんを見下ろすフィルフィーですよ。おばちゃん呼ばわりされて不機嫌になっちゃうなんて、オトナゲないぞっ。

 

 ルルコちゃんは黙って考え中。

 でも、考えるまでもナイんじゃないのかなっ?

 父さんも母さんも、元の姿に戻って欲しいみたいだし、ルルコちゃんが『うん、わかった』って言ってくれたら万事解決! ってヤツですよー!


 しばしの沈黙。


 ふっと、顔をあげたルルコちゃんのカワイイお口から出た言葉はっ!

 

「やだっ。戻んないっ。このままでいいっ!」


「えっっ!?」


 なっ!

 なっっ!

 なんですとっっ!? きっぱりハッキリ拒否っちゃいましたよ、ルルコちゃんっ!

 これは想定外の答えでビックリですよ、男のお兄ちゃんっ!

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