バトルスタート5秒前!

 ラーフィアちゃんからのレンタル魔法刀『白月』と『黒月』!

 これで闘うしかないですよ、ポンコツ男のっ!


 お着替えガチャもしないでバトルなんて、お気楽ダンジョンに行った時以来!

 あの時はグミスライムが相手だったから楽勝だったけど、今回は相手がヤバすぎるっっ。


 実戦で男ののままなんて、初体験ってコトですようおおおー!



「あれえ? 女神様が勇者に力を貸しちゃってもいいんですかあ?」


「私が貸してるのは『女神の力』じゃ無くて、スキルで呼び出した武器だからセーフなのですっ! ルルコちゃんだって、でっかい武器持ってるでしょっ?」


「えー? なんか、ヘリクツ言ってゴマかしてませんかあ? でも、まあ、いっかー♪

 じゃあ、遊びましょっ♪ お兄ちゃんと、くのいちさんっ♪」


 遊びましょ♪ なんつって余裕シャクシャクじゃないですか、ルルコちゃん!

 でっかい大鎌デスサイズを、バトントワリングみたいにびゅんびゅん振り回しちゃってますよ、とっても危険でデンジャラスですよー!


「お着替えガチャもしないで、そのカタナだけでルルコと闘うのお? 

 ダイジョブなの、お兄ちゃん?」


「えっ!? お着替えガチャさせてくれるのかなっ!?」


「させないけどっ♪」


 ルルコちゃんたら、アマノジャクっ!

 お着替えガチャする時間をくれるのかと思いきや、くれないなんて、何て言うか、おあずけ上手ですよっ!


「お着替えガチャって、変身完了までに5秒くらいかかるでしょー? それだけあれば、お兄ちゃんの首なんてサクっと狩れちゃうもん♪

 それじゃあ、つまんないよねっ♪」


 5秒以内にサクっとってマジですか。

 変身に必要な時間まで把握してるとはっ!

 初対面の時からそうだったけど、やっぱり侮れませんよ、ルルコちゃんっ!


 ポンコツ男ののまま闘うなんて無謀にもほどがあるってなもんだけど、これはもう、やるしかないですよー!

 

「大魔王様が言ってたの。お着替えガチャは最強のスキルの内のひとつだから、絶対にお着替えさせちゃダメだ、って♪」


 なななんとっ!

 大魔王サマも認めるほどのスキルだったのか、お着替えガチャ!

 そう言えば、恐るべしは妄想力って言ってたような、いなかったような、うろ覚えがっ。



「じゃあ、どっちの首から狩ろうかなあ?  

 二人同時にしよっかなっ?」


 ニコニコ笑顔でさらっとコワイコト言っちゃってますよ、ルルコちゃん!

 二人を同時に相手するなんて、今までに見た実力とスキルなら不可能じゃないっぽい!


 これはガチのマジで気を引き締めないとっ!


「可能な限りのサポートはするぞ、ヒカちくりんっ!」

「リアちゃんもお手伝いしまあす♪」


 レイルさんとフェイリアちゃんが俺達の後ろで待機ですよ!

 向かい合うルルコちゃんと俺達の間に、静かに漂うピリピリとした緊張感と緊迫感!


 ルルコちゃんが、びゅんびゅんと振り回す大鎌デスサイズの風切り音が不気味でオソロシイですよー!


 と、その時ですよ!


 バンっ!と大きな音を立てて扉が開き、そこに現れたのはっ!


「あ~あ、スッキリしたぜっ!てなもんでいっ!

 あん? お前らナニやってんだー?

 部屋の模様替えなんかして、祭りでも始めるのかー?」


 賑やかましくトイレから戻って来ましたよ、ヤンキー女神っ!

 魔王の間で祭りなんかするワケないでしょーがっ。いつでもどこでもブレないな、フィルフィーはっ。


「あら、あららっ? これはいったい、どうしたコトなのですかっ?ですわっっ?」


 部屋の様子が変わったのと、戦闘体勢のみんなを見てビックリしちゃってますよ、ペリメール様っ。


 フェイリアちゃんは尻尾鞭テイルウィップを出しちゃってるし、レイルさんも大鉈おおなたを構えちゃってるし!

 いつの間にかラーフィアちゃんも、魔王だった時に持ってた鞭を手にしちゃってますよ!


 これは誰がどう見たって、ルルコちゃん対俺達!ってなカンジになっちゃってますよー!


 それを見たペリメール様はビックリ仰天!


「どどどどうして貴女達が武器を構えているのですかっ!?ですわんっっ」


 ペリメール様がワタワタしちゃってますよ、こんなに慌てるなんて珍しい!


「おほー♪ 楽しそうじゃん! あたしも暴れさせろやあっ!」


 ずるりっ!と、金色の長い髪から竹刀を取り出すフィルフィー!

 それでルルコちゃんの大鎌デスサイズと闘う気なのかっ!?


「ダメダメっ!ですわっっ。 ココで暴れたら、フィルフィーさんとは、もうチューしませんっ!ですわっ!」


「えっ!? しゃーねえなあ、わーったよっ」


 またコレかっ。

 ペリメール様の『もうチューしません』は、フィルフィーを鎮火させる効果絶大ですよっ!


「中立の立場である女神は、勇者とも魔王とも敵対してはいけませぬ!ですわっ!

 ラフィーさんまで、何をしているのですかっ、ですわっ!」


「でも、だって、お姉ちゃんっ! このままじゃヒカリちゃんがっ!」


「だってじゃありませんっ!ですわっ!ラフィーさんっ!」


「はあい……」


 あらら。

 ペリメール様に怒られちゃって、しゅんとしちゃいましたよ、ラーフィアちゃん。


「あ~あ、怒られちゃったね、ラーフィアさんっ。おばちゃんのお小言ってイヤですよねえ♪」


「おおおおおおばちゃん、って、フィルフィーさんのコトを悪く言ってはいけませぬっ!ですわんっっ」


 えっ。


 あれっ?


 いや、ちょっとペリメール様っ?

 今、ペリメール様のコトを『おばちゃん』って言ったよね、ルルコちゃん。

 ラーフィアちゃんを叱ってたのって、ペリメール様だったよねっ?


 一瞬、その場の全員のアタマの上に『?』マークが見えたのは、気のせいなんかじゃないですよ!

 なんでどうして、フィルフィーにすり替えちゃったのかな、ペリメール様っ?


 

「あーははははっ!ルルコから見ればぺリ子もおばちゃんかあー! 笑えるなー!」


 笑えるかっっ。

 新妻をおばちゃん呼ばわりされてるのに大爆笑ですよ、バカ笑い女神っ。


「おっ、おほほほほほっ!ですわっ! 魔王ルルコさんったら、面白い冗談ですわんっっ」


「えー? ルルコは冗談で言ったつもりは無いんだけどなあ。

 だって、おばちゃんでしょー?」

 

「はうあああっ!?」


 こりゃなんと。

 今までに聞いたコト無いような声出しちゃいましたよ、ペリメール様。

 そんでもってフリーズしちゃいましたよー!


 ちっちゃい女の子におばちゃんて呼ばれちゃって、そんなにショックだったのかなっ?


 ペリメール様と話すのは初めてなのに、第一印象悪すぎですよ、ルルコちゃんっ!

 

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