妹魔王、ルルコちゃん!
コココンっと、魔王の間の扉をノックするスズキさん。
魔王城の清掃員から案内人に変わって、なんだかんだで地味に昇格してるのか、今は執事みたいなポジションっぽいですよ。
「『はい、どうぞー♪』」
と、室内から聞こえるルルコちゃんの明るい声。
めっちゃリラックスしてるカンジで、ホントに今から闘うのか?ってなもんですよ!
「妄想勇者と、その御一行様をお連れいたしましたっぺさ、魔王ルルコ様っっ!」
どうぞって言われてるのに、扉を開けずにでっかい声で報告ですよ、スズキさん。
ナニやってんですかね、もう。
「『入ってもらっていいよー♪』」
ルルコちゃんの返事は、トモダチに呼びかけるみたいな軽ーいカンジ。
なんかこう、緊迫感とか緊張感がぶっ飛んでっちゃいますよっ。
「総勢七名の大人数だけんども、大丈夫でごぜーますかっ? 魔王ルルコ様っっ!」
入ってもらっていいよって言われてるのに、なんの確認をしてるんですかね、スズキさんっ。
ドキドキしながら待ってるこっちの身にもなってみなさいよってなもんですよっっ!
と、てててっと扉の向こうから、こっちに近づく足音がっ。
「もうっ。ウルサイなあ、スズキくんはっ」
カチャリと開きましたよ、魔王の間の扉!
スズキさんがなかなか開けないもんだから、ルルコちゃん自らが開けちゃいましたよー!
俺の目の前には、初めて会った時と同じ白いワンピース姿の妹魔王ルルコちゃんがっ。
俺と変わらないくらいの身長だから、それはもう、バッチリと目が合っちゃいましたよ、男の
「あ、お兄ちゃんだ。ホントに来てくれたんだー。ねえ、お兄ちゃんて、いつもそのヘンなぐるぐるメガネかけてるのー?」
おおう、いきなりのご挨拶がソレですかっ。
俺のトレードマークのぐるぐるメガネを『ヘン』呼ばわりですよ、ルルコちゃんっ。
「こっ、このメガネはずっと使ってる大事なモノだし、それに、別にヘンなんかじゃないんだよっ?」
「ふーん。外した方がカワイイのになー。まあ、ルルコはどっちでもいーけどねっ♪
さあ、みんな入って入ってっ♪ 今、お茶いれますねっ♪」
むむむ、なんか楽しそうですよ、ルルコちゃん。
俺と違って人見知りしないし、フレンドリーだし!
今から闘おうってのにティータイムって、余裕アリアリなのかしらっ!?
「あっ、じゃあ、私も手伝おうか?」
え。ちょっと、ラーフィアちゃんっ?
「えー!いいんですかあ? ラーフィアさんっ」
え。ルルコちゃんまでっ!?
「いきなり大人数で押しかけちゃったしねー。
クッキー作ってきたんだけど、ルルコちゃんも食べるかなっ?」
「わあ♪ もちろんですよう♪ いただきますっ♡」
なんなんですかね、このノリはっ。
みんなでガールズトークでも始める気なんデスカネっ?
ラーフィアちゃんも、さっきまでの緊張感はどこへやらっ。
なんだかとっても楽しそうなんですけどっ!
「私ね、ルルコちゃんみたいな妹が欲しいなーって、ずっと思ってたの♪ ヒカリちゃんの妹さんなら、なおさらだよー♪」
「ルルコも、ラーフィアさんみたいなキレイなお姉ちゃんが欲しかったですよう。
男の
うおお、ディスられたっっ!
ヒカリは120の精神的ダメージを受けた!ってカンジですよっ!
まだ闘っても無いのにダメージ受けちゃってますよ、妄想勇者っ!
はっ! これは、もしかしてっ!
闘いはもう始まっている、ってコトなのかっっ?
目に見えない闘い、それすなわち心理戦ってヤツなのかしらっ!?
「あ、ここからはオンナノコだけの時間だから、スズキくんはお仕事に戻ってねー♪」
「はっ!了解だべっすー! では
オンナノコだけの時間とは言いますが、ひとり混じってるのですよ、男の
そこんところをお忘れなくー!
「ほんじゃあ、またなっ!
ぬはっ!ぬはっ!ぬはははははっ!」
うぬぬ、やかましいぞスズキさんっ!
て言うか、ルルコちゃんの前で下ネタを言うんじゃないっ!
「ねえ、ジエンドオブソウロウって何ー?」
キョトンとしてますがね、ルルコちゃんっ。
お兄ちゃんの口から『ソレ』を説明するのは
「なんでもないからっ。このヒト、ちょっとアタマがアレだからっ」
「そうそう! 私達と一緒にお茶しましょっ?おいしいクッキーあるからっ! ねっ?」
そうそうって、俺の言葉に賛同しつつ、すかさずスズキさんをブロックですよ、ラーフィアちゃん。ナイスですよ!
「わあ!クッキーですかあ? それは楽しみですねっ♪ じゃあ、みなさん、どうぞどうぞー♪」
やっとこさお部屋に入れますですよ。
妹魔王ルルコちゃんのお部屋ですよー!
◇
ぞろぞろと『魔王の間』に入る俺達ですよ。
だがしかし。
魔王の間って言うより、これぞオンナノコの部屋!ってカンジですよ!
レースのカーテンとかカーペットとか、ソファーとか、全部、淡いピンク色。
ベッドに転がってるウサギのぬいぐるみまでピンク色。
こんなんでいいのか、魔王の間っ!
「ラフィーが魔王だった時もそうだったけど、なんでオンナノコってのはピンク色が好きなんだろーなあ? 目がチカチカするぜっ」
なんつってキョロキョロと部屋の中を見回すフィルフィーですよ。
て言うか、フィルフィーだって、いちおう『オンナノコ』のハズなんですけどねっ。
「ヤンキーなら、もっとド派手なヒョウ柄のショッキングピンクとかでもいーんだけどなっ」
ヒョウ柄のショッキングピンクなんて、それこそ目がチカチカするんじゃないのかなっ?
フィルフィーのファッションセンスは、よくわからんですよー。
「ルルコはヤンキーじゃないでぇす♪ それに、いいトシしてヤンキーなんてダサくないですかあ?」
おおっ。
コワイもん知らずですよ、ルルコちゃん。
フィルフィーに面と向かって『ヤンキーダサい』なんつっちゃってますよっっ!
「ああんっ!? ヤンキーに年齢なんて関係ないだろーがっ」
「やだ、おばちゃん怒ってるんですかあ? コワーイ♪」
「ああんっ? 誰がおばちゃんだ、コラっ!」
フィルフィーをおばちゃん呼ばわりとは、やっぱりコワイもん知らずですよ、ルルコちゃんっ。
でも、ちょっと面白いから、もっと言ってやってくれちゃってもいいですよー!
「フィルフィーったら、また騒いでるし。
結婚したんなら、少しは落ち着きなさいよねー」
「ナニ言ってやんでい、べらぼーめっ。ケッコンしよーがナニしよーが生涯ヤンキー道を貫くのが、あたしの
なんかワケわからんコト言ってますよ、江戸っ子女神。静かにできないんですかねっ。
ナニしにここに来たのか、ホントに忘れちゃいそうですよ、まったくもう。
「じゃあ、ルルコは、お茶入れてきまあす♪
みなさん、ちょっと待ってて下さいねっ♪」
「あっ、私も手伝うよっ?」
「リアちゃんもお手伝いしまあす♡」
「では、私もっ」
「拙者もお手伝いするでござるよっ」
ラーフィアちゃんを先頭にフェイリアちゃんとレイルさんはともかく、ムラサメさんまでってマジですか。
魔王と闘いに来たハズなのに、くのいち勇者までお手伝いするんですかっっ。
仲の良いオンナノコが集まると、なんかこう、こんなカンジになりがちだよねー。
なんて思ってる場合ではナイですよっ!
「フィルフィーはウロウロするだけでジャマだし、お姉ちゃんはなんでもテキパキやっちゃうから座っててねっ」
「ジャマってなんだよ、ジャマってよー。失礼なっ」
ブー垂れるフィルフィーを無視して、ラーフィアちゃん達はぞろぞろと別室に行っちゃいましたよ、ティータイムの準備ですよー。
別室の方から、きゃっきゃウフフと楽しそうな明るい笑い声が聞こえてきますですよ。
男の
「ジャマって言われちったし、そんじゃあ、あたしはベンジョでも
「フィルフィーさんたら、お下品ですわっ。せめて、御手洗いって言って欲しいですわっ」
「あん? 御手洗いもベンジョも同じだろー? あ~あ、べんべ~んベンジョっ!てなもんでいっ! ホラ、
「もうっ、静かにして下さいっ!ですわっ」
なんつって出てっちゃいましたよ、二人とも。
ピンク色だらけのオンナノコの部屋に、ポツンとひとり、取り残されたよ男の
なんなんですかね、この放置プレイっ。
「……ヒマなんですけど……」
ぽそっと呟く俺ですよ。
トモダチの家に遊びに来たのに、するコトなくてムダに時間が流れてく。みたいな、まあ、そんなカンジですよ!
ホントにナニしに来たのか、わかんなくなりそうですようおおおっ!
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