続! 作戦会議!! のようなもの?

 ハナシがあっちこっちに脱線しつつも、作戦会議のようなものを続ける俺達ですよ。

 ミナサン、俺のカワイイ首が狙われてるってコトを忘れちゃいけませんよっ!


「私が疑問に思ってるのはね。

 魔王なんて他にもいるのに、大魔王様はどうしてルルコちゃんを選んだのか、ってコトなんだけど……」


 俺と同じ疑問ですよ、ラーフィアちゃん。

 さすがです!

 誰もが答えにつまづくような疑問に、さらっと応えたのは意外にもフィルフィーですよ。


「そんなの『ヒカリの妹』だからだろ。ヒカリがシフォンをボッコボコに出来たのは『赤の他人』だからじゃねーのか?」


「えっ? うーん……」


 シフォンちゃんとは、必死に闘ってたら結果的にボッコボコにしちゃっただけなんだけどなー。


「妹をボコれるほどヒカリは無慈悲ムジヒじゃねーよな? そこに目をつけたんだろーよ、大魔王のヤツは」


「うーん……ホントにそうなのかなー?」


「知らんけど」


 おい、またかっ!

 知らんてなんじゃいっ。

 なかなかナイスな推理かなと思いきや、投げっぱなしの知らんぷりであっち向いてやがるですよ、テキトー女神っ。


「ヒカリちゃんは優しいから……フィルフィーの言うコトもわからなくも無いかな?」


 なななんとっ。

 ラーフィアちゃんがフィルフィーの言うコトに同意とは珍しいっ。


「ヒカリ様はどうですか?ですわっ。

 妹を名乗る女の子と、魔王シフォンの時と同じように闘えますか?ですわっ」


「えっ。それは……」


 妹が、っていうのもあるけど、あんな小さい女の子と戦うなんてのは、やっぱり気が引けるかなー。

 

「ルルコからしてみれば、オマエは兄ちゃんって言うより、ただのカワイイ男のにしか見えねーんだろーなあ。そうじゃなきゃ、いきなり首狩りなんてしないだろ」

 

 うむむ。ただのカワイイ男のって。

 ルルコちゃんと同じコト言っちゃってますよ、フィルフィーはっ。


「みなさんはどうですか? 何か気づいた事はありませんでしたか?ですわっ」


 ペリメール様が話を振ると、真っ先に応えてくれたのはレイルさんですよ。


「私の目には、あの娘は洗脳されているように見えました。あんな小さい少女が、なんのためらいも無くヒカちくりんの首を狩ろうとするなんて……どう考えてもおかしいと思います」


 ですよね!

 お気楽思考が多いメンバーの中、真面目で誠実なレイルさんの言葉は重みと真実味が違いますよっ。

 でも、洗脳なんてただ事ではナイ!

 

「ルルコちゃんはまだ小さいのにぃ、あんなにたくさんのスキルを持ってるのは、大魔王様が操作した可能性が高いんじゃないかなぁ、って思いまぁす」


 ビミョーに緊張感の足りない喋り方だけど、なかなか鋭い考察ですよ、フェイリアちゃんっ。


「無理矢理ヒトの成長を早めるなんて、世界のことわりを無視してまでヒカリちゃんを……大魔王様は、いったいどうしちゃったのかしら?」


 かつての上司の傍若無人っぷりにココロを傷めてるみたいですよ、ラーフィアちゃん。

 大魔王サマには結構ヒドイ目に合わされてるのに、恨み言を言うどころか心配するなんて、やっぱり優しいですよー。


「別にどーしたもこーしたもねーだろっ。

 だって大魔王だからなっ」


 なぬっ!

『だって大魔王だから』のひと言で片付けちゃったよ、お気楽女神っ!

 いくらなんでも理由がド単純過ぎるだろっ!


「ねえ、フィルフィーっ。『大魔王だから』って、そんなの理由になるのかなっ?」


「あん? 理由なんていらねーの!

『魔王』ってのはイキり散らかすのが使命みてーなもんで『大魔王』ってのは、破天荒ハテンコウなコトをぶっこむのが使命みてーなもんなんだよっ。

 ラフィーだって、魔王だった頃はイケイケどんどんだっただろー?」


 イケイケどんどん? ってナニ?

 って言うかねっ。

 大魔王サマって、ただ思い付いた事をぶっこむだけのパープーなイベンターみたいなポジションなのかっ?

 だからって、俺の首狩りイベントなんてぶっこまねーで欲しいもんですようおおっ!



「でも、あんな小さい女の子を洗脳なんて、大魔王様はどうしてそんなコトを……勇者と魔王の大戦争なんて、今の世には要らないハズなのに」


「まー、アレだ。ただ単に、かまって欲しいだけなんだよ、あのジジイはっ」


 むむっ!?

 なんじゃい、それっ。

 そんなつまらん理由で俺は首を狩られそうになったって言うのか、フィルフィーはっ!

 さすがにちょっとカチンときちゃいましたよ、男のっ。

 ここはビシっと言っちゃっても良い場面!


「な」

「ナニ言ってるのよ、フィルフィー! ヒカリちゃんはホントに首を狩られそうになったんだよっ!?」 


 あれっ。

 ラーフィアちゃんに先を越されちゃった。

 イヤイヤ、俺だって言う時は言うんだからねっ!

 

「そ」

「そうですわっ! いくら能天気ノーテンキなフィルフィーさんでも、言っていい冗談と悪い冗談があります!ですわっ!」


 あれれっ。

 今度はペリメール様に先を越されたっ!?

 イヤイヤ、まだ言いたい事を言ってナイですよ!

 

「い」

「妹に首を狙われるなんて悲し過ぎますっ。しかも初対面だったんですよっ?」


 あれれれっ。

 今度はレイルさんに先に言われちゃったぞっ?

 イイカンジにフィルフィーがみんなにボコられてるけど、俺はまだナニも言えてナイ!

 ナニか言い返さないと、ぶっこみどころがどんどん削られていきますよっっ!


「み」

「みなサマのおっしゃる通りでござるっ。ここはキモチを引き締めなければ、ヒカリ殿の首を護れないでござるよっ」


 あれれれれっ。

 またまた先に言われちゃいましたよ、男のっ!

 ムラサメさんたら、真剣な眼差しで俺の身を案じてくれてるみたいですがっ。

 俺のぶっこみどころが、どんどん無くなっていきますよっ。

 ここはちょいと視点を変えて、ルルコちゃんの身を案じてみるですよっ。


「ち」

「小さな女の子が高度なスキルをたくさん使うなんてぇ、ルルコちゃんの身体への負担も大きいんじゃないのかなぁ? って思いまぁす」


 あれれれれっ。

 フェイリアちゃんまでっ。

 むぐぐっ。

 言いたいコト全部先に言われちゃいましたよ、男のっ!

 って言うか、俺の思考が読めるのか?

 ってくらいに、思ってるコトをズバズバと先に言われちゃってますようおおおおっ!


「で? ヒカリはど思ってるんだよ? さっきからクネクネしてっけど、ベンジョにでも行きてーのかっ?」


 違うわいっ。

 言いたいコト先に言われちゃって、どうしたもんかと考え中なんじゃいっ。


「ヒカリちゃん、おトイレに行きたいの?

 じゃあ、一緒に入ろっかっ」


「えっっ!?」


 じゃあ、の意味がワカリマセン!

 しかも狭いアパートの狭いトイレに二人は狭過ぎですよ、ラーフィアちゃん!

 女神にジョブチェンジしたのに、ちょっとヘンタイなのは相変わらずですよー!



「ベンジョに行きたきゃ、さっさと行けばいーだろーがよっ」


「いや、別にそうじゃないんだけどっ?」


「ここでウダウダグダグダしようがナニしようが、闘うのはオマエなんだからなっ!

 ルルコは『魔王城で待ってる』っつってたんだだろー? だったらくしかねえだろーがっ!

 あたしの舎弟ならビビってねーで、気合い入れろやヒカリぃっ!」


「フィルフィーさんったら声が大きいですわっ。お静かにっ、ですわっっ」


「あん? へいへい、わーったよっ」


 でっかい声で騒ぐフィルフィーを一喝ですよ、ペリメール様。

 ナイスです!

 その大きめのお尻でフィルフィーを下敷きにしちゃって下さいましっ!

 

           ◇


「それで、魔王城って、どうやって行ったらいいのかなっ?」


「あん? どーやってもナニも、前みたいにバスで行けばいーじゃん」


「えっ! バスっ!? またバスなのっ?」


 マジかっ。

 勇者と魔王の大戦争だっつーのにバスなんて出てるのかっ?


「勇者と魔王の争いに一般人は関係無いし、巻き込まれる心配なんてほとんど無いからな。

 ヒカリは、辺り一面焼け野原の戦場になっちゃうみてーなコト想像してたのかー?」


 いや、だって、戦争ってそういうもんじゃないのかなっ?

 でも、そう言えばシフォンちゃんと闘った時って、だだっ広い荒野に移動したんだっけ。

 一般人に危害を加えない勇者と魔王の大戦争なんてあるのかー。

 想定外というか規格外というかなんというか、やっぱ変わったセカイですよ!


「ヒカちくりんの首が失くなってしまったら、ラーフィア様が悲しまれるからなっ。そうならないように私も全力を尽くすと誓おうじゃないかっ」


 ぐっと拳を前に突き出すレイルさんですよ。

 うおお、カッコいい!

 やっぱり、頼りになるイケメンお姉さんです!


「大丈夫でござるよ、レイル殿っ!

 ヒカリ殿の首は『くのいち勇者』の名にかけて、拙者が必ず護ってみせますでござる!」


「わっ、私だってサポート女神としてヒカリちゃんの首を護るんだからねっ!」


 あらあら、またまたムラサメさんと張り合っちゃってますよ、ラーフィアちゃんっ。

 

「リアちゃんもぉ、ヒカリ様の首が失くなるのはイヤなのでぇ、全力でサポートしますよぉ♪」


 みんなが俺の味方だと思うと心強いですがっ。

 みんなして『首が首が』ってどうなんデスカネっ?

 なんかさらっとコワイコト言ってやしませんかねっ?


「じゃあまたみんなで行くか、魔王城によっ!

 ペリ子の弁当持って殴り込みだあっ!!」


 ああもう、静かにしなさい、ヤンキー女神っ。

 どこの世界にお弁当持って殴り込みに行くヤツがいるってんですかねっっ。


 結婚して少しは円くなるかと思いきや、いつまでたってもヤンチャな女神サマですよ、まったくもう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る