作戦会議!! のようなもの?

 ここはアパート。

 俺と新婚女神の二人がにぎやかましく暮らしてるアパートですよ。

 決して広くは無いアパートに、勇者が二人、新米女神が三人、新婚女神が二人の計七人はさすがに狭いですよー。

 肩が触れあうなんて当たり前で、軽くイモ洗い状態。


 俺の右隣にはラーフィアちゃんが。

 左隣にはムラサメさんがピタリと寄り添ってますですよ。

 両手に花とは、まさにこの事だけど今はそれどころではナイっ!


 コトの顛末を、ワタワタと身振り手振りを加えて説明する俺ですよ。

 

「と言うワケなんだよ、フィルフィー! 今度こそホントに、命の危険が危ないんだようっ!」


 んっ? 危険が危ない?

 なんか違う?

 いや、合ってるよなっ?


 大魔王サマがいきなりぶっこんできた『勇者と魔王の大戦争』のコト。

 いきなり大きく成長した妹魔王ルルコちゃんに命を狙われたコト。

 くのいち勇者ムラサメヒミコさんに助けられたコト。


 なんかもう、短時間にいろんなコトが起きちゃって、思考が追いつかねーですよっ。



「落ち着いて下さいヒカリ様っ。とりあえず、お水をどうぞっ。ですわっ」


 ペリメール様にコップ一杯の水を渡されて、ぐびぐびっと一気飲み。

 ぷはー、やれやれふう。ですよー。

 

 ……んっ?


 今、ふと気づいたけど。


 キレイでカワイイ女の子達とナイスボディーな二人の女神様に囲まれてる男のの図。

 ってこれはっ!

 軽くハーレムっぽいっ!?

 きゃっきゃウフフで酒池肉林!みたいなー!


 イヤイヤ、今はまだその時ではナイですよ!

 なんてったって、妹魔王に命を狙われちゃってますからね、男のっ!


 傾向と対策を練りに練って、カンペキな作戦を立ててから魔王城に行かないとっ!

 サクッと首を狩られちゃいますようおおっ!


「んで? 勇者と魔王の大戦争が始まったとかなんとかだっけ? それがどうかしたのかよ?」


 なぬっ!?

 今までナニを聞いてたんじゃいっ!

 どうかしたのかよとは、そっちがどうかしたのかよですよっ!

 命の危険が危ないっつったでしょーがっ!


「フィルフィーったら、人の話はちゃんと聞きなさいよねー。首が狙われてるのよっ!

 ヒカリちゃんの華奢で細くてカワイイ首がっ!」


「はあーん? 首ねえ。そんなの狩ってどーすんだろなあ?」


 ラーフィアちゃんが反論してくれたけど、俺のカワイイ首を『そんなの』呼ばわりですよ。

 危機感なんてまったくゼロだな、ノーテンキ女神っ。


「ヤられる前にヤっちまえばいいだけのコトだろー? 面白そうじゃん、殴り込みっ! あたしも参加させろやあっ!」


「フィルフィーはただ暴れたいだけでしょーがっ。今までの話を聞いてて何か違和感とかないワケっ?」


「あーん? 違和感イワカン? なんかおかしいトコなんてあったっけかー?」


「ヒカリちゃんの妹さんの話よっ。将来的には私の義理の妹になる予定の、めちゃめちゃカワイイ妹さんのハナシっ!」


 んむっ?

 義理の妹っ?

 それってもしかして、俺とラーフィアちゃんがハッピーウエディング的なアレになっちゃうってコトなのかなっ?


「ナニを仰っているでござるか、ラーフィア殿っ。ルルコ殿は拙者の義妹ぎまいになるのでござるよっ?」


 あれあれっ?

 ムラサメさんたら、ラーフィアちゃんと張り合っちゃってるっ?

 おとなしいイメージだったのに、なんか『前へ前へ!』オーラが強くなってますよっ。


「言っておきますけどね、ムラサメさんっ。

 私とヒカリちゃんはお付き合いしてるのっ。

 私はヒカリちゃんの彼女で、ヒカリちゃんは私のカノジョなのですっ」


 おおっ。

 ズバっと言っちゃいましたよ、ラーフィアちゃんっ。でも、俺ってやっぱり『カノジョ』扱いなんですねっ。

 お付き合いしてると聞かされたムラサメさんの反応はっ?


「へー。そうでござるかー」


 こりゃなんとっ。

 しれっと平然としたもんですよムラサメさん。

 クロジョのザコレベルB班でメンタル鍛えられたみたいですよー!

 

「ヒカリちゃんと私は見えないモノで結ばれてるのっ!

 だって、ヒカリちゃんは言ってくれたよねっ?」


「えっ? ナニをデスカっ?」


「『一生、二人でお揃いのパンティーを穿こうね』って言ってくれたよねっ?

 だって、一緒に買ったよねっ?

 それって今も穿いてるんだよねっ?」


「えっっ!?」


 言ってないし、穿いてません!

 見えないモノって、友情とか愛情とかキズナとかじゃなくて、おパンツのコトデスカっ。

 男のだからって、いつでも女物のおパンツ穿くほどヘンタイじゃナイですよー!


『ボクと一生お揃いのおパンツを穿こう!』


 なんて、もしプロポーズの言葉だったら、とんだド変態じゃないデスカっ!?


「それは本当でござるか、ヒカリ殿っ!

 ザコレベルB班の時、『いつか二人でお揃いの首輪を着けようね』と、拙者に言ってくれたではござりませんかっ!」


「えっ!?」


 ござりませんっっ!

 ナニを口走っちゃってるんですか、ムラサメさんっ!

 いつでもどこでも首輪プレイなんて、それこそただのド変態ヘンタイ

 なんか、二人とも話が明後日の方向にぶっとんじゃってますよっ!

 って言うか、ムラサメさんもラーフィアちゃんに負けず劣らず、変わった性癖の持ち主ですよー!


 俺は文字通り二人の間に板挟み!

 こんな時って、どうしたらいいのかワカリマセンっ!


「論点がずれちゃってます、ラーフィア様っ。少し落ち着いて下さいっ」


「えっ!? そっ、そうだったかしらっ?」


 ヒートアップっぷしちゃいそうな二人の仲裁に入ってくれたのは、レイルさんですよ。

 とりあえず、ほっ。

 

 うむむ。まさか、ムラサメさんがここまで積極的に想いをぶつけてくるとは想定外!

 ラーフィアちゃんも突然の恋敵ライバル出現に少なからず動揺しちゃってますですよ。

 そうじゃなきゃ、突発的に『お揃いのおパンツ穿く』なんて発想は出ないハズ!

 ……たぶん。

 ラーフィアちゃんだったら無くもナイか?



「なんだよモテモテだな、ヒカリぃ? グダグダ言ってねえで、二人ともヨメにしちまえよっ」


「えっ!? 二人ともっ!?」


 それって重婚ジューコンじゃないのかなっ!?

 こっちの世界ではそれってオッケーなのかなっ!?

 もしかして、二人の美少女ときゃっきゃウフフなハーレムライフを実現出来ちゃったりするのかなっ!?


「もし、お二人が将来を誓い合っているのなら、拙者は第二夫人でも構わないでござるよ?」

 

「あっ。だったらぁ、リアちゃんはヒカリ様の愛人のポジションでもオッケーでぇす♡」


「「えっ!?」」


 ナニをぶっこんでくるんですかムラサメさんとフェイリアちゃんっっ!

 ビックリ仰天の俺とラーフィアちゃんですよっ。

 だがしかし!

 これってまさしくハーレム案件!

 毎日のようにくんずほぐれつのムフフでアハンなハーレム案件ですよー!

 

「それ、いーじゃん。なあ、ヒカリぃ?」


「フィルフィーさんたら、茶化してはいけませぬ!ですわっ。今はヒカリ様の首をどう護るかのお話なのですわっ!」


 はっっ!

 そうだ、そうですよっ。

 重婚ハーレムに期待してる場合ではナイ!

 命の危険が危ないってコトを忘れるトコロでしたよ、男のっ!

 気を取り直して作戦会議を続行ですよっ。


「あー? で、なんだっけ? 妹魔王がどーしたこーしたってハナシだっけ?」


「ルルコちゃんって言うのよっ。覚えなさいよね、もう。あの娘は『大魔王様に大きくして頂いた』って言ってたけど、私は何か違うと思うの」


「あん? 何かって、なんだよ?」


「もしかしたら、ルルコちゃんって、ムリヤリ成長させられたんじゃないのかな?って。

 ヒカリちゃんに聞いたんだけど、ホントなら1歳くらいなんだって。

 それなのに、自分の意志で大きくなって、そこから魔王になったなんて考えられないでしょ?」


 ラーフィアちゃんは『ムリヤリ成長説』を唱えてますですよ。

 なかなかエグい推察だけど、大魔王ってそんなコト出来ちゃうのかっ。



「あたしが思うにだなー。ルルコってのがいきなりでっかくなったのは、まあ間違いなく大魔王のヤツの仕業だろーなっ」


「フィルフィーったら、なんかドヤ顔しちゃってるけど、それって今ラーフィアちゃんが言ったよねっ?」


 思わず突っ込む俺ですよ。


「あん? そーだっけか?」


 フィルフィーったら、なに食わぬ顔で素知らぬ顔の知らん顔ですよ。


 ハナシが前に進まねーですよ、まったくもうっ。

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