失墜! 魔王シフォン!
いきなり『勇者対魔王の大戦争』をぶっこんできやがりましたよ、大魔王サマ!
なんかよくわかんないけど、俺がそれの引き金になってるっぽい言い方なんですけどー!
「『勝敗の決め方は、あー、とりあえず、魔王城が陥落したら大戦争は終結、という事にしようかなーと、おー、思いまする。
そんでもって、開戦の日時は、あー。
今でしょ』」
今っ!? たった今から勇者対魔王の大戦争が始まるんデスカっ!?
なんか軽ーい始まり方だけど、こんなんでいいのかっ!?
「『えー、では。開戦宣言をば、したいと、おー、思いまする。
はい、すたーとっ、ですじゃ』」
めっちゃめちゃ軽いですよ、大魔王サマっ!
大戦争の開戦宣言がこんなに軽くていいんデスカネっ!?
こここれはっっ!
またシフォンちゃんと闘うってコトなのかっ!?
そんなバカにゃっ!と思わず、パッとシフォンちゃんの顔を見ると、なんとっ!
カワイイお口をぽかーんと開けて呆然としてますよ、現役魔王のシフォンちゃん。
「ちょっとシフォンっ! 大戦争ってどういう事なのよっ?」
「えっ? わかんないわよっ。私だって初耳なんだしっ」
ラーフィアちゃんに問い詰められちゃって、戸惑いが隠せませんよシフォンちゃん。
「ナニよそれっ。魔王のクセに何も聞かされてないのっ?」
「クセにってナニよ、クセにって。初耳だっつってるでしょーがっ。うっさいわねー」
「うっさいってナニよ、うっさいってっ!」
「はあーん? ウルサイって意味なんですけどおー? そんなコトすらわかんないのお?
おバカさんねえ。おっぱいぺったんこだと、脳ミソまで薄っぺらいのかしらあ?」
「なっっ!? 言ってくれるじゃないのよ、シフォンっ!」
「ラーフィア様を侮辱する事は許さんぞ、シフォンっ!」
がたたんっ!とイスから立ち上がって、猫足立ちの構えを取るレイルさん!
俺が同じポーズを取ったら『にゃん♡』ってカンジにしかならないヤツですよー!
うおお、やっぱりカッコいいですよー!
「今はぺったんこでもぉ、いつかきっと大きくなる予定だから、ぺったんこって言っちゃダメですよぉ? わかんないけどぉ。アハー♪」
あらら、フェイリアちゃんまで
みんなしてピリピリし始めちゃいましたよっ。
でも、フェイリアちゃんのはビミョーにフォローになってナイのではっ?
ここはケンカを止めないとっ。
「おっ。落ち着いて、みんなっ!」
と、仲裁に入った、その時ですよ!
「『あーそうそう。ヒカリちゃんにズタボロにやられちゃったシフォンは、更生施設に行ってもらおうかのー』」
「えっ!? なっ! 何故ですか、大魔王様っ!」
モニターに向かって抗議の声をあげるシフォンちゃんですがっ。
そんなの
と思いきや!
「『んー? 何故と言われてものう。
アイドルになりたいから他人の声を奪う、なんてのは、実にワガママで面白い考えじゃったんじゃがのう。ちょみっと詰めが甘かったのう』」
なんと会話出来るじゃないですかっ。
やっぱり向こうから見えてるみたいですよっ!
「『せっかく歌姫と女神の声を奪ったのに、逆に奪い返されてからはどうじゃ?
ヒカリちゃんをブチ殺すチャンスはいくらでもあったのに、毎日毎日イチャイチャちゅるちゅるしとったじゃろ?』」
「「えっっ!?」」
思わず、俺とシフォンちゃんの声が重なった!
イチャイチャちゅるちゅるって、なんのコトやらさっぱりデスヨっ!?
って言うか、ブチ殺すって
「……ヒカリチャン? ドウイウコトデスカ?」
「おえあっ!?」
ラーフィアちゃんのツヤサラ銀髪がゆらゆらと逆立っちゃって、
なんか誤解しちゃってるよ、ラーフィアちゃんっ!
「イチャイチャちゅるちゅるなんてっ!
そっ、そんなコトシテマセンヨっ!?」
「そうよっ! ダンスレッスンで身体をぴったり密着させてぬるぬるしたり、手を繋いでお散歩したりしてただけよっ!」
「えっ!? ぬるぬるっ!?
ちょっとシフォンちゃんっ!言い方がオカシイよっ!?」
「『カラダヲ、ミッチャク……?』」
うおお、イケボっ!
地獄の底から響いてくるラーフィアちゃんのイケボですよー!
その声どこから出してるのっ!?
「あっ、あれはねっ。
ダンスレッスンで身体が触れあうコトはあったけど、イヤらしい意味なんて全然無くって、それはもう汗だくの筋トレレベルだったんだよっ?」
「『テヲツナイデ、サンポ……?』」
「あっ、あれはねっ。
ジョギングって言うか、それはもうマラソンレベルでっ、ヘロヘロになったボクをシフォンちゃんがムリヤリ引きずり回してたんだよっ?」
「『へー、ソウDEATHカ……オテテ、ツナイデ、オサンポ、DEATH、カ……ッ』」
なんでカタコトなんですかねラーフィアちゃんっ!
『です』が『DEATH』に聞こえるのは気のせいなんかじゃないデスよー!
「よくわかったでしょ、ラーフィアっ!
ヒカリと私は、もうとっくに一線を超えちゃったのよっ!
魔王城のプールより深い仲なのよおーっほっほっほっっ!」
「えー!?」
言い方っ!
言い方がおかしいよ、シフォンちゃんっ!
白線なら何度も越えたけど、一線なんて
プールより深い仲って、それって意外と浅いんじゃないのかなっ?
「あっ。イイコト思いついちゃったっ!
よぉーく聞きなさい、ラーフィアっ!
ヒカリのお腹の中には、新しい命が!
私との間に出来た赤ちゃんがいるのよおーっほっほっほっほっ!
これでどうかしらっ!?」
なぬっっ!
またワケわからんコトぶっこんできやがりましたよ、シフォンちゃん!
オトコが妊娠するワケないだろっ!
イイコト思いついたって言ってる時点でウソがバレバレじゃないかっ!
どうかしらって、ナニがどうなのかしらっ!?
っていうか、妊娠しちゃうようなコトなんてしてねーですようおおおっ!
「『なんっ……DEATHっ……てっ!?』」
なななんとっ!?
ラーフィアちゃんたら、真に受けちゃった!?
「ちょっ! 落ち着いてラーフィアちゃんっ!
ナニもしてないからっ!?
ボクはまだキレイな身体のままだからねっっ?」
まっさらな未使用品!
現役バリバリの童貞男の
ラーフィアちゃんたら怒り心頭ってカンジで、ツヤサラ銀髪が逆立ってゆらゆらとうごめいちゃってますよー!
シフォンちゃんはイジワルい顔をして、ニヤニヤしながらラーフィアちゃんの反応を楽しんじゃってますよっ!
って、明らかに確信犯だろっ!
「『ワイワイと楽しそうでなによりじゃのう、シフォンよ。ふう、やれやれじゃ』」
モニターの向こうから俺達のやり取りを黙って見てた大魔王サマは、ちょっと呆れたカンジですよ。
そりゃそうですよねっ。
魔王が勇者にやられちゃったのに、一緒にアイドル活動しちゃって、ファミレスでワチャワチャしちゃってるんですからねっ。
前代未聞の魔王なんじゃないですかねっ。
大魔王サマの声を聞いて、はっと我に返りましたよ、シフォンちゃん。
「えっ! あの、これはっ。あ、いえっ。
私が魔王でいられるのは、全て大魔王様のおかげサマです! 感謝しています!
ですからっ! 更生施設送りだけは許して下さいっ!」
「『んー。ダメじゃ。シフォンには、ちょいと甘い顔をし過ぎたみたいじゃからのう。
魔王失格じゃ。ハイ、決定。
ということで。あー、ほいっ』」
モニターの中の大魔王サマが、ひゅっと腕を振るとなんとっ!
びゅわわっ!と音を立ててシフォンちゃんの足元に落とし穴が現れたっ!
「きゃあっ!?」
だがしかしっ!
ばささあっ!と『漆黒の翼』を出現させて、一瞬で回避しましたよシフォンちゃん!
と、思いきやですよ!
「『そうはイカのタマキンじゃぞ、シフォンよ』」
イカのタマキン? ってナニ?
と思った瞬間!
なななんとっ!
「あっっ!? 翼がっ!? 私の翼がっ!」
ばっさばっさと羽ばたいてたシフォンちゃんの『漆黒の翼』が、一枚また一枚と、あっという間に消えていくじゃないですかっ!
こここれはっ!
ラーフィアちゃんの時と全く同じですよっ!
「えっ!ウソっ!? いやあああああああっ!?」
「シフォンちゃんっ!」
翼を失って落とし穴に吸い込まれるように落下!
咄嗟に駆け寄る俺だけど、ひゅわっ!と一瞬で穴が閉じちゃった!
「シフォン……っ!」
ついさっきまで言い争ってたのに、心配そうな顔をするラーフィアちゃんですよ。
なんてったって、ラーフィアちゃん達も大魔王サマに落とされちゃってますからねっ。
それにしても、有無を言わさず落とし穴とは、半分バグってるっぽいのに無慈悲ですよ、大魔王サマっ!
いきなりシフォンちゃんがいなくなっちゃって、黙りこくっちゃう俺達ですよ。
「……更生施設ならば身の安全は確保される。だから心配するな、ヒカちくりんっ」
「そうですよぉ、ヒカリ様ぁ。もしかするとぉ、リアちゃん達みたいに女神にジョブチェンジするかもしれないですから、ダイジョブですよぉ?」
レイルさんとフェイリアちゃんは、心配いらないとは言うものの。
実は。
心配というよりは、ちょっと安心してるのですよ。
なんてったって、アイドル活動しなくて済むんですからねっ!
でもですよ。
前にラーフィアちゃん達が落とし穴に落とされちゃった時と同じくらいに、胸の奥が苦しいのは、なんでかな……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます