まだまだ続く?俺の物語!

アイドルステージ at 魔王城! 本番30分前!

 あれからそれから一ヶ月。


 ポプラールさんの声の元は、フィルフィーとペリメール様が無事にお届けいたしましたですよ。

 こんがり日焼けしてたフィルフィーは、すっかり元の美肌に戻りましたですよ。

 俺とペリメール様、あとフィルフィーのニギやかましい三人暮らしが再開しましたですよ。


 でもですよ。


 新婚さんのイチャコラ生活に男のが混じってるのは肩身が狭いのですようおおおっ!


 そんでもって。


 ここは魔王城。

 魔王城の中のメイクルームですよ。


「ちょっとヒカリっ!

 アタマのリボンが曲がってるわよっ!

 アイドルは見映えが大事なんだから、ちゃんとしてないとお客様に失礼でしょっ!」


「あっ。ハーイ。リョーカイデース」


 俺を叱責するのはシフォンちゃんですよ。

 ライブを観に来てくれるお客様への心配りが出来る、お客様思いの魔王サマですよー。


「アイドルデビューできるのは業界だけじゃ無い、って教えてくれたのはヒカリなんだからねっ!

 男のなら、自分の言ったコトには責任持ちなさいよねっ!」


 むぐぐ。

 そうなんです。



『魔王なんだから、最初に魔王城でアイドルデビューして、アイドル魔王をみんなに知ってもらえばいいんじゃないのかなっ?』


 なんつったのは確かに俺ですよ。


『あ。それ採用ね』


 って、さらっとけたのはシフォンちゃんですよ。



 余計なコト言わなきゃよかったと思っても後の祭りってヤツですよー。

 口は災いの元ってヤツですようおおおっ!



「急ごしらえのユニットだけど、やるからには全力全開!

 完璧は無理でも、少しのミスくらいは互いにカバーしていくわよおっっ!」


 やる気に満ち溢れてますよ、シフォンちゃん。

 俺と闘った時より気合い入りまくりじゃないデスカっ。


「あっ、アツいねっ。シフォンちゃんっ」


「コンセプトは『全てをブチ壊す』アイドルユニット『シフォヒカ』の初ステージだもの!! 当たり前でしょっ!

 ブリバリに気合い入りまくってるわよおっ!」


 ぶりばり? ってナニ?

 ロリ声なもんだから何を言ってもカワイク聞こえちゃうんだけど、ステージに対する本気が伝わってきますよー!


 と、コンコンっとノック音。


「失礼しまーす」


 カチャリとドアが開き、入って来たのはラーフィアちゃん!

 そらの青色を基調としたワンピースタイプの衣装に着替え終えて、俺に見せに来てくれましたですよ。


「どうどう? ヒカリちゃんっ。ヘンじゃないかなあ?」


 ツヤサラ銀髪とそら色ワンピの相性は最高!

 ミニスカートからスラリと伸びる長いおみ足が健康的でありつつ、白ニーハイからの絶対領域が完璧でパーフェクツ!

 意味がダダ被っちゃうくらいにパーフェクツですよー!


「スッゴくカワイイよ、ラーフィアちゃんっ! めちゃめちゃ似合ってる!」


「えへへっ♪ ウレシイなっ。でもやっぱりヒカリちゃんにはかなわないなあ♪」


 ニコニコ笑顔で俺を褒めてくれるKAWAEEEEラーフィアちゃんですがっ。

 なんだか複雑な気持ちですよ、何故ならばっ!


 男のの俺がアイドル衣装を着ちゃってるんですものー!


 衣装デザインはシフォンちゃんですよ。

 俺のは白色。

 相方のシフォンちゃんは黒色ですよ。


 勇者と魔王ってコトでこんな配色になったのです!

 

 アタマのでっかいリボンはフリル付き。

 ノースリーブのブラウスの胸元にはヒラヒラリボン。

 肩口にはふりふりフリルでアクセントを。

 長い手袋は肘上までありますよ。

 手の甲にもリボンがあしらわれてますですよ。


 おパンツが見えそうで見えない、ふわっとしたフレアスカートとニーハイにもカワイイフリル付きリボンですよ。

 どんだけフリルとリボン好きなんですかね、シフォンちゃんっ。


「こんなにもフリルとリボンが似合うなんて、ちょっと反則だよう、ヒカリちゃんっ♡」


「私は初めて見た時からフリルとリボンが似合いそうって思ってたけどねっ。やっぱり私の目に狂いは無かったわねっ」


 そういえば初対面の時から『私とアイドルユニット組みなさい』って言ってましたよ、シフォンちゃん。

 アイドルにかける情熱は並々ならぬモノがあるみたいですよー!



「いつまでそのヘンなぐるぐるメガネかけてるのよ、ヒカリっ。外しなさいよっ」


 と、シフォンちゃんが俺のぐるぐるメガネを、しゅぱっと外した瞬間ですよ!


「はわわわわわあああっ!?」


 どたーん!と後ろにひっくり返っちゃいましたよ、ラーフィアちゃん!

 同時にスカイブルーのおパンツが丸見えですよー!

 これはツイてるっ!

 イヤ違うっ!


「だっ、大丈夫っ?ラーフィアちゃんっ」


「ナニやってんのよ、ラーフィアっ?」


「ヒカっ、ヒカリちゃんのうるうるキラキラの目には魔力があるのよっ!

 なんの前触れもナシに直視したらこうなっちゃうのよっ」


「はあーん? 魔力ぅ?

 ひっくり返るほどのコトなのかしらあ?」

 

 と、シフォンちゃんが俺の顔を覗き込んだ瞬間ですよ!


「はわわわわわあああっ!?」


 これまた派手に、どたーん!と後ろにひっくり返ちゃいましたよ、シフォンちゃん!

 青と白のシマシマおパンツが丸見えですよー!

 これはツイてるっ!

 イヤ違うっ!


 なんなんですかね、この茶番劇。

 

「ちょっ、二人とも大丈夫っ?」


「……くっ。そう言えば、ぐるぐるメガネを外したヒカリの顔って初めて見るわねっ。とんでもない破壊力の瞳力メヂカラじゃないのよっ」


「だから言ったでしょっ。ヒカリちゃんのには魔力があるのよっ」


「なんであなたがドヤ顔するのよ、ラーフィアっ」


「私はヒカリちゃんのカノジョなの! 自慢してナニが悪いのよっ」


「は? カノジョ? ヒカリが言ってたカノジョってラーフィアのコトだったの?」


 なななんとっ。

 今、このタイミングで言っちゃったよ、ラーフィアちゃん!

 シフォンちゃんは『アイドルは清廉潔白セイレンケッパクが当たり前』とか言ってたから、お説教とかされるのかと思いきや!

 

「ふーん、そうなんだー」


 無関心!

 思いっきり肩透かしですよ、シフォンちゃん!


「で? どこまでヤったのっ?」


 うお! 無関心かと思いきや、なんかぶっこんできやがりましたよシフォンちゃん!


「そんなのあなたにカンケーないでしょっ!」

 

「ヒカリは私の相方なのよっ! 相方の事を知っておくのは当然の流れでしょーがっ」


 出ましたよ、シフォンちゃんお得意のヘリクツですよー!

 そのおかしな流れはいったい何処から流れてくるんデスカネっ?

 そんなの答える必要は無いですよっ。

 と、思いきや!


「まだキスしかしてないわよっ。これでいいんでしょっ! なんか文句あるっ?」


 答えちゃったよラーフィアちゃん!


「なんだ、キスしかしてないの? んで?

 どこでしたの? 何回したの?

 どんなカンジで、どんなシチュエーションだったのか教えなさいよっっ!」


 うおお、なんかグイグイ突っ込んできますよシフォンちゃん!

 そんなの答える必要は無いですよっ!

 と思いきや!


「それはまた別の機会に教えてあげるわよっ」


 教えるのっ!?

 ガールズトークする気まんまんですよ、ラーフィアちゃん!

 この二人って、なんだかんだ言い争いつつも仲良いみたいですよー!


           ◇


 さかのぼるコト三週間前。


 なんやかんやとありながら、ラーフィアちゃん達は俺とシフォンちゃんのユニット『シフォヒカ』のバックダンサーとして、一緒にステージに立つコトになったのですよ。


 三人の新米女神の中でイチバン乗り気じゃ無かったのはレイルさん。

 何故、センパイ女神のフィルフィーとペリメール様に迷惑をかけた魔王に協力しなくてはならないのか、と。

 だがしかし。

 グダるレイルさんを説得しちゃったのは、なんとペリメール様ですよ。


**


「これもひとつの経験! そしてチャンスなのですわっ」


「えっ? チャンス、ですかっ?」


「気になるアイツのハートをズキュンと撃ち抜いちゃう絶好の機会!なのですわっ!」


「ででででもっ、あの、ペリメール様っ?

 スズキ君からはヨメ認定を頂いているのですがっっ?」


「それだけではノンノン!ですわっっ!

 さらなる追い討ちをかけるには、強烈なインパクトが必要不可欠っ!なのですわっっ」


「インパクト、ですかっ?」


「輝くステージで舞い踊るあなたの姿を観て、惚れなおすコト必至!なのですわあっっ!」


「あの、でもっ、主役はヒカちくりんと魔王シフォンですからっ。私のコトなんて目に入らないのではないでしょうかっ?」


「ご心配には及びません!ですわっ!

 当日はあなたしか見えないように、彼に『恋は盲目』の催眠術をかけておきますからっ!ですわあっ!」


**


 なんつって、結婚してからアグレッシブになっちゃいましたよ、ペリメール様。

 これは気のせいなんかじゃナイですよっ。

 恋愛の女神から結婚の女神にシフトしたコトで、なんかこう、グイグイいっちゃってますよー!

 世話焼き好きな結婚案内人みたいな、まあ、そんなカンジですよ!

 でも、催眠術ってアリなんデスカネっっ。



 ペリメール様の説得が効いて(?)レイルさんもバックダンサーに加入決定ですよ。

 

 そこから始まった猛特訓!

 バイトしながらレッスン漬けの日々が始まったのですよー!


 ダンスレッスン、ボーカルレッスン、演技指導、呼吸法から食事のマナーまで、みっちりと。

 シフォンちゃんに引きずり回される毎日でしたようおおおっ!



 アイドル衣装をデザインしたのはシフォンちゃんだけど、造ってくれたのはペリメール様ですよ。


「お二人ともキュートですわっ! ラヴリーですわあっ!」


 なんつって、ノリノリで。

 フィルフィーの声を奪った相手なのに衣装を造ってあげちゃうなんて、なんて寛大なココロをお持ちなんですかねっ。


 そんでもって、それを着こなしちゃってるのですよ男のっ!


           ◇


「へえ。似合うじゃないか、ヒカちくりんっ」

「わあ♡とってもカワイイですよう、ヒカリ様ぁ♡」


 俺を褒めてくれるのは、レイルさんとフェイリアちゃん。

 二人とも、ラーフィアちゃんと同じデザインのワンピースがめっちゃ似合ってます!

 褒めてくれるのは嬉しいけど、素直に喜べないのがなんともかんともっっ。

 


「レイルもフェイリアもバッチリだよっ。私達も三人でユニット組んじゃおうかっ? なーんて♪」


「アハー♪ いいですねえ♪」


「私は今回限りですよっ、ラーフィア様っ」


「スズキ君も観るみたいだしぃ、レイルちゃんも気合い入ってるんだよねぇ♪」


「えっ!? いや、そんなコトはっっ」


 フェイリアちゃんのツッコミに、ぼしゅんっ!と一瞬で真っ赤になっちゃいましたよ、レイルさん!

 スズキさんとのお付き合いは順調なようで、ヨカッタヨカッタですよ!

 スズキさんは、これでもう俺にウザ絡みしないでくれるとありがたいんですけどねっ。



「よおーく聞きなさいっ! あなた達っ!」


 わいわいキャアキャアとはしゃぐ三人女神に一喝ですよ、シフォンちゃん。


「この日の為に、ダンスレッスン、ボーカルレッスン、演技指導、呼吸法から食事のマナーまで、みっちりびっちりやってきたんだからねっ!

 あなた達もバックダンサーだからって気を緩めるんじゃないわよっ!」


「言われなくてもわかってるわよ、そんなコトっ。私のヒカリちゃんの晴れ舞台なんだものっ!

 シフォンのバックダンサーなんて納得いかないけど、ヒカリちゃんの為ならえんやこらなんだからねっ!」


 アツいっ! アツいよラーフィアちゃんっ!

 でも、えんやこらってナニ?

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