アイドルへの扉が開く時!

  魔王シフォンとの闘いが終わり、フィルフィーとポプラールさんの声の元を取り戻してひと安心、と思いきやっ!


「美少女魔王と男の勇者のアイドルユニット!

 これはきっとウケるわよおっ!」


「えっ!? なんでそうなるのっ!?」


「男のなら責任取りなさいよ、責任をっ!」


「せっ、責任ってっ?」


「あなたは私の夢を壊したのよ、ヒカリっ!

 歌って踊れるアイドル魔王になりたいという美少女の夢をっ!

 その責任はどう取るつもりなのかって訊いてんのよっ!」


「えー!?」


 またまたワケわからんコト言い出しましたよ、魔王シフォン!

 闘いの原因作ったのは自分なのに、責任取れってどういうコトデスカネっ!?

 自分で美少女って言っちゃってますよ。

 まあ、カワイイですけどねっ。


「そうは言うけどっ。

 自分の夢を叶える為なら、他人を犠牲にしていいなんて考えは間違ってると思うよっ?

 ボクはっ!

 勇者としての使命を成し遂げただけなのデス!」


 その証がフィルフィーとポプラールさんの声の元!

 金色のタマタマなのですよー!


「勇者の使命だかなんだか知らないけど、私の夢をブチ壊したコトに変わりはナイでしょーがっ!

 あなたが責任取るのは、誰が見たって当然の流れなのよっ!」


 言い切っちゃった!

 その根拠の無い当然の流れは、いったいドコからじょんじょろりんと流れて来るんデスカネっ?

 負けたのにヘリクツばっかりですよ、シフォンちゃん。

 でも、ロリなアニメ声だから迫力もなーんもナイですよっ。

 

「責任取るってナニをすればイイのっ?」


「今までナニを聞いてたのよ、バカタレっ。私の声がカワイイって言うのなら、私とアイドルユニットを組みなさいよっ!」


 またまたバカタレって言われちゃったよ、もう。

 

「えー? ムリだよう」


「やってもみないでムリとか言うんじゃ無いわよ、ヒカリっ!」


 なんだかポジティブですよ魔王シフォン。

 そのシンキングを、もっと別のものに向ければいいんじゃないのかなっ?


「あのっ!

 業界でデビュー出来なくても、魔王なんだから、最初に魔王城でデビューして『アイドル魔王』をみんなに知ってもらえばいいんじゃないのかなっ!?」


「あ。それ採用ね」


 かるっ! 俺の提案をあっさり了承しちゃいましたよ、シフォンちゃんっ。


「魔王城でアイドルなんて発想は無かったわっ。なかなかやるじゃないのよ、ヒカリっ!

 それでこそ私の相方ねっ!」


 なぬっ!

 相方なんて言っちゃってますよっ。

 ここは、はっきりきっぱり断っておかないとっ!


「ボクはっ!

 アイドルにキョーミないし、なる気も無いのです!

 フィルフィーとポプラールさんの声を取り戻したから、ミッションはコンプリートで完了!

 シフォンちゃんとはここでオサラバです!」


 びしっと言っちゃりましたよ、男のっ!

 シフォンちゃんは、ぷうっと頬を膨らませてムクレちゃってますがっ。

 俺はレミィの姿のままだから、ちょっと強気なのはナイショですよ!


「フンっ! ナニよっ!

 もういいわよっ! バーカバーカ!

 じゃあ、私は帰るから、あなたは自力で帰りなさいよねっ。あなたのせいでダンスレッスンには完全に遅刻だわよっ!」


「え!? ここってドコなのっ?

 どうやって帰ればいいのかなっ?」


「さあねっ。どこかその辺の空き地でしょ。あなたも翔んで帰ればいーでしょーがっ」


 えー!? ドコに居るかもわからないっ?

 翔んで帰れとは言いうけど、レミィは翔べる設定じゃないっ!

 お着替えガチャの変身解いたら、なおさらですよ!


 木も草もなーんも無い、さらっさらの更地に取り残されちゃったら、からっからに干からびちゃいますよ、男のっ!


「ちょっ! シフォンちゃんっ!?

 最初にここに来た時みたいに、転移魔法っぽく帰れないのっ?」


「はあーん? 魔力切れよ、魔力切れっ!

 ナニよ、なんか文句あんのっ!?」


 イヤ、別に文句はナイけどもっ。

 魔力切れってマジですか。


 そっかー。そこまで必死だったのかー。

 てコトは、俺の妄想が生み出した『レミィ』の強さは魔王シフォンを凌駕したってコトですかっっ!


 ふむふむ。

 なかなかやるじゃないの、俺の妄想力っ!


「じゃあねっ、ヒカリっ」


 なぬっっ!

 ばささっ!と漆黒の翼を出現させて翔び去ろうとしやがるですよ、シフォンちゃんっ!

 魔力切れじゃなかったのかっ!?


「はあああっ! ちょいとお待ちをぉっ!」


 翔び立つ直前、必死にジャンプしてギリギリでなんとか、ぱし!っと細い足首を掴むと、なんとっ!


 べたーん!と、マンガみたいに前のめりに落っこちちゃいましたよ、シフォンちゃんっ!


 スカートがめくれて、おパンツ丸見え!

 白と青のシマシマですか、そーですか。

 なかなかグッドな萌えチョイスっ!

 ぷりっとしたお尻との相性バツグンですよ!


 イヤ違うっ!


 どさくさ紛れに女の子魔王のおパンツとプリケツを観賞してる場合ではナイですよ!


「イっタイわね、ナニすんのよっっ!」


 落っこちた時にぶつけたのか、マンガみたいに鼻の頭が赤くなっちゃってますよ、シフォンちゃん!


「あにょっ!ボクも連れってって下さいましっ!」


 放置プレイはキライじゃないコトもナイけど、こんな場所で置き去りプレイは無理ですよー!


「はあーん? ナニよあなた、翔べないのっ?」


「えっとっ、ハイ……そうなんですっ」


 レミィは攻撃力重視にしちゃったから、そんな設定はナイのですよっ。

 言わないけど!

 

「……ふーん、へーえ、そうなんだー♪」


 なんか良からぬ悪だくみを思い付いちゃったのか、ニヤリと悪い微笑みですよ、シフォンちゃん!

 

「それじゃあ!

 連れて帰って欲しければ、私とアイドルユニットを組みなさいっ! それが条件よっ!」


「えー!?」


 やっぱりワケわからんコト言い出したっ!

 なーんか余裕ぶっこいてニタニタと笑ってやがりますよ、シフォンちゃんっ。


 アイドルなんてやりたくねーですよ、男のっ!

 俺も翔べたら問題無いのにっっ。

 はっ!

 お着替えガチャは、あと2回残ってる!


 だがしかしっ!

 翼が生えたキャラクターなんて、そうそう思い浮かばないぞっ!

 ラミィもルレ美も、ジャンプは出来ても翔べるキャラじゃ無かったからなー……


 ぐぬぬぬっ。

 今はまだ『レミィ』の姿だけど、ヘタにお着替えガチャって、ろくでもない衣装が出たらシフォンちゃんにボコられてしまうのではっ!?


 もし失敗して、ここでポンコツ男のに戻っちゃったら手も足も出ませんよっ。

 ズタボロにやられちゃうのが目に見えてる!


 レミィの姿のままなら、再び戦闘って流れにはならないハズですがっ。

 ぬおおお、選択肢が無さすぎるっ!

 こうなりゃ仕方がねーですよっ。


「さあどうするのっ!? 置き去りにされて干からびるのか、私とアイドルユニット組むのか選びなさいっ!」


「わかりましたよ、やりますよっ!

 こんな場所に置き去りにされちゃったら、死んじゃいマスからねっ」


「やったっ♪ そうこなくっちゃ!

 じゃあ、指切りしましょーかっ♪」


 にっこにこの笑顔で小指を差し出してきましたよ、シフォンちゃん。

 指切りですか、そーですか。

 なかなかカワイイ所もあるじゃないですか。


 こんな何も無い場所で死にたくねーですからねっ。

 約束の証しの指切りならウェルカムです!


 と、小指を出したその瞬間!


「じゃあ、ゆーびきーり♪ ほいっ♪」


 くきっ。と!


「あ゛にゃあああっ!?」


 俺の小指をひっつかんで、曲がっちゃイケナイ方に曲げやがりましたよシフォンちゃんっ!

 コレ、指切りじゃなくて指折りだろっっ!

 いって!いってーですよー!


 ナニしてくれるんじゃいっ!

 骨折とか脱臼とかせずに済んだけどもっ!

 指切りで釣っといてダメージ与えるなんて、とんだワルガキ魔王ですよっっ!


「あーはははははっ! あーはははははっ! 

 面白ーい! ヒカリってやっぱ面白いわねー!」


 痛がる俺を見て大爆笑してやがりますよシフォンちゃん。

 うぬぬ、ナニが面白いんじゃいっ!

 おにょれ、見てなさいよっ!

 ゼッタイ必ず、しっぺ返しを食らわせてあげるんだからねっ!


「まっ、笑わせてもらったコトだし、連れてってあげるわよっ。言っとくけど、仕方なく!

 仕方なくなんだからねっ!」


 そんなにも『仕方なく』を強調しなくていいですよ、まったくもー。

 

「翼があるから、おんぶは出来ないわね……しょーがないわねー。わたしの腰にしがみついてなさいよっ」


「えっ? あっ、リョーカイでアリマス!」


 おほう♪ マジですかっ。

 生意気で口悪くて性格も悪いけど、美少女ワルガキ魔王のお腰にしがみついてもいいんデスカっっ!

 ムハー!

 ではでは、それでは遠慮無く!

 しっかとしがみつく俺ですよ!


「準備はいいわねっ?

 それじゃあ、いくわよおっ! はっ!」


 かけ声とともにシフォンちゃんがばささっ!と羽ばたくと、ぶわっ!と一瞬で急上昇!

 漆黒の翼は八枚もあるから、俺くらいの体重なら簡単に運べるみたいですよっ。

 さっき落っこちたのは油断してたからかな?


「ぶっ飛ばすから、しっかり掴まってなさいよー!」


「ハイっ! リョーカイでアリマスっ!」


 言われなくても、しっかりぴっとり掴まってますよ!

 落っこちたくねーですからねっ!


 て言うかね。

 お腰にしがみついた瞬間から思ってたんだけどっ。

 シフォンちゃんの腰回りったら、スベスベぷにぷにの抱き心地ですよ!

 そんでもって、やらかーいお尻の感触がっっ!


 はっ!

 今こそ好機と書いてチャンス!

 俺の小指の仇を討つ時ですよ!

 シフォンちゃんの、スベスベでぷにぷにのお腰に頬擦り攻撃を敢行です!

 決してセクハラなんかじゃナイですよ!

 これは報復なのでアリマスっ!

 俺のカワイイ小指にダメージを与えてくれちゃった事へのね!

 ニャハー!


 すーりすりっ♪ すーりすりっ♪


 ココロの中でリズムを取って、バレないように頬擦りですよ!

 すると、なんとっ!


「ちょっとっ! ナニしてんのよヘンタイっ!」


 うお! イッパツでバレちゃったっ!


「ちょっ! あぶっ! あぶにゃいからっ!

 落ちちゃうからあっ!」


 お腰に頬擦り攻撃を食らって、右に左にぎゅわんぎゅわんと急旋回しやがるですよ、シフォンちゃんっ!

 必死にしがみつかないと振り落とされちゃいますようごおおおっ!


「どさくさ紛れに頬擦りなんてしてんじゃないわよ、このヘンタイぐるぐるクソメガネがっ!

 このっ!ヘンタイっぐるぐるっクソメガネがっっ!」


 なんで同じ罵声を二度浴びせるんですかねっ、女王サマの素質アリですよシフォンちゃんっ!

 でも、何て言うか、こう、美少女ワルガキ魔王のお腰に密着しながら罵声を浴びせられるのって、新しいセカイの扉がオープンザドア的なっ!


「なんでニヤニヤしてんのよ気持ちワルいっ! ホントに振り落とすわよっっ!」


「えー? ニヤニヤなんてしてないようっ!?」


 イヤ、まあ、ちょっとはニヤけてたかも知れないけどもっ!

 だってだって、スベスベのぷにぷにで柔らかいんですものー!

 どのくらいスベスベでぷにぷにかって言うと、焼き立てのふわふわパンとか、つきたてのお餅にたっぷり粉をまぶしたみたいに、ぷにょふわで柔らかくって、頬擦り心地イイんですものー!


 こんなチャンスはなかなかナイですからねっ!

 たっぷり堪能したいじゃないデスカっっ!

 

「また同じコトしたら本気で振り落とすからねっっ!」


「あっ。ハーイ。リョーカイデース」


 うむむ、チョーシに乗りすぎちゃったかなっ?

 シフォンちゃんたら、けっこうマジでご立腹!

 俺もやりすぎちゃったかなー?

 ここはもう、おとなしく、みっちりピッタリしがみついておくですよー!

 ニャハー!


「アイドルになるなら、清廉潔白は当たり前なのよっ! ヒカリはもう私の相方なんだから、エロい煩悩なんてゼッタイのゼッタイに許さないんだからねっっ!」


「えー!?」


 エロス禁止なんて、いったいどの時代のアイドル思想なんデスカネ、シフォンちゃんっ!


 て言うか、いつの間にか相方認定!

 帰ったら、女の子魔王とのアイドル活動が待ってるってコトですかっっ!


 これからどうなるんだ男のっっ!

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