決着! ヒカリvsシフォン!
魔王シフォンの魔法『
すべての音が一瞬、途切れて、からのっ!
カッッッ!!
ズドオオオオオンッッ!!
「きゃあああああっっ!?」
「う゛にゃああああっ!?」
ゴワアアアアアアアアアッッ!
凄まじい爆炎と爆風!
竜巻にも近いトルネード!
竜巻とトルネードって同じ意味だけど、まあ、そんなカンジのトルネード!
ズゴゴゴゴゴゴォッッ!
グオオオオオオッッ!!
アンギャアアアアッッ!!
大気は唸り、大地は地響きをあげ、天は裂け、海の水は干上がっちゃう!
みたいなー!
ここは野原だから海は無いんだけど、まあそんなカンジの、すんごいエネルギー波ですよー!
天変地異もびっくりの超絶な破壊力!
レミィの必殺技と魔王シフォンの攻撃魔法のぶつかり合いとせめぎ合いデスようおおー!!
SUGEEEE! YABEEEE!
「うにゃあああああっっ!」
「きゃああああっ!?」
なんとか耐えてる俺に対して!
ズタボロのボロ雑巾みたいに、ごろごろごろごろこんころりんっと、吹っ飛んで転がってっちゃいましたよ魔王シフォンっ!
こここれはっ!
いくらなんでも強烈が過ぎたっぽいですよ!
ぶっぱなした
吹き荒れてた暴風と鳴り響いてた爆音が、ひゅううーんっと急速に静かになっていくですよ。
風と土ケムリが治まると。
元々が野原だった決戦の舞台は、さらに
見渡す限り、まっさらのさらっさらですよー!
スベスベの荒野!
地平線がくっきりはっきり見えちゃってますよ!
さっきのがウソみたいな沈黙と静寂の世界!
ぜえぜえはあはあと肩で息をする
離れた場所には、ズタボロになっちゃった魔王シフォンが転がってますですよ。
ボロい雑巾とか、ボロいモップとか、ボロい、まあ、そんなカンジでズタボロですよー!
「どどどっ、どーですか、魔王シフォンっ!
素直に降参する事をオススメしますよっ!」
しーん。
むむ、返事がないぞ?
ピクリとも動かずに転がったままですよ。
「えっとっ……ちょいと魔王シフォンっ!?」
しーん。
え。
まさか、死………イヤイヤそんなっ。
あの口悪くて性格も悪い魔王シフォンが簡単にくたばるとは思えないっ。
これは死んだフリの可能性が大きい!
うかつに近付いて反撃されたらたまったもんじゃないデスヨっ。
ここはいっちょ、トドメをさしておくべきなのでは!
だがしかしっ!
魔王とは言え、ズタボロになっちゃった女の子をさらに痛めつけるなんてっっ!
でも、みんなのコトを思うと、徹底的に凝らしめちゃう方がいいのかなー。
イヤ、でもなー。
うぬぬ、どうしよう……
と、ココロの中で葛藤してたその時ですよ。
「……う……っ」
あっ。動いたっ。
とりあえず生きてましたか、そーですか。
なんか、ほっ。
「あのっ……大丈夫っ?」
「……うっ、うっさいわねっ!大丈夫じゃ、ない、わよっ、ぐるぐるクソメガネっ!」
ズタボロなのにまだ強がってますよ。筋金入りの負けず嫌いだなー。
「まだ……っ、動ける、ん、だから、ねっ!」
うつ伏せのままお尻を上下させて前進する姿は、シャクトリムシみたいでなんかカワイイですよ。
だがしかし。
少し進んだだけでピタリと止まり。
ごろりと仰向けになって大の字ですよ。
「……う」
う?
「う゛えっっ……」
どしたのかなっ?
なんかえずいちゃってるけど、吐きそうなのかなっ?
と、思った瞬間!
「う゛え゛ええええええええええんっっっ!
う゛わ゛あああああああああんっっっ!」
号泣!
泣いちゃったよ魔王シフォン!
あらあら、鼻水まで出ちゃってますよー!
「えぐっ、わっ、わだしはっ、ひぐっ! あいどるになりっ、うぐっ、たがっただけだの゛に゛っっ!ぐすっ!なんでっ、そんな゛っ、えぐぐっ、じゃますりゅの゛よお゛っっ!」
え、なんて?
あのですね。
泣きながらグズグズに喋るもんだから、ナニ言ってるのかさっぱりわかりません!
「わだし、はっ、ひぐっ、あいどる、にっ、ぐすすっ、なりだがったっ、だけだも゛んっ!」
アイドルに、って。うむむ。
「えっとっ、他人の声を奪ってアイドルになっても、もしファンがそれを知っちゃったらどう思われるかなー、とか考えたコトはないんデスカっ?」
「だってっ!み゛んな゛っ、わだしの、ひぐっ! もとのこえ゛はっ、ヘンだって、えぐぐっ、いうんだも゛んっ!」
よく聞き取れないけど、自分の声が気に入らない、ってコトかな?
元の声がどんなかわかんないけど、魔王シフォンはそれをコンプレックスに感じてるってコトですか。
うーん。そーですか。
俺のちっちゃい『コヒカリ君』と同じかな?
イヤイヤ、似て非なる悩みってヤツですかね。下ネタはさすがにナシですっ。
「あのですね、魔王シフォンっ。
誰だってコンプレックスのひとつやふたつや、みっつやよっつくらい、あると思いマスよっ?」
「ああーん? 誰だってって誰よっ。言ってみなさいよ、ぐるぐるクソメガネっ」
うお、泣き止んだっ!?
立ち直り早いな!
瞬時にいつもの毒舌に戻っちゃいましたよ、魔王シフォン!
気持ちの切り替え早すぎだろっ。
むくりと上半身を起こし、半目になってフキゲン丸出し!
カワイイお顔は涙とハナ水でデロデロですよ!
けど、もう戦う気力は失せてるっぽいかな?
「たっ、例えばデスネっ。
ラーフィアちゃんは、えっとっ、その、
「アレはちょっとどころじゃないでしょーが。ペタン娘ラーフィアの事なんてどーだっていいのよっ。他にはっ?」
「えっ?」
まだ訊きますかっ。おかわり欲しがりますよ、魔王シフォンっ。
「えっとっ。フィルフィーは時々、白目むいて寝てる時とかありマスよっ?」
「ナニそれ。そんなのコンプレックスって言わないでしょっ。寝顔が面白いなんて、ただのネタにしかなんないわよっ。他にはっ!?」
えー!? まだ言わなきゃいけないのかっ?
んーむむむっ。
「えっとっ、ペリメール様は、その、オパイが重くって、しょっちゅう肩が凝るみたいデスヨっ?」
「そんなの、ただの巨乳の悩みでしょーがっ。あなただって、元の姿は男の
なんなのっ? ヘンタイなのっ?」
「イヤ、ヘンタイジャナイデスヨっ!?」
完全には否定出来ないのが、なんともかんともっ。
まあ、男なのに、オパイがあるのは俺も不思議なんですけどねっ。
やっぱ男の
「もう終わりなのっ?他にはないワケっ!?」
えー?
ずいぶん欲しがりですよ、魔王シフォン。めんどくさいなー、もう。
そう言われても、俺の知り合いって少ないし。
レイルさんとフェイリアちゃんは知り合って間もないから、詳しいコトなんて知らないし。
ここはやっぱり『コヒカリ君』ネタで、って、イヤ違うっ!
下ネタで慰めようとしたってナニもいいコトなんてナイですよ!
「……あのですねっ。ボクは、今でこそこうやって戦えるようになったけど、つい最近までは、ザコレベルでへっぽこだったんデスヨっ」
「はーん? 今だってザコレベルでへっぽこでヘタレでポンコツでしょーがっ」
むむっ。
なんか悪口の数が増えちゃってますがっ。
そのザコレベルでへっぽこでヘタレでポンコツにやられたのは、いったいドコのどちら様なんですかねっ。
「ボクはボクなりに頑張ってるんですっ。
ザコレベルのボクが強くなれた理由って、何だかわかりますかっ?」
「はあーん? わかんないわよ、そんなものっ!」
「それはですねっ。
二人の女神、フィルフィーとペリメール様。ずっとお世話になってる二人が結ばれて、やっと幸せになれて。
なのに、魔王シフォンがその幸せを壊しちゃったんですよ?
二人の大切でステキな日を台無しにしちゃったんですよ?」
「……知らないわよ、そんなの……っ」
「ボクは……二人の笑顔が大好きです。二人が幸せそうに笑ってると、ボクまで幸せな気分になっちゃうんです」
まあ、フィルフィーはいらんコトをしでかしちゃうコトも少なく無いけど。
でも。
「ボクの為に色々と頑張ってくれる二人には、ずっと笑顔でいて欲しい。
いつか必ず、恩返しをしたい。
だからボクは、強くなれたんだと思うんです」
魔王シフォンはうなだれて黙ったままですよ。
コンプレックスの話からズレちゃったから、また何か憎まれ口でも言ってくるのかな?
と、思いきや。
「……私の……ま……け、だわ。悔しいけど認めてあげなくもないようなカンジだわよっ! ひっくっ、ぐすんっ」
ややこしい言い方だけど、ポロポロと大粒の涙をこぼしつつ、しゃくりあげながら負けを認めたっぽいですがっ。
もうちょっと素直になれないもんですかね、魔王シフォンっ。
「それじゃあ……フィルフィーとポプラールさんの声を返してくれますねっ?」
「返せって言うんなら返してあげるわよっ」
魔王シフォンが小さな手のひらに、ペペッと吐き出したのは、あめ玉くらいの大きさの金色の玉!
受け取ったそれは、
「そのキンタマ持って、さっさと行きなさいよっ!」
ちょいと魔王シフォンっ!?
17歳の女の子がキンタマなんて言っちゃダメじゃないかなっ!?
て言うかね。
タマタマを吐き出した途端に、めっちゃロリなアニメ声ですよ、魔王シフォン。
元の世界でもいましたよ、ロリ専門みたいな声優さん。いや、それ以上のロリ声かも?
5歳児並みに幼い声ですよ!
「そっちのオレンジ色がかったキンタマがフィルフィーマートのっ!
その透き通ったキンタマがポプラールマートのキンタマよっ!」
おいっ、魔王シフォンっ!
ロリカワイイ声で、キンタマキンタマって連呼しちゃダメですよっ。
「あのっ!魔王シフォンっ!」
「ああんっ!?まだ何か用でもあんのっ!?」
機嫌わるっ!
まあ、負けて悔しいなんとやらかもしれないけどもっ。
強がってもロリ声なもんだから、全然怖く無いですよ。
「あのですねっ。魔王シフォンの声ってカワイイと思いマスよっ?」
「こんなロリ専門声優にしかなれないようなヘンな声のドコがカワイイのよっ。ヘタな慰めなんていらないわよ、ぐるぐるクソメガネっ!」
あれまー。
負けても口の悪さは直りませんよ、魔王シフォン。
「慰めなんかじゃ無いですよっ。
魔王シフォンは見た目も声もカワイイんだから、そこを伸ばせばいいんじゃないのかなって思いマスよ?
その方が、ファンのココロを掴めるような気がしないでもないですっ!」
たぶんね!
「……ずっと思ってたんだけど……なんで敬語なのよ、ぐるぐるクソメガネっ。タメ口でいいわよっ」
「えっ?」
「あと、シフォンって呼んでよっ」
んんー? なんだかとってもしおらしいですよ、魔王シフォン。
でも、いきなり呼び捨てはちょっとねえ。
「じゃあ……シフォンちゃんも、ボクのコト、ヒカリって呼んでくれるかなっ?」
「そんなにどーしてもって言うなら仕方ないわねっ。名前で呼んであげるわよ、ヒカリっ」
いや、別にどーしてもとは言って無いんですけど、いきなり呼び捨てなんデスネっ。
これって、アレかな?
闘いの後に友情が芽生えた的なヤツかなっ?
シフォンちゃんはゆっくりと立ち上がり、何も無い遠くの空をビシっ!と指差して。
「それじゃあ、これから二人で!
あのアイドルの星を目指すわよおっ!」
え。
ナニ言ってるんですかねシフォンちゃん。
あの星って、どの星のコトですかねっ?
真っ昼間なもんだから、星なんて見えないんですけどっ?
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