いざ!決戦の舞台へ!

「ああ、もうっ!

 見てられないぞ、ヒカちくりんっ」


「れっ、レイルさんっ?」

 

 すたたっ!と台の上に登って助け船を出してくれましたよレイルさん!

 めっちゃオトコマエで頼りになるアネゴ肌のキレイなお姉さん!って、まあ、そんなカンジです!


『「皆、静粛に! 我、レイル=フォレスターが、ヒカちくりんに代わってキサマ達に今日の頑張りポイントを告げる!」』


 え。頑張りポイントっ?

 なんですか、それ。

 ていうか、お集まりのみにゃ様を『キサマ達』呼ばわりデスヨっ!


『「頑張りポイントその1!

 敷地内および城内外は常に清潔に! 復唱!」』


「「敷地内および城内外は常に清潔に!」」


『「頑張りポイントその2!

 お客様には親切と丁寧をご提供! 復唱!」』


「「お客様には親切と丁寧をご提供!」」


『「頑張りポイントその3!

 許可局のお客は究極に食うお客! 復唱!」』


「「許可局のお客は究極に食うお客!」」 


『「以上! 城内安全、作業安全!

 お客様に楽しい思い出を!

 それでは皆、良い1日を! 散開!」』


 おおっ!

 ビシっとシメてくれましたよレイルさん!

 凛々しくてカッコ良かったけど、最後のはただの早口言葉デスヨネっ?


 みにゃ様、ざわざわ、ぞろぞろと持ち場に着きに行きますですよ。

 朝集会はこれにて終了ですか、そーですか。

 はー。なんか、どっと疲れちゃいましたよー。



「おっ、お疲れ様ですレイルさんっ。あのっ、助けて頂いて、ありがとうゴザイマスっ」


「私は別に大したことはしていないぞ、ヒカちくりんっ。

 ラーフィア様が朝集会の挨拶をされていた時は、皆、もっと気分が高揚していたように思う。

 美しい銀髪でスタイル抜群の美人さんだからな。お胸は、まあ、その、アレだけど」


 むむ?

 レイルさんもスタイル抜群だけど、アレってなんですかねっ?

 ラーフィアちゃんのささやかなオパイを『アレ?』って思ってたってコトですかねっ?

 怒られちゃいそうだから訊かないけど!


「でも、ホントに助かりましたよー。

 ありがとうゴザイマスっ」


「……えっと、あの、だな。

 スズキ君がサンドイッチをばらまいてしまった時に……私の事を気遣ってくれただろう?」


「えっ? いや、あの時は夢中でっ。つい言葉に出ちゃったんデスヨっ」


「だから、まあ、その、なんだ。今のは礼の代わりだと思ってくれればいい」


 ちょっと照れ臭そうに微笑むレイルさん!

 おおー、やれば出来るじゃないデスカっ。

 ツンツンと冷たい態度より、そのくらい素直でいてくれた方がカワイイですよー!


「だが、それはそれ、これはこれだぞ、ヒカちくりんっ。朝集会も終わった事だし、今度こそ魔王シフォンと闘ってもらうからなっ。

 ズタボロのボロ雑巾になるまで闘い抜いて、勝たねばならんぞっ!」


 ズタボロのボロ雑巾ってマジですか。

 なんかもう、ズタボロが確定しちゃってるみたいでコワイんですけどー!

 

 照れ隠しなのかも知れないけれどっ!

 もっと優しく接してくれてもイインデスヨ、レイルさーん!


           ◇


「まあまあ笑わせてもらったわよ、ぐるぐるクソメガネっ!」


 むむっ!

 悪口と共にどこからともなく、にゅっと現れましたよ、魔王シフォン!


 ここが男のの見せ所っ!

 ビシ!っと言っちゃりますよっ!


「魔王シフォンっ!

 朝集会も終わったコトですのでっ!

 いざ尋常に勝負していただきマスっ!」


「ふんっ!

 しょーがないから闘ってあげるわよ、ぐるぐるクソメガネっ!

 でも、ここじゃ闘えないから移動するわよっ。はっ!」


 魔王シフォンが短い腕を、びゅわっ!と振るとなんとっ!


 一瞬で場所移動!

 集いの広場から、誰もいないだだっぴろい野原に出ちゃいましたよっ!


 ここはいったいドコですかっ?


「アレっ? レイルさんっ?」


 キョドりながら、キョロキョロと周りを見渡しても、レイルさんの姿が見当たらない!

 見渡す限りの平原です!


 魔王と1対1だよ、男のっ!


「魔王対勇者の闘いに女神は要らないでしょー?

 あの三人の中で一番ヤバいのはレイルだったから、いなくなってよかったわっ。

 ついでだから、レイルもオバケ屋敷に送ってやったわよっ」


 えー! マジかっ。

 元魔王のラーフィアちゃんよりレイルさんの方がヤバいって思ってたんデスカっ。


「それじゃあ。まずは、あなたのステータスを見させてもらおうかしらねぇ」


「えっ!? ステータスをっ!?」


「聞いたコトあるでしょ?『ステータスオープン』」


「えっ!?」


 そっ、それはっ!

 ゲームとかアニメとかマンガ好きなら誰もが知る、異世界あるある!

 でも、それって本人が自分のステータスを見る時に使うモノであって、他人のを見るコトって出来ないのではっ!?


 イヤ、待てよっ。

 他人のステータスを暴く的な、そんなスキルもあったようなっ?


「んー? どれどれぇ?」


 魔王シフォンはスキルを発動させて、俺のオパイの辺りをじーっと見ちゃってますよっ。

 なんかこっぱずかしいんですけど!



『妄想勇者 コウダヒカリ Cランク Lv35』


 * ステータス


『攻撃力 あってないようなモノ』

『防御力 しょーもない』

『魔力 けっこうスゴい』

『知力 頑張れ』

『体力 頑張れ』


 * 所有スキル


『お着替えガチャ』

『黒光り』

魔法剣術師マジックソーディアン

 とか



「……なにコレ。

 勇者ランクはCでレベルは35……?

 このショボいステータスでCランクっておかしくない?

 ちなみに私の魔王ランクはAでレベルは60よっ」


「えっ!?」


 なななんとっ!

 ランクAでレベルろくじゅうっ!?

 そんなにレベル差があったのかっ!

 どう考えても不利すぎるじゃナイデスカっっ!

 ズタボロのボロ雑巾になるの確定しちゃってますようごおおおっ!


「……あなた、ホントに勇者なの?

 なに、この『魔力 けっこうスゴい』って。普通は数値で出るものなのに。

 こんなんで私と闘おうなんて、あなた、ナニしにここに来たの?……んー?」


 ――他には……

 スキル『お着替えガチャ』?

 スキルレベルは……『本人の妄想力なので測定不能』!?

 測定不能ってコトは天井知らずの数値……?

 これは侮らない方が良いかも知れないわねっ。面白そうだから言わないけど!

 あとは……『黒光り』って何が光るのかしら?

 性別……男!?

 ウソでしょ!?こんなにカワイイのにっ!?

 あっ。

 男のってヤツなのかしらっ?



「ふーん。ねえ、あなた、オトコなの?」

「えっ? まあ、そうですけどっ」


「なんでそんなカワイイ格好してるの? ヘンタイなの?」

「ヘンタイじゃナイですよっ。イロイロとワケありなだけです!」


「あなた、ドMでしょ」


 うっ。それはまあ、否定できないような気がしないでもないですがっ。

 なんでわかっちゃったんデスカネっ?


「じゃあ、ちょっと見せてみなさいよ」

「えっ!? ナニをデスカっ!?」


 じゃあ、ってなんですかねっ。じゃあって、意味がわからないっ。


「ナニって、ナニに決まってるでしょーがっ! 

 足首までパンツをずり下ろしっ!

 ヒザとヒザをくっつけてモジモジしながらスカートたくしあげてみなさいっつってんのよっ!」


「えー!? イヤですよっっ!」


 オカシナ要求ぶっこんできましたよ魔王シフォン!

 それに、なんかどっかで聞いたコトあるセリフだぞっ!?


「男のって、どんなパンツ穿いてるのかしらぁ?

 パンツだけでも見せてくれたら、見逃してあげてもかまわないけどぉ?」


 なななんとっ!

 逃がしてくれるでありますかっ?

 イヤ違うっ!


 俺はっ!

 フィルフィーとポプラールさんの声を取り戻す為にここに来たのだっ!


 決して、スズキさんとレイルさんの恋の橋渡し的な事をしたりとか、朝集会でおかしな挨拶をしたりとか、魔王シフォンにおパンツを見せに来たワケではナイのです!


「おパンツなんて見せるワケ無いじゃないですかっ!

 ボクはっ! あなたと闘いますっ!」


 ビシ!っと言っちゃりましたよ男のっ!

 ところがですよ!


「さあ、どうするのかしら、妄想勇者っ!

 パンツ見せるの? 見せないのっ?」


 アレっ!?

 聞こえなかったのかな魔王シフォンっ?

 見せないっつったでしょーがっ。


「みっ、見せませんってばっ。いざ尋常に勝負していただきマスっ!」


「はー。なんだ、つまんないなあ。でも、サポートしてくれるハズの女神はいなくなっちゃったわよーう?」


 それは確かにそうですがっ。

 うむむむむ、マズイっ!

 大ピンチですよ男のっ!

 ここはひとつ、戦略的撤退ってヤツをすべきなのかしらっ?


「尻尾を巻いてお逃げなさいな妄想勇者っ。

 逃げるならどうぞご自由にっ!

 たーだーしっ!

 後ろから、ぷちっと踏み潰してあげるけどおーっほっほっほっほっ!」


 なぬっ!?

 見逃してやるとか言っときながら、後ろから踏み潰すとは卑怯なりっ!


 ぐぬぬ、それならばっ!

 玉砕覚悟でブチ当たるしか無いですよー!


 あ、でもですね。玉砕なんてしなくても解決する方法があるのなら、それはそれでヨシなんですけどねっ。

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