再び登場!魔王シフォン!

 レイルさんの告白を受け入れて『嫁』認定までしちゃったスズキさんは上機嫌ですよ。


おらの未来の奥さんは、お料理上手っ!

 こっただ美味いサンドイッチは初めてだべさー!」

「おっ!奥さんってっっ♪」


 真っ赤になって、もじもじしながらうつむいちゃいましたよ、レイルさん!

 こんなカワイイ姿なんて見たことナイですよっ。


おらはフォレタスちゃんのサンドイッチにほれたっすっ!

 なんつってなー!

 ぬはっ!ぬはっ!ぬはははははっ!ウマイっ!」


 なんじゃいそれ。

『フォレタス』と『ほれたっす』をかけるとは。

 サンドイッチは美味いかもしれないけど、ダジャレはウマくもなんともないぞっ!

 あと、いつになったら『フォレスター』って言えるようになるんデスカネっ。


 パクパクもぐもぐとサンドイッチを食べる手が止まりませんよスズキさん!

 このままだと全部食べられてしまうっ。


「ちょっとスズキさんっ!

 ボク達の食べる分も残しておいて下さいよっ」


「そーよっ。私だってレイルのサンドイッチ楽しみにしてたんだからねっ」


「リアちゃんも食べますよー♪ アハー♪」


「……ラーフィア様……フェイリア……ヒカちくりんっ」


 ヒカちくりんっ?

 ちょっとレイルさんっ?

『ヒカリ』と『ちんちくりん』がコラボっちゃってますけど、名前で呼んでくれてもいいんデスヨっ?

 照れ隠しなのかもしれないけれどっ!

 スズキさんに告白した時みたいに、素直になってくれてもいいんデスヨー!



「ねえねえ、ヒカリちゃんっ。サンドイッチってさ、何か魔力でもあるのかなー?」


「えっ? 魔力っ?」


 そう言えば、ラーフィアちゃんもペリメール様のサンドイッチを食べて泣いてた事を思い出しますよ。

 サンドイッチには人の心を動かすナニかがあるみたいですよー!

 まず間違いなく、スズキさんの胃袋をガッチリ掴んじゃいましたからね!

 

「そうだねっ。美味しいサンドイッチには魔法がかかってるのかもねっ」


「ねー♪」


 にっこり笑顔で小首を傾げるラーフィアちゃん!

 ツヤサラ銀髪は今日もツヤサラですよー!

 うおお、KAWAEEEEですよラーフィアちゃあんっ!



           ◇



「と言うワケで、正妻の席は埋まったのっす。許してくんろ、ヒカリよっ!

 愛人のポジションでよければ空いてるけんども、どうだべさっ?」


 ナニ言ってるんじゃいっ。

 どうだべさじゃないだろっ。

 レイルさんを嫁にすると言っておきながら、なんたる不貞をっ!

 そんなのレイルさんが許してくれるワケ無いに決まってるでしょーがっ!


 それよりもナニよりも!


「ダメです!

 ボクにはラーフィアちゃんという大切なカノジョがいるからムリなのですっ!」


 ビシっと言っちゃりましたよ、男のっ!


「ヒカっ!ヒカリちゃんったらっ♪」


 俺の『カノジョ発言』にラーフィアちゃんは照れ照れですよー!

 KAWAEEEEですよラーフィアちゃあんっ!



「え?ああ、そう。だがすかす!それとこれとは話が別だべっす!

 魔王様にあだなすヤカラは、つまみ出さねばならねえのっすー!」


 うむむ、覚えてましたか、そーですか。

 どさくさまぎれで正面突破しようと思ってたのにムリですか。

 なかなかに職務に忠実ですよスズキさん!


 闘わずにこの場をやり過ごすのは無理なのかしらっ。

 と、一瞬ピリついた空気を止めたのはレイルさんですよ。


「あのっ、スズキ君っ!」


「なんだべっすか? おらの未来の正妻よっ」


「えっ? あのっ。正妻って、そんなあっ♪」


 ちょっとレイルさん?

 正妻って呼ばれて、早くもふにゃふにゃなんですけど?


「えっとっ、あのっ、どうしても、ここは通してもらえないですかっ?」


「いくらおらの嫁さんの頼みでも、やすやすと突破されるワケにはいかねえのっす!」


「よっ、嫁さんだなんて、そんなあっ♪

 あっ、いや、そうではなくてですねっ。

 それじゃあ、もうスズキ君にはサンドイッチを作ってあげません! それでもいいんですかっ?」


「えっっっ!? あげな美味いサンドイッチさ、もう作ってくんないだすかっ!? それは大問題だべっす!」


 なんですかね、この茶番劇。

 なーんか、どっかで見たことあるような気がしないでもナイですがっ。


 と、その時ですよ!


 茶番劇を繰り広げる俺達の頭上に、ばっさばっさと黒い影!


 むむむっ!?ナニヤツですかねっ!?



「なーんか騒がしいと思ったら、ペタンラーフィアと愉快な仲間達じゃないのっ」

 

 ドコからともなく現れたのはっ!

 魔王シフォン!

 漆黒の翼をばっさばっさと羽ばたかせてのご登場ですよ!


 ぶわっ!と急降下して、しゅたっ!と華麗に着地すると、なんとっ。

 披露宴会場に現れた時はバタバタして気づかなかったけど、俺よりちっこいじゃないデスカ。


 イヤ、見た目は、ちっこカワイイですけどもっ!

 ラーフィアちゃんは悪口付きの名前呼びで、あとの三人は愉快な仲間呼ばわり!

 初対面の時と同じく悪印象ですよー!

 

「誰がペタン娘よっ!

 これでも少しは大きくなってるんだからねっ!」


「へえ?じゃあ訊くけどさー、何カップなの?

 女神はウソをつけないハズよねえ?」


 女神はウソをつけないってトコロにつけこむなんて、性格サイアクですよ魔王シフォンっ!


「……私はっ……Aカップ、デス」


 別に答える必要なんて無いと思うんだけど、負けず嫌いな性格が出ちゃってますよ、ラーフィアちゃん。

 魔王シフォンから目を逸らすコト無く、正直に言っちゃいましたよっ。


「はあーん? 声がちっちゃくて聞こえないんですけどおー?」


「私はっ……Aカップっ、DEATHっ!」


 うおお、ラーフィアちゃんのツヤサラ銀髪が逆立ってオニのツノみたいになっちゃってますよー!

『です』が『DEATH』に聞こえるのは気のせいなんかじゃ無いデスよー!


「はああーん? ホントにAカップなのおー?

 AA《ダブルエー》くらいじゃないのおー?

 ちっこい私でさえCカップでまだまだ成長中なのに、ペタン娘ラーフィアは、もう成長が止まっちゃったんじゃないのおー? おーっほっほっほっほっ!」


 いちいち余計なコトを言う娘だなっ。

 むむむ、ここはっ!

 大事なカノジョを守るため!


 ずずいっと前に出ますよ、男のっ!


「おはようございますっ!魔王シフォンっ!

 妄想勇者のコウダヒカリですっ!

 本日、ボクはっ! あなたを倒しに来たのでありますっ!」


「ああーん!?」


 いつぞやみたいに眉をつり上げてご立腹ですよ、魔王シフォン!

 だがしかしっ!

 ビビってなんていられませんよー!


「ちょっとスズキっ!

 遊んでないで、さっさと私の部屋を掃除しなさいよっ!

 ついでに私の洗濯物を取り込んでたたんでおきなさいっ!」


「はあっ!了解だべっす、シフォン様ー!」


 あれっ!?

 ちょっと魔王シフォンっ!?

 俺のコトは無視ですかっ。

 またまたほったらかしですよ、男のっ!


「タオルは三つ折り、シャツは色分けしてグラデーションになるように収納するコトっ!

 わかってるわよねっ!」


「はあっ!了解だべっすー!」


 なんか所帯じみてますよ、魔王シフォン!

 スズキさんたら、いいようにコキ使われちゃってますよー!


「そんじゃあ、また後でなっ、フォレタスちゃんっ!おら戦友セフレヒカリよっ!」


 言われてすぐに、ずだだだだっと走り去っちゃいましたが、スズキさん!

 戦友をセフレって言うのはヤメろっ!

 レイルさんが鋭い眼光で俺を睨みつけちゃってるでしょーがっ!


 スズキさんとの戦闘は回避できたけど!

 いきなり登場ですよラスボスがっ!


「ちょっと、そこのズッコケ勇者っ!

 ぼーっとしてんじゃないわよっ!」


 なぬっ!

 ズッコケ勇者だとっ!?

 なかなかわかってらっしゃるじゃないですかっ。

 イヤ違うっ!

 誰がズッコケ勇者じゃいっ。

 ポンコツだけどズッコケてはないぞっ!

 たぶん!


「私を倒しに来たって言ったわねえ?

 あなたみたいな、カワイイだけでひょろひょろのくっそダサいコスプレメイド風情に何が出きるのかしらあ?

 このぐるぐるクソメガネがっ!」


 くっそダサいコスプレメイド、だとっ!?

 これはペリメール様が作ってくれた、世界で一着しかない、ナンバーワンでオンリーワンの手作り衣装なんだぞっ。

 くっそダサいなんて言われて黙ってなんていられません!

 あと、ぐるぐるメガネをバカにするないっ!


「もう一度言いますよ、魔王シフォンっ!

 ボクはっ!あなたを倒しに来たのです!」


 ビシっと言っちゃりましたよ、男のっ!


「はあーん?」


 シフォンは、再び眉をつり上げてご立腹!

 ちっこカワイイけど、怒った顔はめっちゃコワイですよー!


「あんた達にかまってられるほどヒマじゃないのよっ!

 私はこれから朝の集会に行かなきゃいけないのっ!

 わかったらさっさと帰りなさい!ペタンラーフィアっ!」


 俺のコトはスルーして、ビシ!っとラーフィアちゃんに向かって指差しましたよ魔王シフォン!

 おいっ!また無視かっ!

 俺とのやり取りはほったらかしかっ!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る